表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鋼を操る男 〜元鉄鋼マンの俺、ハズレスキル【アイアン】で辺境村を鍛え直す〜   作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
45/51

EP 2

怠惰な貴族たちと、エルフの極悪コーティング

徹夜でシャルムのための『最上の槍』を錬成した翌日の昼休み。

リオスは中等部の教室で、机に突っ伏して泥のように眠っていた。

「……んあ? なんだ、外が騒がしいな」

窓の外から聞こえてくるやかましい声に目を覚まし、俺は大きく欠伸をしながら中庭を見下ろした。

そこには、来週の『近衛騎士選抜試験』に出場予定の、高等部の貴族のドラ息子たちが5、6人ほど集まっていた。

彼らの中心で困り果てているのは、エルフの女王候補であるうちのクラスのルナだ。

「頼むよルナ嬢! 君のその膨大な魔力で、俺たちの武器に『強化付与エンチャント』をかけてくれ!」

「平民上がりや、軍の小汚い兵士どもに、この名門貴族の俺たちが負けるわけにはいかないんだ! 君の錬金魔法で、この鉄の剣をミスリルのように輝かせてくれ!」

リーダー格のセシル子爵令息が、ルナに向かって必死に頭を下げている。

どうやら彼らは、毎日の厳しい剣の修行をサボっていたため、手っ取り早く『武器の性能』を魔力で底上げして、御前試合を勝ち抜こうと企んでいるらしい。

「ええ〜……。お断りしますわ。わたくしの魔法は繊細なので、武具の強化なんてしたら、最悪の場合キャベツに変わって爆発しますよ?」

ルナが面倒くさそうに耳をパタパタと揺らして断る。

「そこをなんとか! ほら、謝礼として王都で一番人気の『高級マカロン詰め合わせ』を!」

「あと、最高級の『美容液セット』もつけるから!」

貴族たちがドサッと貢ぎ物をルナの足元に積んだ。

その瞬間、ルナの尖った耳がピクンと反応した。

「……高級マカロン。それに美容液……」

ルナはゴクリと喉を鳴らし、しばらく腕を組んで悩んでいたが、やがて深いため息をついた。

「分かりましたわ。……ですが、後でどうなっても知りませんよ? わたくし、ちゃんと忠告しましたからね?」

「おおっ! 恩に着るぞ!」

ルナはこれ以上ないほど明確な『免罪符フラグ』を口にしてから、彼らの安物の鉄の剣や盾に向かって両手をかざした。

「エルフの秘術よ。その身を煌びやかなる幻想で包み込みなさい――『幻影魔装フェイク・オーラ』!」

ルナの手から膨大なエルフの魔力が放たれ、貴族たちの武具を包み込む。

まばゆい光が収まると、そこには先ほどまでの安物の鉄とは見違えるような、白銀にピカピカと輝く『見せかけのミスリル武具』が完成していた。

「す、すげぇぇぇっ!!」

「なんて美しさだ! 軽く振っただけで魔力の刃が飛ぶぞ! これなら近衛騎士団長も一撃で倒せるぜ!!」

ドラ息子たちは大歓喜し、ピカピカの武器を見せびらかしながら中庭を練り歩き始めた。

「ふふん、これでわたくしのおやつは安泰ですわ」と、マカロンを頬張るルナ。

その一部始終を教室の窓から見下ろしていた俺は、呆れ果てて額に手を当てた。

(……アホか、あいつら)

俺の【アイアン】のスキルが持つ『職人の目』には、あの武器の真の構造がハッキリと透けて見えていた。

ルナのかけた魔法は、ただ表面に『超高濃度の魔力』を無理やりコーティングしているだけだ。鉄の原子構造ベースは全く強化されていない。

(あんな不安定な魔力コーティング……普段の素振りならともかく、実戦で高密度の『闘気アンチマジック』を持つ本物の達人と打ち合ったらどうなるか。……表面の魔力が反発して一瞬でドロドロに溶け落ち、中の鉄まで巻き込んで『ただのサビの塊』に変わるぞ)

俺が昨晩、徹夜でミリ単位の重心と空気抵抗エアロダイナミクスを計算して『最上の槍』を創り上げたのに対し、あいつらの武器は、ハリボテのメッキでしかない。

魔法という便利なシステムに頼り切り、モノの『本質』を理解していない連中の末路だ。

「……ま、俺には関係ねぇか。本番の試合が楽しみだな」

俺は「くわぁっ」と大きく欠伸をして、再び机に突っ伏した。

バカな貴族たちが皇帝の御前でどんな無様な姿を晒すのか、今から少しだけ同情してしまう。

そして数日後。

ルナミス帝国の運命を左右する『近衛騎士選抜試験』の当日が、ついにやって来るのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ