長倉沙紀Side②
私と優香は正寛くんと登校することにした。
さすがにお願いする時は緊張して、一生分の勇気を振り絞った。それぐらいの勇気を振り絞らないと一緒に登校できないなんて。今まで友達と一緒に登校しようと誘ってもここまでの緊張はなかった。
「優香が珍しいね」
「…なにが?」
「こんなに早く起きるなんて」
「たしかにそうかも」
優香の寝起きは悪い。というか起きられない。私と優香は幼稚園、小学校、中学校とずっと一緒に通って来た。だからこそ分かるけど、優香は誰かに起こされないと起きることができない。
でも、今日の優香は自分で起きて、準備をして、今ここにいる。
「それぐらい、正寛くんと登校したかったの?」
「うん。なんか一緒にいたい」
たった数日で優香がここまで人に懐くなんて今まで一度もなかった。もちろん、あんな出会い方をしているから、正寛くんのことを少し特別な目で見てしまうのは仕方のない事だと思う。
そして優香はたぶん、正寛くんに好意を抱いている。今までの男の子と違う感じがする惹かれるのも仕方ないよ。
しばらくして正寛くんが待ち合わせの場所に来てくれた。
「待たせてごめんね」
「ううん。私たちもさっき付いたところだしね、優香」
「うん、全然大丈夫」
そこから私と優香、そして正寛くんは一緒に高校に行った。周りから色んな視線にさらされているけど、そんなことが気にならないぐらいに幸せな気持ちだった。
高校に着いた後もしばらく話してから、それぞれの教室に別れた。
本当はもっと話したい気持ちもあったけど、あんまり正寛くんに迷惑を掛けるわけにもいかないのでそこは身を引いた。
自分の席に着くとクラスメートが色々と話し掛けてくれているけど、私の頭の中には正寛くんのことしかない。身内じゃない人のことでここまで頭が占有されているのは初めての経験だけど、ここ数日はずっとそうだ。
でも、ちょっとだけ気になることがある。
本当にちょっとの違和感。
別にこんなことは気にしないようにすれば、気にならない。
その違和感というのは彼の私たちへの対応だ。彼は最初に話しかけた時も、ずっと笑顔なのだ。どんな時でも私たちのことを大切に扱ってくれて、本当に素晴らしい人だと思う。
だけど、素晴らし過ぎる。
悪いことじゃない、むしろ良いことだと思う。
でも、私が第一印象で彼に抱いたのは近づき難いというものだった。助けてくれた時も目は冷めていた気がする。サングラス越しだからよくは見えなかったけど。
だから最初は私も彼が助けてくれるとは思っていなかった。明らかに私たちに対して興味がなさそうだったから。
結果として彼は私たちのことを助けてくれた。
その後も交番から家に帰るまで送ってくれたけど、会話をしようともしなかった。私もそれを感じ取って、会話をしなかった。相手は助けてくれた恩人だし、その恩人が会話を望んでいないんであれば無理にする必要がないと判断した。
このままだと名前すらも聞けないと思って、聞いたから教えてくれたけど。
最初の彼は私たちに対して興味を抱いていないのだ。今までの人生で人に興味を抱かれることの方が多かったから、余計に覚えている。あそこまで感情が動かず、自分に興味を抱かない人は初めてだったからこそ。
だからこそ余計に違和感を覚える。
もしかしたらあの時は正寛くんの機嫌が偶然、悪くてあんな態度だったのかもしれない。
逆に学校では無理して笑顔で接してくれるのかも。
考えれば色々な可能性はあると思う。
でもなぜか…その違和感が消えることはなかった。




