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呪いの姫は祝いの王子に愛される  作者: 七賀ごふん
憩いの城

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20/35

#10



不意に髪を触られ、ビクッとしてしまう。

それを見たウォンさんは、申し訳なさそうに両手を上げた。


「失礼しました。あまりに綺麗で、つい……」

「いえ! こちらこそすみません」


リザベルさんにはあんなところやこんなところを触られ過ぎて慣れたけど、まだまだ他の人には過剰反応してしまう。

「リザベルさんにも言われたんですけど。城の中にいて、日焼けすることがなかったからじゃないかと」

「なるほど」

とは言え、これは恐らく生まれながらの色。

黒髪が主なアリヴァー家で、突然変異としか思えない。


これこそ呪いなのではないか、と思ったほどだ。だから「綺麗」と褒められると変な感じがする。

毛先を指でつまんでため息をつくと、美味しそうな香りが漂ってきた。


「お待たせしました! ご飯にしましょう」

「わぁ。すごい……!」


テラさんが運んできたお皿には、焼きたてのパイがたくさん乗っていた。

「お芋のパイに樹の実のパイ、野菜のパイ、色々あるからたくさん食べてくださいね」

「テラの作るパイは美味しいですよ。ユノ様、どうぞ」

二人にすすめられ、手前にあったパイを頂く。熱々のさくさくで、頬が落ちそうなほど美味しかった。


「美味しい……! テラさん、お料理のお仕事もされてるんですか?」

「え? いいえ、独学ですよ」

「そうなんですか。すごい……」


ホテルで出された食事もお洒落で美味しかったけど、このパイは心に沁みる味だった。気付いたら無我夢中で食べており、慌てて手を止める。

「すみません。美味しくて……」

「あはは、いいんですよ。お腹空いてましたよね。サラダとスープもありますから」

お腹が満たされると心まで満たされるんだろうか。ホッとして、言う気がなかったことも口から零れていた。


「ありがとうございます。城から出るまで、こんな美味しいご飯を食べたことがありませんでした。城ではいつも冷めた栄養食だけで、手作り料理が存在するなんて知らなかったし」

「まぁ……」


たまにデザートで果物がつくことはあったけど、一ヶ月に一回程度。乳母が来てくれた時だけだ。だから、料理のレシピがあるというのも軽く衝撃だった。

俺が見てたのは呪術のレシピだしな……。

自分でも内心引いてると、テラさんは俺の隣に腰かけた。

「うん。やっぱり、記憶が戻るまでユノ様はここにいるべきですわ。……いえ」

ウォンさんと目を合わせ、ゆっくり頷く。


「記憶が戻っても。良ければリザベル様と一緒に、ここで暮らしましょう」

「……っ」


……本当に。

アリヴァー家の人間じゃなかったら、どれほど良かっただろう。


「ありがとうございます……」


二人の優しさに包まれ、頭を下げた。

「俺も……二人に恩返ししたいです。俺にできることがあれば、何でも言ってください」

「はは、気持ちだけで嬉しいですよ」

ウォンさんも微笑んでいたが、思わず首を横に振った。

「助けてもらうばかりじゃ嫌なんです。せっかく自由の身にしてもらえたので、これからは人の役に立ちたい」

両手を握り、強く誓う。

二人は不思議そうにしていたけど、やがてゆっくり頷いた。


「それじゃあ、困ったことがあったら相談させてもらいます」

「はい! あ、後敬語じゃなくて大丈夫ですよ。様も付けないで、呼び捨てにしてください」

「でも……良いんですか?」

「すみません。敬語だと、距離を感じるから」


そう告げると、彼らは快く了承してくれた。


「じゃ、ユノ。改めてよろしくね」

「よろしくお願いします!」


二人にお辞儀し、その後は楽しい時間を過ごした。

複数で笑いながら食事をしたのも、生まれて初めて。

そのことに感謝しながら……早くリザベルさんにこのことを話したいと思った。







空が暗くなるまでウォンさんとテラさんと一緒に過ごした。

二人はこの国の情勢を分かりやすく教えてくれた。現王のことやウェスタンド家が取り仕切る行事や祭事、リザベルさんの仕事も。


「リザベル様の祝術の力は本当にすごい。今の王子も、彼の力を受けてから一度も病気に罹らないし」

「大きな災害や事件もなくて、平和そのものなのよね」

「へぇ……」


リザベルさんは思った以上にすごいようだ。

要は祈祷で、祈るだけなんだけど、彼が祝福した者には幸福が訪れる。そして厄除けにもなる。

そこにいるだけで周りが幸せになる。なんて素敵な存在なんだろう。


そんな風に求められるなら、俺もそうなりたい。

でもリザベルさんは疲れてる時もあるし、やっぱり程々が一番かもしれない。

「でもそれだけにリザベル様は狙われることが多くて……今後はより一層、気をつけて過ごすことになるだろうね」

「と言うと?」

「一人きりにはできないってことさ」

じゃあラルドさんのような秘書や側近、護衛に常に囲まれながら動くのか。


安全ならその方がいいけど、……それだと俺もあまり会えなくなりそうで、寂しいな。


気持ちが少し沈みそうになった時、ドアをノックする音が聞こえた。


「夜分に失礼、ラルドです。ユノ様をお迎えに来ました」




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