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呪いの姫は祝いの王子に愛される  作者: 七賀ごふん
憩いの城

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#9




「不安だと思いますが、大丈夫。なにか美味しいものを食べて、ゆっくりしましょう」

「……!」


二人は明るく、またとても穏やかだった。

聞けば夫婦で、夫がウォンさん、妻がテラさん。リザベルさんとは遠縁らしいけど、普段は祭事のサポートをしているらしい。

ウェスタンド家の人数は、アリヴァー家の倍以上。本人達も把握するのが大変だと言うから、統率してるリザベルさんとそのお父様は改めてすごいと感じた。


「ところでユノ様、気付いた時からアリヴァー家の城に幽閉されていたと聞きましたが……」

「はい」

「医者はいましたか? 病院に連れて行かれたことは?」

「ええと……ありませんね」


二十歳になるまで城から一歩も出たことがない。そう言うと、二人は見るからに青くなった。

「休みましょう、と言いましたが……ユノ様、やはり先に医者に診てもらいましょう」

「え? いえ、怪我はしてないから大丈夫ですよ」

慌てた様子のテラさんに返すと、ウォンさんは静かに首を横に振った。


「貴方が置かれていた環境を考えると、まずは健康状態を調べた方がいい。痛いことはしませんから、すぐに城の医務室へ」

「そうなんですか……?」


今のところ健康だけど、彼らが深刻そうに告げるので大人しくついていく。

結果、確かに痛いことはなかった。でもすごく緊張した。

服を脱いで胸に金属を当てられたり、謎の記号が書かれた紙を見せられたり、口の中を見られてまた金属を突っ込まれたり。怖いし、精神的にくるものがあった。


「栄養不足が少々気になりますが……他は気になるところもない。必要な治療はありませんよ」


「「良かったぁ……」」


俺ではなく、ウォンさんとテラさんが胸を撫で下ろした。よく分からないけど、かなり心配させてたみたいで申し訳ない。

医師の年配の男性は、俺を一瞥して問いかけた。

「他に、具合が悪くなる時はありますか?」

「ええと……」

呪術を使うと、弱いものでも必ず体調を崩してしまう。

でもそれは絶対言っちゃいけないので、かぶりを振った。


「ありません」

「なら、今後は定期的に診断すれば大丈夫でしょう」


無事に診断は終わり、二人に連れられて医務室を出た。

正直グロッキーで、足元が少しふらつく。するとテラさんが心配そうに頭を下げた。

「お疲れ様です、ユノ様。今度こそ私達の部屋に行って休みましょう」

「ありがとうございます。って……」

私達の部屋?

それはとういう……と尋ねる気力もなく、言われるままついていく。

王城は上層階に王族の住まいがあり、中層から下は貴族や認められた名家が住んでいるという。


ウェスタンド家は中でも位が高いらしく、与えられてるどの部屋も素晴らしいそうだ。

実際、ウォンさんとテラさんの部屋もとても広く、綺麗だった。

「さぁ、おかけください。お腹も空いてるでしょう、半端な時間ですが、なにか作りますね」

「わわ、お構いなく……!」

大きなダイニングテーブルに連れて行かれる。

想像通り、ここは彼ら夫婦の新居だ。そんなところに居座るのは気まずいというか、すごく申し訳ない。

でもここ以外に行く場所もないし……リザベルさん、早く戻らないかな。


そわそわしてると、目の前に紅茶が入ったカップが差し出された。見るとティーポットを持ったウォンさんが、にこっと微笑んだ。


「どうぞ。熱いから気をつけて」

「ありがとうございます。何から何まで……」


有り難く受け取り、一口飲む。果物の甘い香りがして、とても美味しかった。


「お世話になってばかりで、申し訳ないです」


彼らと一緒にいることが気まずいのではなく、一緒にいると気を遣わせてしまうことが辛い。

だって彼らにとって大切なのはリザベルさんで、俺ではないから。

……そう思っていると、ウォンさんは目の前の席に座り、瞼を伏せた。


「こんなのお世話のうちに入りませんよ。俺やテラはリザベル様のおかげで幸せに暮らしてる。だから彼を助けてくれて貴方は恩人と同じなんです」

「いや、助けたというより、俺もリザベルさんに助けられたようなもので」

「そうだとしても、ここまで一緒に寄り添ってくれたことに感謝します」


彼は優しく微笑んだ。キッチンに立っていたテラさんも「そうそう」と相槌を打つ。


「それにユノ様がご無事だったことも、喜ばないといけないことですわ。アリヴァー家は昔から非道な実験の為に人攫いをしていると聞きます。助け出したいけど、政府の後ろ盾があり迂闊に手を出すこともできない。王族ですら……」

「テラの言う通り。だから、リザベル様だけでなく貴方が無事に戻ってこられたことも嬉しいんです」


……。

そんな風に言ってもらえるなんて、夢にも思わなかった。

嬉しいのに上手く返せない。俯き、誤魔化すように紅茶を飲んだ。


「記憶がないことは不安でしょうが、大丈夫ですよ。私達が傍にいる。居場所ならここで作ればいい」

「……ありがとうございます」


こんな優しい人達がいるなんて聞いてない。

リザベルさんに抗議したいぐらいだ。困って、妙に気恥ずかしくて……胸の中が温かった。


アリヴァー家の人間であることを隠している。

彼らを騙してることが心苦しい。手放しで喜べないのは、それが理由だろう。


「ところで、ユノ様は本当に綺麗な髪と瞳をしてますね」




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