美人姉妹は付き合っているらしい
長倉姉妹を知ってから1週間ぐらいが経過した。
廊下で長倉姉妹と井野が話しているのも当たり前の光景のようになっていき、周りの奴らもそこまで騒がなくなってきた。
やっと高校自体が静かになってきたことに喜びを覚えつつ、僕は今日も机に突っ伏して眠る事にした。
だけど、それを許してくれそうにない男がまた目の前にいるのだ。
「また面白そうなニュースがあるぞ」
「お前はなんで休み時間の度に話しかけて来るんだ」
「いいじゃねぇか。お前みたいな奴は特殊だから、観察したいんだよ」
こいつは人のことを何だと思っているのか。
それにしてもこいつは本当に何でずっと話し掛けてくるのか。久米はクラスの中でも中心的な人間だ。僕になんか構わなくてもいい気もするのだが、そこはやはりこいつがさっき言っていたように人間観察をするためなのだろう。
僕は面倒くさいと思いつつも、さっき久米が言っていた『面白そうなニュース』について聞いてみることにした。
「今度はなんだ?」
「驚くなよ。長倉姉妹があの男と付き合いだしたらしいぞ」
「そうなのか」
どうやら僕の返答は久米にとって望んでいるものではなかったらしく、目の前でため息を吐かれた。
「なんだ?」
「いや、お前の興味の無さは本当に筋金入りだな」
「そうでもないだろう。人の恋路に興味がないような人間もこの世にはいると思うが」
「まぁな。確かにいると思うが、この高校で長倉姉妹に対する興味が皆無な奴が珍しいと思うぞ」
僕からすれば、僕以外が相手の動向を気にし過ぎだ。所詮、僕は僕だ。相手のことに時間を割くのであれば、自分のために時間を割くべきだ。他人を考える時間があるなら、自分のために居眠りをするべき。
居眠りに関してはしない方がいいだろうが。
「僕は完全に興味がないからな。長倉姉妹が誰と付き合おうと僕に関係はないからな」
「それはそうだが、人はうわさ話が好きだからな。お前は本当に珍しい人種だよ。俺自身も長倉姉妹に対して特別な思い入れはないが、やっぱり誰と付き合うとかは気になるからな」
まあそうだろう。そうでもなければ、俺にそんな話はしないだろう。こいつはゴシップ関係の話を含めてどんな話でも好きなイメージがある。
そしてその話の中でこいつ自身に引っかかったものを僕に話してくれているんだろう。
「まあ、でもあの感じを見れば付き合う出すのは時間の問題だったんだろう」
僕は何度か見た、長倉姉妹と井野の姿を思い浮かべる。端から見ても、仲の良さそうに見えてはいたし。
「そうだな。だからこそ、学校中で長倉姉妹が付き合いだしたというニュースはそこまでの衝撃を与えていないんだろうな」
僕だけじゃなくて多くの奴が、長倉姉妹と井野の姿を見ただろうしな。
「だが、多少は面倒なことになると俺は予想している」
「面倒なこと?」
「ああ、お前は長倉姉妹に興味はないから知らないだろうが、彼女たちにはファンクラブがあるんだよ」
「あいつら、まだ1年生だろ?」
「それでもあそこまで容姿が整っている姉妹となれば、数日でファンクラブが出来上がるんだよ」
「そういうものか」
芸能人のファンクラブが理解ができるが、こんな一般人にもファンクラブというものはできるものなのか。
久米は話を続け出した。
「そのファンクラブは多少過激な連中らしくてな。長倉姉妹と井野が近付きだしたぐらいから、ヤバい感じだったんだが、付き合っていることが確定した現時点でもう何を起こし出すか」
「あくまで高校生のファンクラブだろ」
「そうだ。お前には分からないかもしれないが、人によっては妄信的にそいつを愛する奴もいるんだ。それはもう周りから見れば狂っていると感じるぐらいに」
だけど、高校生がそんな過激な行動に出るとは思えない。社会ではアイドルがファンに襲われるなんて話は別にない話ではない。
高校も社会と言えば、社会かも知れないが、さすがに問題を起こさないと思うが。高校生の恋愛に高校生が嫉妬しているというだけで終わる気しかしない。
「お前はそのファンクラブが過激な行動に出ると思っているのか?」
「別にそこまでは言わないさ。俺はあくまで知っていることを話しただけだ。この先はファンクラブの人間が決めるはずだ」
久米は僕のことをおかしいと言うが、僕からすれば久米も変わっている。久米の語っている感じを見ると、あくまで一つのエンタメを見ているような感じがするし。まぁ、でもあくまで自分に関わりがないようなことだからこそか。
それにしてもファンクラブの連中がはすごい。そこまで他人に夢中になれるなんてな。僕にできないからこそ、その熱量を他人に向けられるのは本当にすごいと感じてしまう。
でもこの久米の話から察するにこれから面倒なことになるかもしれないな。僕は関係ないから別に長倉姉妹や井野がどんな目にあったとしてもいいが、僕に迷惑を掛けないようにして欲しい。




