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呪いの姫は祝いの王子に愛される  作者: 七賀ごふん
学びの間

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#7



少女が言っていた雑貨屋は、本当に何の変哲もない街の個人店だった。

けどこじんまりしてるからこそ、犯罪に使われることもある。それはアリヴァー家にいた時に何となく気付いていた。


呪物の卸先は大企業もあれば、裏社会の住人、資産家なんかもいた。守秘義務さえしっかりしてれば誰にでも売るのが一族のやり方だ。

店内はやや薄暗く、音楽もかかっていなかった。陳列されてるのは小物や小さな家具、それと衣服。


色々見て回ったものの、少女が持っていたお守りは見つからなかった。

本当にあれだけだったのか?

不思議に思っていると、不意に肩を叩かれた。


「なにかお探しですか?」


背後にいたのは中年の髭をたくわえた男性。

正直肩を叩かれるまで存在に気付かず、どきっとした。

「あ、ええと……」

人の気配には敏感な方なんだけど。動揺してるのを悟られないよう、笑って誤魔化す。

「あ、兄に最近災難続きで。もしお守りがあれば、見せていただけませんか」

努めて笑顔で伝えた。男性はふむ、と店の奥に戻り、それからいくつかお守りを持ってきた。


そのどれもが天井に吊るすタイプのもので、持ち運びできるようなものはなかった。

やっぱり偶然曰くつきを仕入れてしまったんだろうか……。

「こちらはどうですか?」

「何だか効果ありそうな紋様ですね。……あっというか財布忘れた! すみません」

ポケットに手を入れ、頭を下げる。実際お金を持ってないので演技でもない。

ところが男性は一番小さいお守りを持つと、俺のポケットに入れた。


「来店していただいた御礼です」

「え? そんな、大丈夫ですよ。お金を払ってないのに受け取れません」

「今日はお客さまが少ないので。もし良ければ、お知り合いの方にもウチを紹介してもらえたら幸いです」


少し疑いもしたけど、最終的に申し訳なくなった。

店主の男性に御礼を言い、店を後にする。

あの店から変な気も感じなかったし、ひとまず大丈夫だろう。

今度は御礼の品を持って来店しよう。そう思い王城へ戻った。



「ユノ。今日はどこにいたのかな?」

「えっ」



夜。

浴室の掃除をしていると、仕事から帰ってきたリザベルさんが入口で腕を組み佇んでいた。

「今日ですか? ええと……読書したり、植物の手入れをしてました」

スポンジを持ったまま振り返る。

努めて平静を保ちながら答えると、彼はさらに目を細めた。

「ラルドが午後に二回部屋に訪れたとき、留守だったと聞いたよ」

わ。これはまずい。

城内を散歩してたとでも言おうか。でも……。

逡巡していると、彼はため息を零した。


「さっき、門の監視カメラで君が出入りする姿を確認した」


言い逃れできないやつだ。

泡を洗い流し、彼の方へ歩く。

「嘘をつくのは感心しないな」

「も……申し訳ありません」

捲っていた袖を戻し、俯く。


「外に出たいならラルドに言えばいい。どうして独りで出掛けたんだ? 君も下手したら命を狙われてるんだよ?」

「はい……」


お守りのことを言おうか迷うけど、もし言ったらリザベルさんは絶対あの店を調査しようとするはずだ。

まだ証拠は何も掴んでないし、あの店主も巻き込まれただけの可能性がある。だからまだ黙っておこう。


「ただ、ひとりで出掛けてみたくて。……本当に申し訳ありません。もう絶対しません」

「信じられないな」

「ど、どうしたら信じてもらえますか?」

「君が私に可愛く甘えてくれたら。私は君に愛されてるんだと、自信を取り戻せるかもしれない」


…………。


そこそこ真面目な話をしてるんじゃなかったのか?

無表情で佇む彼に全力でツッコミたくなったが、諦めてタオルで手を拭く。

ため息を飲み込み、代わりに彼の息を奪った。


「ん……っ」


踵を浮かし、彼の胸に手を当てる。

久しぶりに深い口付けをした。


自分からここまで求めたのは初めてかもしれない。柔らかい唇に吸いつき、舌を絡ませる。

離れた時には淫らな糸を引いてしまっていた。


「……上手くなったね。嬉しいけど、ちょっと寂しいな」

「キスだけですよ」


口元をぬぐって見上げると、腰に手を回される。

彼は満足そうに前髪をかき上げ、蠱惑的な声を紡いだ。


「それは良かった」





綺麗にしたばかりなのに、壁が汚れてしまった。

服を全て脱ぎ、浴室内で抱き合う。

また後で洗わなきゃ……と考えながら、快楽に意識を奪われる。

ベッドへ移動した後は、額を指で弾かれた。


「本当にしょうがない子だ。好奇心旺盛なのは結構だけど」

「すみません」

「外には君を狙う奴らがいる。君はしっかりしてるけど天然だし、正義感もある良い子だから」


その言葉を聞き、ギクッとした。

お守りのことは、正義感と言うより一族のひとりだから、という責任感によるものだけど……彼にはそれも見透かされてるのかもしれない。


「……俺は、貴方が思ってるような正しい人間じゃありません」

「そう? でも、そうだね。嘘をついたことは怒ってる。そのお仕置きは必要だ」


リザベルさんの瞳に、また妖しい色が灯る。さすがに何日も一緒に過ごしてると、どこで地雷を踏んだかわかるようになった。

今夜はかなり濃くなりそうだ……。

ユノは唇を引き結び、ため息を飲み込む。


「ユノ。私は君が大切だ。危険に晒す存在は絶対許せない。それが君自身だとしても」




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