第七十二話 浮遊魔王城・前編
前後編です。
何とか魔王城からの脱出をして、魔王の性的暴行による被害女性を収容出来た。そんな俺達人魔連合の前に、空中に浮かび上がる巨大な魔王城が現れた。その全貌を現すと同時に、魔王城から高笑いが聞こえてくる。
『はははは。驚いている様だな、先輩よぉ! こんな事もあろうかと、俺の意識をこの城のコアに投射して置いた。まぁ、女を抱けなくなるのは痛いが、そんな世界は滅ぼすだけだ……こんな風になぁ!!』
魔王が喋り終わると、眩い閃光が魔王城から放出される……それはまるで、極大のレーザー光の様な、一条の黒い閃光が海上を一薙ぎ。巨大な水柱を建てつつ、付近にあった小島に着弾した。
「うおっ!?」
着弾した小島に、爆音と閃光が轟き響く。そこから繰り出される衝撃波に、俺は腕を上げて防御したが、軽く後ずさらせられてしまう。
「に、兄さんあれ……し、島が……消し飛んでるんだけどっ!?」
「つ、なんつー威力の攻撃だ……」
安芸の言葉に視線を小島があった場所へと向ける。既に小島は影も形もなく、一種の岩礁の様な状態へと変貌している。岩礁地帯と化した訳だが、辛うじて海中は無事の様だ。
と言う事は、アレは光学兵器のレーザーだろう。だとしても、凄まじい攻撃力だ。その威力に冷や汗を流しつつ、視線を魔王城に向ける。
『はははは。そう、これが魔王の力。絶対無敵の究極最強の力だ。あの時とは違う。新たなる俺の力で、先輩さんよ。あんたを、殺す』
「不味い! ヤエ、急速回頭!! この場から離れろ! 重機召喚、クレーン付き台船、超重機融合、重機外装展開!!」
魔王の言葉と共に、レーザーが再充填を開始している。俺はヤエに回避行動を命じ、重機召喚からの重機外装にて、脚部に台船ユニットを装備し、単身海上へと飛び出した。
「兄さん!?」
「大丈夫だ、俺が何とかする! 攻撃は任せるぞ!! 未知数の敵、武装。けれどあれがレーザーだと仮定するなら……」
そんな事を考えつつ、右腕のアースオーガを再びブレーカユニットに換装し直す。左腕の排土板シールドを掲げながら、戦艦ヤエザクラと魔王城の間に割って入る形だ。
『そんな盾で無駄な事を! 死ね、神の怒りに焼き払われろ!!』
ブォンと言う重低音が聞こえると同時に、俺はブレーカユニットを海面に叩き付け起動。超振動による水の被膜を発生させた所で、魔王城からのレーザーが直撃した。
俺の発生させた水の被膜と、レーザー着弾による巨大な水柱が立ち上がり、俺の周囲に濃い水蒸気の靄が広がって行く。お陰で俺の視界は奪われているが、それは魔王も同じ事だろう。
「兄さん!? 嘘でしょ、返事をしてぇぇぇぇ!!」
そんな光景を見た安芸は、驚きの余りに大声で俺の安否を確認する訳だ。先程の攻撃、爆心地の状況から推測し、光学レーザーによる攻撃だと予想した。随分と賭け要素の多い物だっだが、俺は勝ったぞ。
『生きてるよ。あれだけが攻撃とは思えんが、あの攻撃なら今と同じ事をして防げる』
『ふ、ふぅぅぅ……もう、びっくりさせないでよ!? あんなの喰らって、心臓に悪すぎるよ!?』
いや、確かに賭けではあったが。普段の安芸の方が、割と危機的状況が多い気がするのだが、これは言わないでおこうか。
『それにしても、念話? 一体なんで……』
『いや何、ちょっと魔王を驚かそうと、な!』
未だ立ち込める水蒸気の靄の中から、俺は一撃を放つ。この一瞬の間でも、重機召喚からの装備換装はもう慣れている。放つのは、俺が誇る必殺技の一つ。ギガントドリルブレイカー。稲妻を纏う破壊の暴風が、一条の光となりて魔王城へと突き刺さる。
もっとも、崩す事が出来たのは一部であるが。視界不良の中、魔王城の反応だけを頼りに打ち上げたので、当たっただけで万々歳ではある。
『ぐ、なんだと!? 城の外壁の一部が崩壊した!?』
ギガントドリルブレイカーは。アースオーガに備えられたドリルによって発生する、螺旋状のエネルギー弾でもある。普通に直撃するよりも、削り抉る様な衝撃波を発生させるので、対城塞等には覿面に効果を発揮するのだ。
「予想通りで安心したぜ。あの障壁を張るのと、魔王城を浮遊させる。同時に起動は無理と踏んだんでな」
『クソが! お前だけは許さねぇぇぇぇ! 死ね!』
俺の言葉に激昂する魔王。そして連続して放たれるレーザー光線。乱射、と言う表現が正しいだろうか? 闇雲に撃っているにも拘らず、その全てが屈折し的確に俺だけを狙い撃つ。多角攻撃なら回避不能とでも思ったのだろう。
「甘い!! ブレーカーインパクト!!」
だが、一度防げると分かってしまえば、どうと言う事はない。再び俺はブレーカユニットで水飛沫を立ち上げて、水の被膜で周囲を覆う。当然レーザーは貫通する事無く、俺に傷は無い。
どうやって水でレーザーが防げるか、と言う事は詳しく分からない。が、とある空戦ゲームでは、雲の中でレーザー兵器が着弾しても全く効果が無いと言う事を思い出したので、水の防壁を張ってみたと言う訳である。
そしてこれは俺の推測だが、屈折するレーザー。恐らく大気中の塵を、氷系統魔法で凍らせ、簡易ミラー替わりにでもしているのだろう。でなきゃレーザーが曲がる訳もない。
「さぁ反撃開始だ! ヤエ、やっちまえ!!」
『御意!』
魔王城から回頭して距離を取った、戦艦ヤエザクラ。回頭した事により現在、主砲を含む全ての火力が最大限に行使出来る、所謂T字有利の状態となっている。
俺の号令で、轟音と共に508ミリ砲弾が魔王城へ撃ち込まれて行く。魔王城は浮遊にエネルギーリソースを回している為か、先の障壁は展開出来ないので、砲弾のダメージをもろに受け続けている状況だ。
「安芸、ヤエに続け!」
「りょーかいだよ! エネルギーチャージ完了……喰らいなさい! ディバインセラフ・シャイニングセイバー!!」
戦艦ヤエザクラの砲撃の後、安芸による、熾天使級の力を開放した超強力な攻撃が、魔王城へ吸い込まれて行く。ぶっちゃけ、あの巨体で浮遊してるだけと言う時点で、狙って下さいと言っている様な物だ。これが現世の戦闘機の様に、超音速で飛ぶなら、まだ捕捉も難しかっただろうに。
『クソガァァァァ!!』
そして吠える魔王。現在の相対距離的には、上空数十メートルと言った所なので、基本的に超スペックを誇る俺達人魔連合に取っては、造作もない距離である。従って、次々と遠距離攻撃が着弾する訳だ。
『うぜぇぇぇぇ!!』
と、激昂する魔王城から、再びレーザーが照射された。目標は戦艦ヤエザクラだと分かったので、援護に入ろうとするが、その行動はヤエの念話で止められる。
『お任せ下さい、主様。本艦には、対光学兵器軽減用の装備が施されております。完全に無効には出来ませんが、良くて3パーセント程度の余剰ダメージを負う位でしょう』
「……ゲーム通りなんだな。電磁防壁ベータ。光学兵器軽減97パーセントの奴か」
俺が呟いたゲーム。それはとある横やりで開発中止になった海戦ゲーム。終盤では、レールガンや波動砲が登場したりする、割とトンデモないゲームだが、嫌いじゃない。愛するべきバカゲーとも言うべきか?
等と考えて居たら。魔王城からのレーザーが戦艦ヤエザクラに着弾したが、ヤエの言う通りに青白い電磁バリアの様な物が発動し、レーザーを中和軽減、拡散していく。
『っ、効きは、しません!』
「無理はするな。完全に防げなくてもダメージはあるんだ……それにしても、あちらも随分と硬い。ヴァル、側近達はまだ出れないな?」
「ああ……流石に、被害女性達をそのままには出来んのでな。だが、問題あるまい……開放。カオスティックブラスター!!」
俺の声に呼応して、ヴァルは極大火力の魔法を打ち込む。あの時邪神に打ち込んだ、光と闇の複合魔法。カオスティックブラスター。白と黒、二色の螺旋が混じり合い、上空の魔王城へと直撃し、大爆発を引き起こした。
「よし、カエデ……は、まだ戻ってないか。サツキさん、俺達の魔力も集中させて打ち込む! ユニークスキル、原始の記録書……導け、セレスティアル・スターバースト!!」
大爆発に続き、新生勇者パーティの魔法担当が詠唱を開始する。マコト君はカエデさんも交えて、魔力砲撃をするつもりだったらしいが、現在彼女は、被害女性たちの回復の為に席を外している。
「了解です。魔力増殖炉、最大出力。リミッター解除、オーバードライブ。マコトさん、制御、頼みます。では、行きますよ……! テンペストミーティア!!」
大賢者マコト君のスキルによる、強力な魔力砲撃。合わせる様に、極大攻撃魔法を放つ、超魔導サツキさん。直後、青い閃光、白い閃光、二種の閃光が折り重なり、一度目の大爆発と同じ個所へと着弾し、完全に魔王城の外壁が砕け散る事となった。
爆発的な魔力の奔流、制御を丸投げにしたサツキさんも、大胆と言うか何と言うかである。が、その膨大な魔力を、精密な制御をしつつ、自身も大火力の魔力砲撃を行うマコト君。正に大賢者と言うべき、驚異の演算能力と精神力。
「あと少しで落とせるか!?」
そんな言葉を呟きながら、浮遊魔王城との攻防戦は続く。色取り取りの閃光が飛び交い、魔王城は爆炎に包まれる。外壁は壊れた物の、内壁は即時と言うレベルで再生を繰り返す。
どんなに強力な攻撃を打ち込んでも。自己再生能力によって、決定打、有効打となり得て居ない。ただ、幸いにも僅かにこちらの火力が上回って居る為か、本当に微々たるダメージが蓄積して居るのは分かって居る。
「……手数が、足りないか?」
そのまま三時間程が経過したが、現在の状況は絶望的。魔王城の攻撃はレーザーのみなので、幾らでも防御が可能だった。
ただしこちらからの攻撃は別で、戦艦ヤエザクラは弾薬が、人魔連合は魔力の問題でガス欠に近い状況下にある。根本的な問題として、敵が巨大過ぎる上に、飛行、浮遊している故に、近接攻撃が届かないと言うのが問題点でもある。
「ち、もう一発だ!! マキシマム、ブレーカーステーク!!」
戦艦ヤエザクラに着地した俺は、超重機融合状態の超パワーで跳躍し、魔力を練り上げ、戦闘機のアフターバーナーの様に脚部に集中させ、一気噴出しつつ飛び上がる。
浮遊魔王城の高度は徐々に下がって来ているが、俺個人では飛翔系魔法を使えない以上、ジャンプ攻撃か遠距離攻撃しかないのが現状でもある。もどかしい。連撃が加えれないから、決定打になって居ない。
「オラァ!!」
甲高い音を立てて、ブレーカーステークが魔王城の内壁に損害を与える。俺の攻撃力は人魔連合でもトップクラスであり、現レベルと超重機融合状態による上乗せを加えれば、最大と言っても良いレベルだ。
「っち!」
が、凄まじい火力でダメージを与えても、例えるなら100のダメージを与えて、99のダメージが回復すると言うのが、ここまで長期戦になって居る要因だ。
「あなた! 遅くなって申し訳ありません。守護星騎士ノーラ、戦線に復帰します」
「ノーラか! 状況は膠着して居るが、長期戦はこちらが不利だ。一気に攻めたいが……」
もう一手欲しい所で、俺の嫁のノーラが医務室から帰還した。ノーラの持つ熾天使級の力があれば、更なる一手にはなるだろうが……。
「ユウキ様」
流石に回復し切って居ないだろうと、声を掛けようと思って居たら、ノーラの後からヴァルの側近である、ジュリア嬢達が現れた。六名の、被害女性達を伴い、である。
「ジュリア嬢!? それに、被害女性達まで……ここは危険だから、休んでいて――ッ!!」
『――!!』
俺の言葉は彼女達、被害女性に届く事無く。返されるのは決意に満ちた、煌々と煌めく瞳のみ。そうか、そうだよな。彼女らは、魔王を倒す権利がある。
それを後ろから見守るカエデさんも、俺に無言で頷く仕草を行っている。医療関係者を志すカエデさんも、本当なら無理はさせたくないのだと思う。
「分かった。ジュリア嬢達の指示に従い、戦闘に参加してくれ……ただし、無理と思ったら即時退避。可能な限り援護には入るが、命は大事にだ!」
『はい!』
元気の良い返事を返し、ノーラとヴァルの側近達により回復した、魔王の被害女性達も戦線に参加。驚く事にこの女性たちは、人界の精霊騎士に匹敵するほどの実力を兼ね備えて居た。
六名の内約は、ハイエルフ、天使、竜人、狐獣人、狼獣人、人間からなる。それぞれが、安芸に匹敵するか、それ以上の美貌を兼ね備える、超絶美女、美少女である事に突っ込み入れない。
「……本当に済まない。本来なら君達を戦わせることなどしたくないのだが……」
と、俺は被害女性達に告げるが、彼女らの決意は固い。願わくば、自らの手であのクソ野郎を引き裂きたいとまで言い出す始末。下手に止めるべきではない、と言うノーラの判断で戦線に加わって貰う運びとなったのだ。
それから更に三時間後。やはり、俺達は攻め切れずに居た。確かにヴァルの婚約者たる四名の魔人、アークデーモン級の戦力も強大だ。加えて魔王被害者の六名、こちらも高位精霊騎士級の実力があるとは言え、病み上がりの状態もあり万全とは言えない。
「安芸、ノーラ、まだ大丈夫か?」
「なん、とかね……無理はしてないけど、本当に硬過ぎて嫌になるよ」
「ですが、このままではこちらが擦り減ります。私達超越者ならともかく、勇者パーティの少年少女達は一度休ませるべきでしょう」
確かに旗色が悪過ぎるな。もうかれこれ六時間以上戦い続けている。最悪の場合、一時撤退して戦力を、と思うがこれ以上の戦力増強は厳しいだろう。
閲覧ありがとう御座います。久し振りの前後編です。私的に、一万字近い奴は、大体五千字位で分けた方が良いかな、と言う感じで分けております。
続きは明日。もう暫くお待ちください(*'▽')




