長倉沙紀Side③
久し振りに正寛くん以外の男の子と話した気がする。
元々、男の子と授業とか以外で話すことはほとんどない。
優香があんまり男の人のことが得意じゃないのもあるし、私自身もそこまで男の子と関わろうと思っていない。
あの人はなんか不思議な人だった。言葉で言い表すのは難しい。隣で歩いている時も私のことなんて全く興味がないのが伝わって来る感じって言うのかな。
ちょっとあの時の正寛くんに似ているかも。途中から女の子が眼鏡ケースを届けてからはサングラスをしていたのもあって余計にあの時の正寛くんみたいだった。私に対しての興味も皆無で、歩幅も全く合わせてくれる感じがない。
でも、完全に冷たいわけでもない感じも。私が「あの…ちょっと手伝ってくれませんか?」と言った時に手を差し伸べてくれたりするところとか。
あの時の正寛くんも冷たい感じだったけど、私たちのことを何だかんだ助けてくれたりと優しい一面もあった。本当に冷徹な人であれば、私たちのことを無視すればいい。それのに無視せずに助けてくれたところからも、優しい人なんだと思った。
今になって思うと私はあの人の名前を知らない。なんか名前を聞いた時、急に話題を振られて誤魔化された。あんまり名前とかを名乗りたくない人なのか、私が信用できない人に見えたのかな。
正寛くんとの関係は順調。でも、優香から聞いた話だとファンクラブの人とかが何かを企んでいるとか。
今のところ特に変わったことは起こっていない。これからもこの状態が続いてくれることを信じているけど、ずっとこのままなのかは分からない。
優香も言っていたけど、何か行動した方がいいかも。
――――――
今日は正寛くんと私たちでショッピングに行く。学校以外でも正寛くんに会いたいという気持ちを伝えたら「いいよ」と言ってくれた。
ショッピングは本当に楽しかった。正寛くんと一緒に休日を過ごせるんだから楽しいに決まってる。
でも、ショッピングをしているところで私たちはまた不良に絡まれた。ちょうど正寛くんがトイレに行っているタイミングだった。
それもこの不良たちは正寛くんと初めて会った日に絡んできた人たちと同じだった。正寛くんのことをすごく恨んでいるようで、私たちに対して居場所をずっと尋ねて来る。
早く正寛くん、帰って来てと切に願った。
そう願っていると彼が帰って来た。私たちの今の状況を見て、驚いている様子だった。
そして視線を正寛くんの方に向けてしまったばかりに。
「あいつが前の…」
「い、いや…」
不良たちは正寛くんに近付いていく。そして不良たちは目の前に立った瞬間に正寛くんを睨みつけた。
それから数秒して不良の一人が「こいつじゃねぇぞ」と言う。
「サングラス・マスクをしているし、背丈や体付きも似ているが、こいつじゃねぇ。こいつのサングラス越しに見える目が明らかに違う。もっと人を見下したような目をしていたのを今でも覚えている」
すると不良たちは私たちのところまで戻って来た。
「おい、嬢ちゃん、嘘付くとはやってくれるな」
「…嘘なんてついていません」
「これが嘘じゃなくて何なんだ。少なくても俺はあいつのことよく覚えている。あの憎たらしい目だけは絶対に忘れねぇ」
そしてその後、街を見回っていた警察官が来てくれたことで私と優香は怪我を負うことがなかった。
正寛くんは警察官が来てから「ごめんね」と謝ってくれた。
「キミたちのことを助けてあげたかったんだけど」
「大丈夫だよ、私たちはどうにかなったしね、優香」
「うん、ぼくも全然大丈夫」
それからはショッピングの続きを楽しんだ。正寛くんが私たちからさっきの記憶をすぐに塗り替えようと頑張ってくれたお陰で、私も妹もその後はショッピングを楽しむことができた。
正寛くんは送ってくれようとしたけど、私は「家、近いから大丈夫」と断った。
「ねぇ…優香」
「どうしたの?」
「優香は正寛くんのことをどう思っている?」
「すきかな」
「そっか…」
優香の言葉に嘘はない。妹が今まで男性に対してこういう感情を抱いたことはない。そして姉としてそういう感情を男性に対して抱くのは、寂しい反面、良いことだと思っている。
優香も少しずつ大人の階段を上り始めているのだと。
「お姉ちゃんは?」
「…私はもちろん、好きだよ」
――――――
不良の言っていることなんて、信じる必要はないと思う。そう頭では分かっているのに、やっぱり頭の中で一度出た疑問は簡単に解決してくれない。
不良の人たちの言葉を信じるなんてどうかしていると思う。
でも、あの人たちは正寛くんのことを違う人と言っていた。
それに正寛くんは…私たちのことを助けてくれなかった。助けてくれた時がただの気まぐれだった可能性もある。ああいう不良に立ち向かうには勇気が必要で、今日はその勇気が出なかったかもしれない。
どこかなんか…変な違和感のようなものがあるような気がした。
その疑問を解決するために、私はちょっとしたことを思い付いた。これで全てが解決するわけでもないけど、少なくても私の中での疑問は少し晴れる気がした。




