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「知らない」と言わせて。

「席つけお前らー。球技大会の種目決めるぞー」


入ってくるなり大きな声で言ったのは、自称イケメン、がっくんだ。

教師にしては若くて、ちょっぴり色気もあって、俺様で、女子生徒からはそれなりに人気のある先生だ。そして私の担任、2年目である。


「クラス委員、あとよろしく」


がっくんはそう言ってどかりと椅子に座ってパラパラと他のクラスの小テストを丸付けしていた。


「相変わらず丸投げするよな」

「本当。こっちの身にもなってほしいもんだよね」


なんてぶつくさと文句を言いながらも、しっかりと職務を果たそうと教壇に立ったのは委員長の富樫君と副委員長の日向さん。

世にも珍しい、クラス委員カップルである。


「じゃあとりあえず種目書いてもらえる?」


富樫君の言葉に日向さんは白のチョークで種目と人数を書いていく。その間に、富樫君はクリップでまとめられた紙に目を通していた。


「んーと、今回の種目と人数は、男子がサッカーが15人、バスケが7人、卓球が4人、女子がバスケが6人、バレーが8人。各種目、経験者はコートに2人まで。日にちは再来週の月曜日。質問ある人いる?」


富樫君が掻い摘んで説明をしてくれる。本来ならこの仕事ってがっくんがするんだろうな。


「じゃあ希望とるから、やりたい種目手あげて。まず男子、サッカー」


富樫君は手を挙げた人の名前を言っていき、それを聞いた日向さんが黒板に名前を書いていく。1年前もこんな感じでLHRは進められていた気がする。


「卓球の過疎率半端ないな」

「まぁ、仕方ないよね」


だいたいこのクラスに卓球部なんて存在するのかってところから怪しい。

だけど、そればかりに気をとられていても仕方がないので、富樫君は次は女子の希望を取り始めた。


「…あれ、足りない」

「は?」

「女子の数が1人足りないんだけど」


日向さんが女子の名前を数え終えて呟く。その言葉を聞いた富樫君は何の迷いもなく私の方を見た。

その決めつけってどうかと思うのよ、私。

確かに挙げてないんだけど。


「去年に引き続きお前は…」

「私その日風邪ひく予定だから」

「問答無用。神崎の面倒くさがりは去年嫌ってほど体験したからな。今年はそうはさせん」


富樫君はそう言うと、日向さんと人数合わせに入る。まぁこのままいくとくじかじゃんけんで決まるんだろうけど。


「じゃあ男子から決めるかな。サッカーから1人、バスケから1人、卓球に移ってもらう。やり方は任せるから後ろの方に集まってくれる?」


わらわらと後ろに集まりだした男子の集団に威圧感を感じる。その中には一条もいて、黒板を見るとバスケを希望しているようだった。

…ああ、だからか。

どうりで女子のバスケの人数が異様に多いと思ったんだ。


「女子は前の方で決めようかな」


日向さんがそう言うと、バスケを希望した女の子たちを招集する。こちらはあみだくじで決めるようで、人数分、白い紙に線が引かれていた。


「ぃよっしゃー!」


女子があみだくじの場所を黙って決めている時、後ろからは馬鹿みたいにでかい声が聞こえてきた。

…なんで球技大会の種目決めのじゃんけんでそんな喜べるんだよ。


「決まった人から前の黒板に名前書いていってくれる?」


富樫君の言葉にまたわらわらと数人の男たちが動いて名前を書いていく。

その背中は心なしかしゅんとしていて、じゃんけんに負けて卓球にいくんだって瞬時にわかってしまった。


「千歳なに出るの?」

「‥さぁ」

「俺はバスケ出ることになった」


さいですか。どうでもいい情報をありがとう。

と、思いたいところだが、そんな一条の言葉を聞いた女の子たちは意地でもバスケがしたいらしく、とても静かだったあみだくじの場はいっきに戦場と化していた。

…女子ってこえぇ。


「みんなやる気があっていいね」


いや、日向さんそれやる気じゃないから。やる気があってそんなに女の子たち燃えてるわけじゃないから。


「女子決まった?」

「あ、うん、だいたいは」

「そう。じゃあバスケに神崎つけたしといて」

「「「「はぁ!?」」」」


あ、その他大勢の女子たちと声が被った。

というか私の声よりも大きかった気がする。


「なんで神崎さんだけあみだに参加もしないでバスケなのよ!?」

「そうよ、おかしいじゃない!」

「そんなの不公平だわ!希望を言わなかったのはあの子なんだからバレーに行かせるべきでしょ!」


不満大・爆・発。

それもそうだろうなぁ、私だって富樫君の意見には不満たらたらだし。6人しか入れないわくに10人くらいの女子が希望したのに、私だけは決まってたって、そりゃあ気に入らないよねぇ。


「がっくんもこれでいいでしょ?」

「ん?ああ。いいんじゃないか?神崎がバスケで」


富樫君はがっくんに了承を得ると、紙に黒板に書かれた名前を書き写していく。がっくんにオッケーをもらってしまえば、だいたいのことは覆らない。

だってがっくんは自分至上主義で面倒くさがりだからだ。

うわ、言ってて最悪。


「‥って、いやいやいや。だれがはい、そーですかって言うと思ってんの」


危うく流されるところだった。

ハッとして、すでに後半部分を書き写しにかかっている富樫君を止めるべく、意見を言ってみる。しかしこれを富樫君はまるっと無視して書き写しいく。


「諦めろ、神崎。仮病を予定にいれたお前が悪い。その有り余って宝の持ち腐れと言い切れる運動神経を存分に発揮して来い」

「いや言い切るなよ」


だいたい有り余ってないし。


「よし、書き終えた。神崎、期待してるから。今年もMVP掻っ攫って来てくれよな。その有り余って宝の持ち腐れと言い切れる運動神経で」


だから有り余ってないってば…!

でもって繰り返すな、ばか!





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