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天使ですが堕ちました  作者: ソイ
第1章 堕天編
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第4話 『落ちてきた者』




「——————以上が、今回堕天した者の情報だ」



天界の大神殿の一室で熾天使(セラフィム)のルシファーが説明を終えた。

部屋にひと時の沈黙が起きる。その後、座天使(スローンズ)であるトロウンズが話しだした。



「ふむ、今回堕天したのは権天使(プリンシパリティーズ)か。しかし地界に出て一瞬で堕天とはのう……。堕ちた理由は分からんが、ちと早すぎではないか?」


「どうせ地界の人間にでも興味を持ったのだろう。ケルブよ、堕天使の報告はいつぶりだ?」


「約120年ぶりだな。その天使は当時大天使(アークエンジェルズ)だったらしい」



ルシファーの質問に対して答えたのは智天使(ケルビム)のケルブだ。

彼は英知と知識を司る天使であり、持ちいる情報量は他者を凌駕する。



「どうするのだルシファーよ。エウロアの権天使(プリンシパリティーズ)がいなくなったのだ。早急に変わりを選ぶ必要があるぞ?」


「分かっておるわい。ワシはこの後『神』に神命をいただきに行くとしよう」


「うむ。ではそうしてくれ。議題は以上か?」


「ああ、今回は緊急でワシが開いた会議だからな。会議は終わりだ。元の持ち場に戻っておくれ」


「はー、全く、天使使いが荒いぞ」



そう言ってトロウンズとケルブが席を立った。

その後、ルシファーが席を立つ。しかし、その時ルシファーの翼の羽の何枚かが抜け落ちた。純白の床に羽がひらひらと落ちる。



「おいルシファーよ。最後に翼の手入れをしたのはいつだ?熾天使(セラフィム)であるお前が翼の手入れを怠ってどうする?」



そう言ってルシファーの翼を見る。

確かに、翼の羽は綺麗に整えられてはおらず、ところどころはねている。

これでは最上位天使としての威厳が台無しだ。



「許せケルブ。最近は忙しいのだ。それに翼が6つもあれば手入れする気も失せるというものよ。それにワシは基本この大神殿を出ることはない。他の天使どもが見ることもないさ」


「そんなことをしているといつか飛べなくなりそうだがな」



こうして、第1階層天使3人による会議は終了したのだった。




◇◇◇




———〈地界〉———



エウロア王国の王都レント。

王城を中心に円形状に造られたこの都市の王城内から見る城下の街並みの眺めは実に壮観である。しかし、そんな街並みが映る窓を横目にため息をつく一人の男がいた。



「空から少年が落ちてきた。か、文だけ見れば信じられないことなのだが……」



ゼルドリック・レント・エウロア。ここエウロア王国の国王である。

ゼルドリックはそう言いながら今回の報告書を机に置いた。

国王になってから色々な報告書を見てきた。その中には勿論、信じられないようなことが書いてあったこともあったが、ほとんどが誇張しすぎた表現や金を出させるための出鱈目な嘘だった。だが、今回は違う。なぜならこの騒動についてはゼルドリック自身も直接目撃したからだ。


その日、王都では王族も出席する収穫祭が行われていた。

だが、その収穫祭というのは毎年行われるものであり、催しも毎年ほとんど変わらないものだ。正直、子供の頃から変わらない祭りを見るのには飽き飽きしていた。


早く終わらないものかと空を見上げた時だった。

突然、何もなかった空間にその少年が現れたのだ。

その少年はまるで翼をなくした鳥のようになす術もなくその場に落ちた。

幸い、落ちてくるのを見た一人の老鍛治職人が受け止めたそうで、少年に怪我は無かったという。



「——失礼致します」



昨日の光景を脳裏で思い出していると職務室の扉が叩かれた。

この声からしてレトガントだろう。彼は昔から王城に勤めている優れた宰相である。歳はゼルドリックよりも上だというのに仕事の速さは全盛期のままだ。何度か休職を勧めてみたが彼は首を縦に振らなかった。



「うむ、入れ」


「殿下、あの少年の尋問が終わったようです。それと、少し興味深い話が」


「ほう?聞かせてみよ」


「それが……」


「それが、なんだ?」


「過去の文献を調べてみたところ、どうやら空から人が落ちてきたという事例は初めてではないようです」


「なんだと?それはどこだ?」



ゼルドリックは興奮気味に聞く。

その問いにレトガントは間をおいて答えた。




「———神聖セレスシャル皇国です」


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