第七十三話 浮遊魔王城・後編
お待たせしました。後編、開始です。
「ち、せめてもう少しだけ……頭数さえ居れば、飽和攻撃で何とかなるものを……」
無い物強請りは出来ない。しかし、このままでは何れ。ここまで来て、魔王に屈するのか。後一手、後一手があれば、総攻撃を掛ける事が出来るのに。
「……止むを得ない。総員撤退準備――」
『まぁまぁ、その撤退は少し待とうか』
その念話と共に、遥か彼方から青い閃光が、無数の光の槍となって魔王城へ到達し、着弾と共に轟音、爆音が響き、爆発炎上を繰り返しながら――遂に魔王城は海上へと不時着する事となった。
「ケートス! そして、シードラゴンか!!」
『うん。待たせてごめんね。シードラゴンの仲間を守る軍勢に手間取ってしまったけど、今ここに、聖獣ケートス。そしてシードラゴンが参戦するよ』
シードラゴンに率いられ、種族進化を果たした、元シーサーペントの軍勢。総数で100を超える、進化した個体。シードラゴンが隊列を組み魔王城へと迫り来る。
「こいつは……これなら行ける、聖獣召喚。来い、ベヒーモス、イフリート!」
勢いそのままに、俺は持てる最大級の魔力を以て、残りの聖獣を召喚する事にした。空が裂け、空間の亀裂から、二体の聖獣がその姿を現す。
『待ってたぜ、あんちゃん! 地の聖獣ベヒーモス、行くぜ!!』
『我が力、存分にご覧入れよう。火の聖獣イフリート、最大火力で参る』
今この時が攻め時。この機会を逃したら、次は無い。そう考えガルーダ、ケートスと並ぶ聖獣、ベヒーモスとイフリートを呼び出し、即時攻撃態勢を取って貰う。
今ここに、ガルーダ、ケートス、ヘビーモス、イフリートの四聖獣が集結した。ガルーダ、ケートスが所謂広域殲滅型、対してヘビーモス、イフリートは一点集中型の火力を叩き出せる。この飽和攻撃の前には、如何に魔王城と言えど無傷では済むまい。
「続いて重機召喚。起重機船、富士! 鉄球装備、遠隔操作……総員、全力を以て攻撃! この総攻撃で、一気に落とす!!」
俺の言葉に、人魔連合はそれぞれが持ち得る必殺技、超魔法を行使し海上へ堕ちた魔王城へと攻撃を仕掛けていく。空中では取れる戦法が少なかったが、今は総攻撃、最大火力の攻撃を最大限に発揮出来る状態にある。
「行くぜ、起重機船富士。ヴァニッシュハンマー、クラッシュ!! からのぉ……ギガントドリル、ブレイカァァァァ!!」
先ずは俺の先制攻撃。起重機船、富士に装備された金属の鉄球が振り下ろされ、魔王城に直撃する。更に内壁の一部を破壊したのと同時に、四つの極大閃光が降り注ぐ。四大聖獣の複合必殺技だ。
俺の放ったギガントドリルブレイカー合わさる様に、シードラゴン達の青白い閃光。ブレス攻撃が光の奔流となって到達する。
しかも、シードラゴンの軍勢は第一撃に加え、絶え間なく上位竜と同等のブレスを放つ。これにより魔王城の修復が阻害さ続ける状態になっている。
「合わせるぞ、ユウキ! 魔剣カタストロフ、全能力開放。ジュリア、マイヤ、ヘカテリーナ!」
『我が魂は貴方様と共に!!』
ヴァルを起点としてジュリア嬢達が三方向を固めると、天に掲げた魔剣カタストロフが、周囲の魔素を吸収し始める。デーモンロード級をも超えた、ヴァル。自身の持つ魔力に加え、大気中の魔力も力へと変換していく。
それに上乗せされるかのが、アークデーモン級にして、ヴァルの庇護下で強化された、婚約者達。同じくデーモンロード級に匹敵する戦闘力を保持し、その力の全てをヴァルへ集結させていく。
「今度こそ、これで決める。カエデ、サツキさん。俺に力を貸してくれ。ユニークスキル、原初の記録書……全拘束強制解除!!」
「正真正銘最後の魔力。貴方に託すわ、マコト!」
「魔力増殖炉は、いまだ健在。賄いきって見せますよ。それとカズヤ、援護は良いわ。ムラマサさんと一緒に、攻撃に回って!」
大賢者マコト君の言葉に、魔法使い組が再び最大魔力の捻出を始める。文字通りこれで最後、出し惜しみは無しと言う意思が伝わって来る。
「分かった、行くぞマグナ。全力だ!」
「カズヤ少年。我も共に行くぞ。出し惜しみは無しだ」
「お供しますよ。我が主、ヴァーミリオン様の描く未来を、潰えさせはしません」
そうして、魔法使い組とは別に、物理攻撃組からも闘気の様な力の流れが、竜騎士カズヤ君へと流れ込む。異世界人としてのずば抜けたステータスに、ムラマサ殿とバモスさんの力を上乗せされた、極限の一撃だろう。
「光と闇、生と死。相反する力を今一度ここに……カオスティック・オーバードライヴ!!」
「行くぞ! 我が叡智を以て、原初の記憶を齎さん! アカシック・レコード!!」
「全身全霊を賭けて、貫くは聖なる槍撃。開放、神槍……グングニルッ!!」
ヴァルが魔剣カタストロフを振り下ろすと同時に放たれる閃光。俺が受け渡した力の一端、強力な光の力と、婚約者達のもつ強大な闇を合わせた超必殺技、カオスティック・オーバードライヴ。
同時にマコト君の杖が眩く輝き、金色輝きの放つ。上位僧侶カエデさんと、超魔導サツキさんから受け取る、極大魔力の奔流を制御して。放たれるのは、森羅万象あらゆる事象を記憶保持すると言う、原初の記録書、アカシック・レコード。
カズヤ君が開放した槍撃、技術の極限たる剣聖ムラマサ殿の剣戟が、刃となり。武術の極限、バモスさんの波動撃と合わさり、それは正しく神をも貫かんとする、槍撃の極致。究極の一撃、神槍グングニル。
『ぶち抜けぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』
人魔連合による、怒涛の連続攻撃で、遂に内壁が完全に砕け散った。再生しようにも、消失した物を復元出来る力は無いようである。
そして、外装が剥がれて、内装が視えるその場所へと向かう為に、再度ガルーダを召喚し直し、万全の状態で嫁達と共にガルーダに騎乗する。
「ガルーダ! 安芸! ノーラ!」
『任せよ』
『はい!』
俺に取って最初の相棒、ガルーダ。その大いなる翼に導かれ、向かうは魔王城の心臓部。ノーラを伴ったのも、真実を見抜く魔眼により魔王のコアを把握する為だ。
「重機召喚スキル。長らく待たせたな……遂に、俺はここまで来た。重機召喚、コール……バケットホイールエクスカベータァァァァ!!」
そして俺は、重機を召喚する。始めに俺が召喚したのは、バックホー。バケットアームを備える重機。そして、今、これが俺の呼び出せる最大、最強のバケットアーム搭載機。
我がスキル、原初にして最大の重機。そう、この重機は一番最初。召喚メニューの一番目に表示され、アンロックされていた重機。何時しか使える時が来るのかと、心待ちにしていたものだ。
「超、重機、融合。展開、重機外装! オオオオオオオオ!!」
迸る稲妻。漲るパワー。桁違いの出力。まさに最大最強。本来なら世界最大の重機、としてギネス記録にも登録される巨大な物だが、重機外装によってリサイズされている。
それでも、俺の右腕に装備される形で、超巨大なアームユニットが重機外装で展開される。物凄い、語彙力が無くなる位に表現が難しい。だが、間違いなく言える事は、強い。それだけだ。
「っ、に……兄さん!? ううん、大丈夫、私が――居るから!」
『主よ。主なら呑まれる事もあるまい。我は主を信じ、往くだけだ』
「はい、あなたを信じています。どうか、未来を切り開く力を……」
安芸の心配の言葉と、ガルーダの信頼の言葉と、ノーラの励ましの言葉に応える。俺はこの身で暴れまわる超エネルギーの制御をしていく。正直言えば、半神半人になった今でさえも制御が難しい。けど、やるしかない。ここで、決める。
「だ、大丈夫だ。問題ない……ガルーダ、このまま突っ込め。この一撃で、終わらせる……!」
『承知した、我が主よ。我も、全力を行使させて貰うぞ……神霊力、解放。我が身に纏いし風よ、吹き貫く刃となれ。神技、プルーム・ノヴァ!!』
ガルーダの体が金色に輝き出すと、その身を紅蓮の炎が包み込む。ガルーダとは、現世ではインド神話に登場する、炎の様に光り輝き熱を発する神鳥される。この世界では風属性の頂点であるが、本来の属性は火、光の複合属性なのだ。
「安芸!」
「分かってる……兄さんは、私が支える。セラフ、全エネルギー解放! ディバインセラフ・ホーリースフィア!!」
俺の声に応え、安芸が熾天使の力を完全開放。神鳥たるガルーダを、聖属性の守りで強化したまま、一直線に飛翔を続ける。
「ノーラ!」
「大丈夫です、視えています。このまま最大出力で、行って下さい!!」
ノーラの言葉に、俺は真正面を見据える。鈍く輝く、魔王城の心臓部、核に向けて、その右腕を大きく振り被る。
「神剣ロード・オブ・シンフォニア、バケットホイールエクスカベーター。その力を我に示せ……神霊力解放」
右手に装備するバケットホイールエクスカベーターが、徐々に回転していく。稲妻を纏い、暴風圏を形成し。左手に持つ神剣ロード・オブ・シンフォニアのエネルギーを融合して、過去最大のエネルギーを生じさせる。
「兄さん!」
「あなた!」
『主よ!』
安芸の解き放った、熾天使級の全エネルギーを保持したシールドに守られた、神鳥ガルーダ。それはまるで一条の光の如く、ノーラの魔眼に導かれ、一直線に内部へと、魔王城を突き抜ける。
その中心部に見据えるのは、魔王城のコア。そして、俺達が倒すべき、現世の因縁を持つ――。
「オオオオオオオオ!! ぶち抜けッ! ギガンティック・バケット……エクステンション!!」
俺の必殺技、ギガンティック・バケット・エクステンションが発動する。神剣ロード・オブ・シンフォニアによる、超常殺しの力が増幅された攻撃。
俺の右腕で超高速回転を繰り広げる、バケットホイールエクスカベーターによる、超連続の掘削攻撃が、魔王城のコアを超速で削り取って行く。
『ガァァァァ!! ヤメロ、ヤメロォォォォォォォォ!!』
それは魔王の断末魔とも言える悲鳴。何重にもシールドが張られている様だが、俺の攻撃の前では紙切れも同然。一瞬にしてシールドを剥がされ、丸裸の状態になった魔王城のコア。
俺の攻撃に加え、あらゆる障害を弾き返す安芸の障壁に守られた、神速で突っ込むガルーダの速度も相まって、ギガンティック・バケット・エクステンションの威力も、最大まで増幅されている。結果として――。
『ァ…………』
パキン。とコアが砕け散り、邪神を倒した時と同等の凄まじい経験値が流入して来る。そのまま俺達は魔王城を突き破り、反対側の海上と突き抜ける。ガルーダが瞬時に高度を取り、眼下に沈みゆく魔王城を捉える。
「ヤエ」
『大丈夫です。この距離なら巻き込まれる事もありません……ご無事で何よりです、我が君』
直後、大きな水飛沫を立ち上げ、魔王城はゆっくりと沈降していく。溜まりに貯まった膨大なエネルギーが、魔王城の各所で誘爆を開始。水中でも構わず繰り返される爆発。そして、最後に一際大きな爆発音を轟かせ、魔王城は海底へとその姿を消した。
「……兄さん」
「ああ、これで……現世の借りは。いや、宿命は断ち切った……もう二度と、会う事もあるまい。地獄へ堕ちろ、外道……」
こうして、俺達人魔連合は、魔界での戦いに終止符を打つ事になった。現世で安芸を殺したあの不良、現世からの転生者も、俺達の手で葬ることが出来た。
その後、魔王が死亡した事により、転移魔法の術式の改竄も無くなり、空間転移も普通に使用できる状態となったのを確認した。これで、本当に終わったのだ。
「ヴァル。いや、ヴァーミリオン・ロードクラヴィス公爵。遂にやったな」
「ああ、ユウキ……精霊首都シンフォニア、国主サクラユウキ様。貴方の力添えに心からの感謝を……暫く、魔界安定まで時間が掛かるが、必ず人界との和平に向けて、辿り着く。だから、もう少しだけ待っていてくれるか?」
ヴァルの言葉に、俺は無言で右手を差し出す。ヴァルは、何も言わずに。ただ強くその手を握り返すのみ。
「勿論だ。俺も人界の受け入れ態勢やら、調整事項は多岐に渡る……成功するさ、俺とお前なら」
交わした約束。深き絆は、この握手……人魔の和平、新しい未来への懸け橋となる事を信じて、俺も強く握り返す。障害は多いだろうが、きっと――。
閲覧ありがとう御座います。魔王戦、終結! です!
新装備となるバケットホイールエクスカベーターは、実在する世界最大の重機です。ギネス記録にも乗っている、文字通り超重機になります。
この重機こそ、ユウキが使用出来る、事実上の最強装備。重機召喚スキルに於いては、最終にして原初の重機と言う扱いです。
一度は、実際に乗ってみたいもんですよ。一オペレーターとして。だからこその、小説で好き勝手に書いてる訳ですけどねー(´▽`)




