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鋼を操る男 〜元鉄鋼マンの俺、ハズレスキル【アイアン】で辺境村を鍛え直す〜   作者: 月神世一


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第二章 チートな荒稼ぎ錬金術

5歳児の錬鉄術と黒い野望

ゴブリン襲来事件の翌日。

俺は、父さん(ガリン)の書斎でゴソゴソと調べ物をしていた。

元S級冒険者であり、現在は村の自警団リーダーを務める父さんの書斎には、剣術の指南書だけでなく、ルナミス帝国軍が使用する様々な武具や兵器の図面が無造作に置かれている。

「なるほど……防衛用兵器の基本は『バリスタ(大型弩砲)』か」

分厚い羊皮紙に描かれた図面を見つめながら、俺は腕を組んだ。

「しかし、これじゃあ連射は効かないし、木と普通の鉄で作られてるから無駄に重くてデカいな。弦の張力にも限界がある。これを、俺のスキルで『ハイテン鋼(高張力鋼)』に変えて軽量化し、バネ鋼の反発力を利用したオートマチック式に改良すれば……」

俺の脳内に、前世の工業知識が次々と設計図を描き出していく。

ゴブリンの群れ程度、ボタン一つで鉄の矢の雨を降らせてハチの巣にできる『全自動防衛システム』の構築。技術的には、俺の【アイアン】があれば十分に可能だ。

「……いやいや、待てよ」

俺はふと、現実的な問題に直面した。

素材となる鉄は俺のスキルでその辺から集められるが、その他の歯車、滑車、特殊な工具、そして何より『防衛拠点の整備』には、どうしても別の資材が必要になる。

「何をするにしても、その前に『資金』が必要だな」

この世界のお金。

現在、5歳児である俺の全財産は、お駄賃でもらった銅貨(1枚100円相当)が数枚だけである。これでは防衛システムのネジ一本買えやしない。

俺は図面をパタンと閉じ、ある計画を胸に秘めて、台所へと向かった。

     * * *

「母さーん」

台所で、朝食の食器を洗っていた母さん(アリア)の背中に声をかける。

「あら、リオス。どうしたの?」

「あのさ、母さん。『魔法ポーチ』を貸してほしいんだけど」

魔法ポーチ。

それは、ハンドバックサイズでありながら、内部の空間が拡張されており「牛1頭」は余裕で入るという、この世界における超高級なマジックアイテムだ。空間魔法の使い手が限られているため、市場に出回れば家が一軒建つほどの値段がする。

普通の農村の主婦なら「何を馬鹿なこと言ってるの」と笑い飛ばすところだが、我が家は元S級冒険者夫婦の家である。

「まぁ、魔法ポーチをどうするの?」

「うん。ちょっと、小遣い稼ぎをするんだ」

俺が誤魔化すように笑うと、母さんは不思議そうに首を傾げながらも、手を拭いた。

「小遣い稼ぎ? ふふっ、リオスもいっちょ前にそんなことを考えるようになったのね。……わかったわ。父さんが昔使っていたお古で良いのなら」

「えっ、いいの!?」

「もちろんよ。ちょっと待っててね」

母さんは物置部屋(という名の宝物庫)に向かい、少し埃を被った、しかし上質な革で作られたボストンバッグほどの魔法ポーチをあっさりと持ってきた。

「はい、これ。中には何も入ってないから、好きに使っていいわよ。危ないことはしないようにね」

「ありがとう母さん! 助かるよ!」

(……さすが元S級。国宝クラスのアイテムを、5歳児の虫取り網感覚で貸してくれるぜ)

俺は心の中で両親の金銭感覚バグに感謝しつつ、魔法ポーチを肩に掛けて家を飛び出した。

     * * *

向かった先は、お馴染みの川辺の砂州だ。

フライパンを作った時よりも、さらに上流の、手付かずの砂が多く堆積している場所を選んだ。

「さて……始めるか。俺の真骨頂、『錬金』ならぬ『錬鉄』を」

俺は魔法ポーチの口を大きく開き、両手を前に突き出した。

「――【アイアン】!!」

スキルを発動すると、俺の足元から、そして周囲数メートルの川原の砂の中から、黒い粉末がザザザザッ!と音を立てて浮き上がり始めた。

自然界に存在する砂鉄だ。

「よし、だがこのままじゃ売り物にならない。不純物は要らない。極限まで分離しろ……!」

ここからが、前世の『鉄鋼マン』としての知識とチートスキルの見せ所である。

ただ鉄を集めるだけではない。空中に浮遊させた膨大な砂鉄の粒一つ一つに干渉し、石英、チタン、その他の不純物をミリ単位で弾き出していく。

バチバチッと静電気のような音が鳴り、不純物がパラパラと地面に落ちていく。

あとに残ったのは、キラキラと鈍い輝きを放つ、完璧な黒い砂の塊だった。

「よしっ……! 純度100%の、最高品質の砂鉄だ!」

俺が指を鳴らすと、空中に浮かんでいた黒い塊が、まるで水流のように魔法ポーチの中へと吸い込まれていった。

「この世界の鍛冶師ドワーフたちは、鉄鉱石を感覚で精錬してるからな。こんな不純物ゼロの最高級の砂鉄なんて、滅多にお目にかかれないはずだ」

前世の知識とこの世界の相場を照らし合わせる。

これだけ純度が高ければ、少し熱を加えるだけで最高の鋼になる。武具の素材としては一級品だ。

「この品質なら……1キロで、最低でも『金貨1枚(約1万円)』にはなるな」

魔法ポーチの中には、すでに数十キロの砂鉄が収まっている。つまり、ほんの数分で数十万円を稼ぎ出した計算になる。

魔法ポーチの容量は「牛1頭分」。重さの概念も魔法で軽減されている。

「くっくっく……。これを限界まで詰め込めば、一体いくらになることやら……!」

誰もいない川辺で、5歳児の俺は、まるで悪代官のように『ニチャァ……』と黒い笑みを浮かべた。

「集めろ……! もっとだ! 村を要塞化する資金を、この川から根こそぎ絞り出してやる!!」

かくして、鋼鉄の知将(5歳児)による、異世界でのエグい資金調達(荒稼ぎ)が、ひっそりと幕を開けたのであった。

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