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鋼を操る男 〜元鉄鋼マンの俺、ハズレスキル【アイアン】で辺境村を鍛え直す〜   作者: 月神世一


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EP 12

親バカの極みと、真竜の入学祝い

「父さん! 母さん! 俺、合格したよ! ルナミス学園に!」

ララサ村の自宅の扉を勢いよく開け放ち、俺は声を大にして報告した。

中身は25歳の社会人とはいえ、やはり「お受験」を突破した達成感は本物だ。少しだけ童心に返り、ドヤ顔で合格証書の入った封筒を掲げてみせた。

「おおおおっ!! やったなリオス!!」

ドスドスと床を揺らして駆け寄ってきた父さん(ガリン)が、俺の体をひょいと持ち上げ、高い高いをするように宙に掲げた。

「ガッハッハッハ! 当然だ! 流石は俺とアリアの息子だ! 面接官の奴らも、お前の放つ圧倒的な闘気と才能にひれ伏したに違いないな!」

(※実際には、プラズマ溶接の閃光に腰を抜かしてひれ伏したのだが、言わないでおく)

「えぇ、本当に凄いわ。……ずっと信じていたわよ、リオス」

母さん(アリア)も目を細め、父さんに下ろされた俺をギュッと優しく抱きしめてくれた。

S級冒険者特有の重すぎる愛情(物理・魔力バフ込み)が込められたハグに、俺は少し照れくさくなりながら「へへっ」と笑った。

「よし! 見事難関を突破した愛息子の、輝かしい門出の祝いだ!」

父さんは鼻息を荒くして立ち上がり、家の奥にある『絶対に開けてはいけない倉庫部屋へと向かっていった。

「父さん、お祝いって……?」

ゴトッ、ズズズズズッ……。

嫌な予感と共に、地響きのような音を立てて父さんが引きずり出してきたのは、巨大な黒い木箱だった。

厳重な鎖を解き、バコンッ!と蓋を開ける。

「受け取れリオス! これを着て、王都のエリートやクラスメイト共の度肝を抜かしてやれ!!」

箱の中から現れたのは、深紅の輝きを放つ、禍々しいほどに重厚な『フルプレートアーマー』だった。

「……何これぇ」

俺は素のトーンでドン引きした。

ただの鎧ではない。表面の鱗一枚一枚から、生物的な威圧感と、周囲の空気を焼き焦がすような熱気がムンムンと放たれている。

「父さんたちが昔倒した『真竜エンシェント・ドラゴン』の鱗を、ドワーフの国宝級の職人に打たせて鎧にしてみたんだ! これさえ着ていれば、火山の火口に放り込まれようが、隕石が直撃しようが傷一つ付かん最強の防具だぞ!」

ドヤ顔で親指を立てる親父。

しかし、俺の脳内ツッコミが光の速さで炸裂した。

(いや、これを5歳児に着せて登校させようとするな! 入学式に真竜の鎧で現れる新入生とか、完全に『魔王軍の幹部(幼少期)』じゃねぇか! クラスメイトの度肝を抜くどころか、学園の防衛システムが作動するわ!)

俺がどう断るべきか頭を抱えかけた、その時。

「……貴方」

背後から、氷点下の声が響いた。

振り返ると、母さんが満面の笑み(目は一切笑っていない)で、父さんの背後に立っていた。

「……ルナミス学園には、指定の制服があるでしょ? まさか、由緒正しき学園の入学式に、こんな禍々しいトゲトゲの鎧で登校させる気ですか?」

「ひゅっ!?」

父さんの喉が鳴った。母さんから漏れ出る【戦聖女】のプレッシャーに、S級大剣使いが冷や汗を滝のように流している。

「そ、そうなのか!? 学園には指定の服が……し、知らなかった! 俺たちは冒険者ギルド育ちだから、そういう規律には疎くて……っ!」

「常識で考えなさい、常識で」

「で、では……っ! 真竜の鎧がダメなら、防具ではなく『武器』だ!」

父さんは焦ったように木箱の底を探り、今度は鞘に収まった身の丈ほどの『大剣』を取り出した。

チャキッ、と少しだけ刃を抜くと、部屋の中が神々しい光に包まれる。

「『真竜の剣』はどうだ!? 一振りで山を両断し、海を割る伝説の業物! こ、これなら制服の腰にいていても校則違反にはならないだろう!!」

「……はぁ」

母さんが、深々と、本当に呆れたようなため息をついた。

そして、手元にあったおたま(夕飯の支度中だったらしい)を、父さんの頭にポコンッと軽く叩き落とした。

「あのね、貴方。……5歳の子供に、そんな物騒な刃物を持たせて学校に行かせる親がどこにいますか! 鉛筆削りじゃないのよ!?」

「あ、痛っ! す、すまんアリア……」

シュンと肩を落とし、巨大な真竜の剣をそっと木箱にしまう父さん。

(※実は俺、すでにゴブリンをフライパンで撲殺しているし、5000度のアーク溶接もできるのだが、母さんの中ではあくまで『可愛い5歳の息子』なのだ)

「父さん」

俺は苦笑いしながら歩み寄り、落ち込んでいる巨大な父さんの背中をポンポンと叩いた。

「気持ちだけ受け取っておくよ。ありがとう。……俺は、父さんと母さんから貰ったこの体と、教わった事があれば、どんな場所でもやっていけるからさ」

「……リ、リオスゥゥゥッ!!」

俺が純度100%の模範的な息子スマイルを向けると、父さんは「なんて良い子に育ったんだ!」と号泣し、再び俺を抱きしめて頬ずりをしてきた。

(ふぅ……危なかった。あんなの王都に持ち込んだら、絶対に調停者ガオガオンのレーザーで焼かれてたぜ)

最強すぎる両親の「愛」という名の過剰装備をギリギリで回避しつつ。

鋼鉄の知将(5歳児)は、来るべき王都での新生活に向けて、静かに決意を新たにするのであった。

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