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呪いの姫は祝いの王子に愛される  作者: 七賀ごふん
学びの間

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29/35

#9



連れて行かれたのは、壁一面が大窓になってる特徴的な応接間だった。

部屋にはマレードさん以外誰もいないけど、扉の外にはたくさんの警備隊がいる。

ラルドさんも入ることは許されず、こちらが心配になるほど狼狽していた。

リザベルさんは大事な出張中で、連絡がとれずにいる。それも理由のひとつだ。


次から次へと問題を起こして本当に申し訳ない。

やっぱり、俺の存在自体災厄だ。ため息を飲み込み、目の前の男性に向き直る。


「疲れただろう。そこにお座り」

「あ……失礼します」


席につき、改めて一礼する。一旦でも助けてもらったのは事実だ。

そして祓いの力を持つ一族……初めて聞いたけど、何故か懐かしい感じがする。見た目が優しそうなおじいさんだから、という理由じゃない気がするけど。

「落ちた伝票を拾っただけなのに……」

「はは、それも立派な縁さ。現にこうして結びつかせてくれただろう?」

彼はひとしきり笑った後、ゆっくり腰かけた。


「そこら中の国を回ったんだよ。……そして、ようやく見つけた」

「……?」


何のことだ?

不思議に思っていると、彼はさっきのお守りをテーブルに置いた。

「かすかに呪力が残ってるが、もう誰が持っても何も起きないはず。君がこのお守りにかかった呪いを祓ったんだ」

「でも……俺はそんなことできません」

自分がかけた呪いの解き方は教わっていたけど、他人がかけた呪いの解き方なんて。

「無自覚みたいだが、君にはその力がある」

「どうして?」

マレードさんは前に屈み、祈るように両手を握る。

なにかを躊躇っているように見えた。

俺も……ひとつの憶測に辿り着いているのに、それを口にするのが怖くて、何も言えずにいる。


自分が何者なのか。それを知ることは、これまでの自分を否定することのような気がしてしまって。


「ユノ。君は本当は……」


マレードさんが徐に話し始めた瞬間。

俺達の間にある大窓が割れ、凄まじい黒煙が入ってきた。

「何……わっ!」

逃げる間もなく腕を掴まれ、誰かに引き寄せられる。マレードさんのことが心配だったが、どうすることもできなかった。


目隠しと手錠をかけられ、抱きかかえられる。あっという間に城外へ運び出されてしまった。

車に乗せられたのは分かるし、連れ去った相手も分かる。幸い口は自由だったので、勇気を出して問いかけた。

「どこに行くつもりですか」

「……貴方の家ですよ。我々は旦那様に頼まれ、貴方を助けに来たのです」

やはり、父の仕業か。

ため息がもれそうだった。座席の両隣とも誰かが座っているから、目が見えても逃げることは難しそうだ。


それに笑ってしまう。助けに来たなら、手錠をかける必要がどこにあるのか。

こちらの心中を察したのか、傍にいる男性は静かに告げた。


「……貴方の為ですよ。少しでも反抗したら殺せと言われてますから」

「……」


疑われてるのは間違いなさそうだ。

一族からしても、俺がリザベルさんを連れ去ったのか、それとも連れ去られたのか。推し量れずにいるんだろう。


本当に帰ってきてほしいなんて思ってない。心配してるのは、俺が一族の秘密を外に漏らさないか、ということだけ。


今はもう、クリスタッドにもアリヴァー家にも居場所がない。




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