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天使ですが堕ちました  作者: ソイ
第1章 堕天編
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第2話 『堕天使』




「堕天……ですか?」



いつかの記憶だ。昔、堕天について誰かと話した気がする。

昔といっても天使であるサエルにとってそれは数十年、いや数百年も前のことだろう。もう自分の正確な歳は知らない。



「そう、堕天。君は堕天した天使をどう思う?」



記憶の中でそう自分に問いかける天使は綺麗な声をしていた。

長い髪からして女天使なのだろう。

顔は……どんな顔をしていたのだったか、やはり完全には思い出せない。

そして、確か自分はこう返したはずだ。



「あまり良いとは思えません。天使としての絶対的なルールを破り、『平等』を捨てるなんて、信仰している地界の者に失礼では?」


「……そうだね。確かに君の言う通りだ。信仰心を糧に生きる私たちにとって堕天は天使であることそのものを否定するのに等しい。でもね、私は“悪い”とは思わないのだよ」


「何故です?だって堕天した天使は種族も変わって……」


「———『堕天使』になる。確か、そう言われているね」


「はい。ただ、堕天使というのは名称だけであって、実際天使と何が違うのかは分かっていないようですが。でも、どうして急にそんな話を?」


「……ただの興味だよ。ただの好奇心。今の話は忘れてくれてもいい」


「そうですか。しかし、本当にーーー様は変わっていらっしゃいますよね。普通、堕天に興味を持つ天使なんていませんよ?」


「ふふふ。よく言われるよ」




◇◇◇




何故、今あんなどうでもいい話を思い出したのだろう。

ずっと忘れていたはずなのに。



「ーーーーーーーー⁉︎」



そういえば、その女天使とはその会話が最後だった気がする。

彼女は今何をしているのだろうか。



「ーーーーーー!」



何やら声が聞こえる。それも大勢の。

人間の声だろうか?祭りが盛り上がってきたのか?

やはり人間は面白いな。



「ーーーーーい!ーーおい!ーーーおい少年!」



少年?誰のことだ?というかさっきから僕の体を激しく揺らしているのは誰だ?

教会にいる大天使(アークエンジェルズ)か?確かに今は職務中だったな。早く起きないと。


サエルはゆっくりと目を開けた。眩しいほどの太陽光が目に入ってくる。

何度か瞬きを繰り返し目を慣らさせる。そして、視界に映ったものは……



「おお!目を覚ましたぞ!大丈夫か少年?いきなり空から落ちてきたから驚いたぞ。ああいかん、誰か!衛兵に報告を!空から少年が落ちてきた!」



大勢の人間だった。しかも全員こちらを心配そうな目で見ている。

さっきから大声を出しているのはこのガタイのいい老いた人間か。

何を見ているのだろう。ああ、空から落ちてきた少年とやらか。

確かにそれは一大事だ。とにかくその少年の確認を……



「少年、ここがどこか分かるか?名前は?」


「——え」



この時、サエルにとってありえないことが起きていた。

そのガタイのいい老いた人間が体を揺らしたのだ。紛れもないサエル自身の。

天使と悪魔は人間には視認できない。はずだ。そのはずだ。

だが、現に今、その老いた人間が自分に触れ、揺らしているのだ。

つまり、相手は自分。ならその落ちてきた少年というのは……



「僕……、なのか……?」




————その日、僕は地界に落ちた。




◇◇◇




「はー、本当になんなんだこの子は⁉︎」



そう唸る男の声が部屋中にこだましていた。

さっきの眩しいほどの太陽光はどこへやら。周りは薄暗い。それに埃っぽい。

目の前に座る衛兵らしい人間の男はさっきからそればっかり言っている。



「名前はサエル。ここがエウロア王国なのは分かってる。なのに出身地と自分の年齢がわからない⁉︎本当になんなんだこの子は⁉︎」





地界に落ちて1日目。今、僕は地下牢にいます。


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