#4
青白い満月が空に浮かんでいる。
明かりのない部屋で、俺とリザベルさんは久しぶりに肌を重ねた。ベッドでの戯れも終わり、入浴後はテラスに出て夜風にあたった。
「君が私を求めてる。それがわかるだけで、毎日嬉しくてたまらないよ」
「……俺は、毎日不安です。貴方は国中のひとから求められてるから。一緒にいられる時間は、これから先少なくなるんじゃないかって」
俺も意外と独占欲が強い。
彼を見上げて本音を零すと、リザベルさんは乾いた前髪を後ろにかき上げた。
「そうだね。でも心配しなくていいよ、ユノ」
月光に照らされ、彼の金の髪が銀に輝いて見えた。思わず見惚れていると、唇を奪われる。
「私は君のものだ。これまでもこれからも……君のことしか見えない。君だけを愛して、とけるまで可愛がりたい」
なんて甘ったるい台詞だ。
最初の頃は恥ずかしいやら何やらでダメージが大きかったけど、今はどうしようもなく心強い。
さらにキスをねだり、抱き着いた。
「リザベルさん……ぎゅってして」
「はいはい。いつもはクールなのに、二人きりだと完全にお姫様だね」
耳朶を吸われ、優しく髪を梳かれる。
「ユノ。愛してる」
視線が交差する。考えるより先に、彼の言葉に頷いていた。
「俺も……貴方が好きです。ずっとひとりで生きて、ひとりで死ぬと思ってたけど」
そうならなかった。音も光も届かない深海に生まれ、死ぬだけだと思っていたのに……迎えに来て、助けてくれるひとが現れるなんて。
現実は、絵本よりずっと劇的だ。感謝と驚き、それとたまらない愛しさを持て余している。
「貴方は俺の王子様なんだ」
俺は彼からもらった愛情を、何倍にもして彼に返したい。
彼の癖がうつったのか、以前なら口が裂けても言えなかった言葉が溢れた。
「愛してます。俺に残ってる最後の愛は、貴方に全部捧げたい。だからこれからも……どうか一緒にいてください」
震える声で伝えると、また激しいキスをされた。
もうそれだけで達してしまう。反り返った俺の背を抱き寄せ、リザベルさんは泣きそうな顔で笑った。
「もちろん。こんな熱烈なプロポーズをされたら、受け入れないわけがない」
ちゅ、と可愛らしいキスをし、彼は俺のピアスに触れた。
「これも何回目か分からないけど。結婚してくれ、ユノ」
透き通った瞳で見つめられる。
確かに初めてじゃない。けど以前のプロポーズとは全然違った。
今は心から彼を求めている。彼と生きることを望んでいる。
「はい。喜んで……っ!」
俺は幸せだ。
そしてこの幸せは彼が作り出してくれた。
俺もいつか彼と同じぐらい大きな幸せを渡そう。密かに胸に誓い、彼に抱きついた。




