表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鋼を操る男 〜元鉄鋼マンの俺、ハズレスキル【アイアン】で辺境村を鍛え直す〜   作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/16

EP 3

S級の愛情バフは重すぎる

「……本当にやるのか? アリア。赤子に回復魔法をかけるなど」

俺がベビーベッドで【アイアン】のスキル検証(主にベビーベッドの釘を少し抜いたり戻したりする地味な作業)をしていると、父さん(ガリン)が深刻そうな顔で母さん(アリア)に問いかけた。

(ん? なんだなんだ?)

俺は作業を中断し、親たちの会話に耳を傾けた。

「何を言っているの? あなた。これはルナミス帝国で、教会で正式に認められている教育方法よ?」

母さんがキョトンとした顔で答える。

俺も前世の知識(ラノベ知識)で聞いたことがある。この世界では、赤ちゃんから6歳までに教会で回復魔法を定期的に注ぐことで、将来の『身体能力』『魔力』『闘気』のポテンシャルが飛躍的に向上するらしい。

いわば、魔法世界における超英才教育、あるいは必須の予防接種のようなものだ。

「そ、それくらいは知っているが……」

父さんが歯切れ悪く口ごもる。

そんな夫をよそに、母さんは杖(どう見ても鈍器にしか見えない分厚い樫の木製)を手に取った。

「村の教会に行って、シスターに回復魔法をかけて貰ったらお布施料が高いんだから。だったら、元S級僧侶の私が直接かければ同じことでしょう?」

「そ、そうか……なら、いいんだが」

(いや父さん、そこは押し切られちゃダメだろ!)

俺は内心で激しくツッコミを入れた。

絶対「同じこと」じゃない。村のシスターの優しい『ヒール』と、最前線で魔獣の群れをすり潰してきた元S級の魔法が同じわけがない。出力(ワット数)が違いすぎる。家庭用電源と工場の高圧電流くらい違うぞ!

だが、俺の心の声(ただの泣き声)が届くはずもなく。

「では行くわよ。リオスちゃんに、聖なる光よ……」

母さんが杖を高く掲げた。

部屋の中が、チカチカと眩しいほどの黄金の光に包まれる。

ちょ、待って。詠唱の圧がすごい。空気がビリビリ震えてるんだけど!?

「――【パーフェクト・ヒール(完全回復)】!!」

(……っ!?)

ドバァァァァァァンッ!!!

視界が真っ白に染まった。

本来、死の淵にある重傷者や、欠損した四肢すら瞬時に再生させるという究極の回復魔法。それが、かすり傷ひとつない、生まれて数週間の健康優良児(俺)に、惜しみなくフルスイングで叩き込まれたのだ。

「あばばばばばばっ!?」

俺の口から、およそ人間とは思えない声が漏れる。

(おぉ……!? なんだこれ!?)

だが、痛みは全くなかった。

むしろ、全身の細胞が歓喜の声を上げているような、圧倒的な万能感。

温泉の源泉掛け流しに頭から浸かっているような温かさが、小さな体を駆け巡る。

(き、気持ち良いなぁ……。なんだか、脳のシワがツルッツルに……いや、逆にスッキリしてめちゃくちゃ冴えてくるような気がするぜ……!)

体内で未熟だった魔力回路と闘気の経絡が、S級の魔力によって強制的に極太に拡張されていく感覚。

前世の疲労やストレスすら、魂のレベルで浄化されていくようだ。

「うんうん。リオスちゃんも気に入ったみたいね♡」

母さんが満足げに微笑む。

そりゃ気に入るさ。合法的なオーバードーズ(過剰摂取)だこれ。毎日やられたら、俺の基礎ステータスはどうなってしまうんだ。

すると、その様子を見ていた父さん(ガリン)が、突然バチィィッ!と両手で頬を叩き、気合を入れた。

「よぉぉぉし! 父さんも負けていられないぜ!」

(ビクッ)

俺は嫌な予感がして、父さんを見た。

「アリアが魔法でリオスを鍛えるなら、俺は『食育』だ! ちょっと麗山れいざんに行って、ドラゴンの肝とベヒーモスのミルクを取ってくるぜ!」

「あら、まぁ。気をつけて行ってきてね、あなた♡ 夕飯までには帰ってきてね」

「おう! 任せとけ!」

(…………は?)

俺は我が耳を疑った。

(と、父さん!? 今、なんて!?)

『麗山』って、この世界でも指折りの超危険地帯じゃなかったか!?

しかも『ドラゴンの肝』!? 『ベヒーモスのミルク』!?

それ、スーパーのお使い感覚で行く場所じゃないし、買ってくる(狩ってくる)食材じゃないだろ! 討伐クエストのSランク指定アイテムだろ!!

(ってか母さん! 「夕飯までに帰ってきてね♡」じゃないよ! 止めろよ!!)

満面の笑みで大剣を担ぎ、窓から(ドアからではなく)凄まじい跳躍力で吹っ飛んでいく父さん。

それを見送る、笑顔の母さん。

(俺、何を食べさせられんのおおおおおおおお!?)

離乳食という概念が存在しないのだろうか、このS級夫婦の辞書には。

圧倒的な才能と愛情を与えられながらも、俺ことリオス・クルセイダーの明日は、胃腸的な意味で非常にピンチであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ