第二章 両端(3)
十個の関門をすべて終えると、俺たちは最初に集合した活動会館へ戻ってきた。暑い屋外から冷房の効いた部屋へ戻ると気分が一新され、各所に散らばっていたそれぞれのグループも次々と戻ってきた。
結局、最後まで俺たちのグループは端月のグループと鉢合わせることはなかった。少し残念ではあったが、俺は前向きな姿勢を保ち、後に続く活動へ意識を向けることにした。
その時、俺は前から入ってきたグループの中に端月の姿を見つけた。俺たちの視線が合い、彼女はわずかに笑みを浮かべ、俺に小さく手を振った。俺も手を振り返した。
この時、曜光は以前のようにからかうことはせず、俺の後ろであぐらをかいて座り、あくびをした。
拡声器から柔らかな曲が流れ、広々とした室内に響き渡る。
かなり時間が経って、すべてのグループが集合し終えると、司会を務める先輩が壇上に上がって活動を進行し、それぞれのグループの得点を集計した。
「それでは今回の謎解きはここまでとします。続いて、皆さんは食堂へ行って食事をしてください。食事が終わった後は、肝試しを行います」
先輩たちの案内に従い、俺たちはグループごとに、それぞれ担当する先輩に連れられて食堂へ向かった。この山荘側で俺たちの夕食を作ってくれるため、自分たちで用意する必要がなく、かなり手間が省けた。
夕食は大皿料理の形式で、皆で円卓を囲んで食事をした。
「逐幸、お前の食欲、俺が思っていたよりすごいな」
「お前の茶碗の中を見たら、俺のこれは大したことないと思うけどな」
竹箸を持った俺は、曜光の茶碗に山のように盛られた白飯を見てツッコミを入れた。
皿に盛られた料理の量は決まっているが、白飯はまだたくさん残っているため、曜光が盛った量が他の人に影響することはない。
俺の場合は、幼い頃から食べ物を残してはいけないと言われてきたため、食べる量もある程度鍛えられている。
「そういえば、逐幸、お前、端月と付き合ってるんだってな。俺、朝にはもう聞いたぞ」
その時、円卓の向かいに座っていた、同じ教育学部の男子学生が俺に尋ねてきた。
「えっと、ああ」俺は思わず頷いたが、どう話を続ければいいのか分からなかった。
大学生同士の噂って、本当に裏で広まるのが早いんだな……
男子学生の隣に座っていた科学教育学系の女子学生も話題に入ってきた。
「え──そんなことがあったの? あなたたちが言ってる端月って、どの人?」
男子学生が遠くのテーブルに座っている端月を指差すと、女子学生は感嘆の声を上げて言った。
「おお、綺麗な人じゃん。それじゃあ、あの時はどっちが先に告白したの?」
それを聞いて、俺はあの時の場面を一気に思い出した。まだ二週間前の出来事なのに、もうずいぶん昔のことのように感じられた。
「うーん……たぶん同時かな。二人ともお互いに好きだって言った。ほかの人がどうなのかは分からないけど、付き合うなら、やっぱり二人とも気持ちを伝えたほうが公平だと思う……まあ、これは俺個人の考えだけど」
この後何を言えばいいのか分からなかったので、俺はわざと料理を一口取り、白飯と一緒に口へ入れて噛んだ。
「それで、お前は相手のどこが好きなんだ? やっぱり顔か? それとも胸とか?」
この女子、ずいぶんと直接的に聞くな……でも、本当にただ興味があるだけという感じで、悪意はなさそうだったので、俺はそれでもなんとか答えようとした──
「ええ、そういう聞き方はちょっと……」
しかし、その前に曜光が先に場を取り繕ってくれた。俺は心の中で彼に礼を言わずにはいられなかった。
「顔立ちももちろんその一つだけど、一番大きいのは雰囲気かな……彼女のそばにいると安心できる感じがする。それに話していてもすごく気楽だし──それから、自分なりの原則を持っているところもある。俺がうっかり彼女に頼りすぎたら、そうしちゃいけないって注意してくれるけど、実際はほとんどのことをすごく賢く、しかも優しく対処してくれる。話し方にもすごく品がある感じがするし……それから、姿勢がいつもすごく正しくて品があるから、元気でしっかりした印象を与えてくれるし、それに普段の淡々とした表情の中で、たまに少しだけ変化を見せる瞬間が本当に可愛くて、ぎゅっと抱きしめたくなる──え……?」
俺が途中まで話したところで、突然テーブル全体から声がなくなり、皆が呆然と俺を見つめていた。
「どうしたんだ……?」
俺が困惑した声を出すと、その時、ぷっと吹き出す音とともに、曜光が肩を震わせながら箸を置き、その手で口を覆って、笑い続けた。
質問した女子学生と一部のメンバーは気まずそうな表情を浮かべ、男子学生は不自然に咳払いをした。
俺はわけが分からなかったが、その時、曜光がようやく笑い終えると、皆に「早く食べろよ。じゃないと料理が冷めるぞ」と言い、メンバーたちはようやく再び箸を動かし始めた。
だから結局、何が起きたんだ……?
しばらくして、食事を終えた曜光は待ち時間の間、スマートフォンのメモ帳で何かを入力していた。文字を打ち終えると、彼は顔を上げ、俺に画面を見せた。
「さっきの話、もう逐語録にしてお前に送ったから、時機が来たら相手に送るのを忘れるなよ。でも送らなくてもいいぞ。今回の旅行の思い出ってことでいいからな」
俺は曜光とのチャットを開いた。すると、そこには本当に長々とした文字メッセージが表示されていた。
え、ちょっと待て、これ、これ……
読めば読むほど恥ずかしくなってくる。嘘だろ、俺、さっきこんなことを言ったのか……?
いくら現実から逃げようとしても、記憶は確かに頭の中に残っている。俺は思わずこめかみを押さえ、気まずそうなため息を漏らした。
夕食の後、続いて行われたのは肝試しだった。
先輩たちの案内に従って俺たちは少し広々とした施設へやって来た。午後に俺たちがいた活動会館に少し似ていたが、ここの内部には、ひときわ目立つ木製の扉が設置されている。扉の表面は斑になっており、そこには木製の閂が掛けられていて、かなり古い時代の雰囲気を醸し出していた。
「これから番号を引いて、活動のグループと順番を決めます。各グループのところへ引率の先輩がくじ箱を持って行きますので、その場で待っていてください。先輩が皆さんのところまで来たら、一人ずつ自分の番号を引いてください」
「番号が示すグループと順番については、くじを引き終わった時点で活動グループに発表します。チャットグループを直接確認してください。携帯電話を持ってきていない後輩は、隣の人に見せてもらうか、先輩たちに聞いてください。それでは、これより正式にくじ引きを始めます──!」
なるほど、俺たちは列に並んだまま移動する必要がないため、混乱を避けることができる。グループ分けの結果をチャットグループで発表するのも非常に効率的で、掲示板の前に大勢が集まって自分の番号を確認する必要もない。先輩たちが活動を運営する時は本当によく考えられている。きっとかなり話し合ったのだろう。
将来、自分も先輩たちと同じように活動の運営に参加することになるかもしれないと思い、心のノートにこの方法を書き留めていると、俺たちのグループを担当する先輩がすでに俺のそばまで来て、くじ箱の開口部を俺に向けた。
くじを引き終えた俺は、チャットグループの情報と照らし合わせた。そこには、俺が後ろから数えたほうが早いグループにいることが表示されていた。
『どうだった? 逐幸はどのグループ?』
その時、スマートフォンの上部に端月からのチャットメッセージが表示された。俺は端月とのチャットを開き、自分のグループと番号を伝えた。
『あら、それは本当に残念だね』
──端月はくじの結果を照らし合わせて感想を述べると、続けてメッセージを送ってきた。
『またすれ違っちゃったね』
この一文はとても短く見えるのに、なんとなく寂しそうだった。
俺は少し考え、迷った後、ゆっくりと文字を打ち始め、それからぎこちなく送信ボタンを押した。
『俺は君が好きだ』
一瞬でメッセージが既読になったことを確認したものの、俺はすぐに前のページを押し、俺の後ろに座っていたある人物が先ほど気を利かせて打ってくれた長々とした文章をそのままコピーして、端月とのチャットに貼り付けた。
──転送という方法を使わなかったのは、その言葉はもともと俺が言ったものだからだ。これは転送には当たらないはずなので、コピー&ペーストを採用した。
こうして、先ほど食事中に俺が演説した黒歴史は、たちまち端月に既読された。
ずっとスマートフォンの画面を見ているのも少し恥ずかしかったので、俺は顔を上げ、少し離れたところにいる端月へ視線を向けた。
彼女の表情は、明るい黄色の照明がいくつか灯っているものの、それでも少し暗く感じられる室内では、はっきりとは見えなかった。俺に分かったのは、彼女が俯いてスマートフォンを見つめていたことだけだった。そして、彼女は顔を上げ、俺と視線を合わせた。
どうやら少し唇を噛んでいるようだったが、それから二秒もしないうちに、ゆっくりと俯いた。
しかし、メッセージが届いたのは、それからさらに二分後だった。
『私も』
この一文には句点がなかった。うっかり送信ボタンを押し間違えたのだろうか? 小説家である俺は、チャットメッセージにも句点を付けることに慣れている。端月も普段から正しい句読点を使う習慣があり、彼女の真面目な性格にも合っている。
その時、そのメッセージが取り消された。代わりに、続けて新しいメッセージが表示された。
『私も君が好き』
『ありがとう』
『今度、さっきのようなことを直接私に言ってくれたら、嬉しい』
『私も、その時は直接君に言うよ』
──なるほど、さっき取り消された「私も」は、ここで使うためだったのか。
『その、活動が始まるみたい。私のグループは前のほうだから、しばらくスマートフォンを見られない』
『また後でね』
どうやら文字から、慌てている様子が伝わってくるようだった。でも、俺自身も大して変わらない。
今にも溢れ出しそうな何かの感情を抱えながら、俺の全身はわずかに震え、何度もチャットを開いては戻り、また再び開いた。
その後しばらくして、端月のグループが、すでに左右に開かれている活動用の大門へ向かって歩き始めた。俺は彼女の姿が見えなくなるまで、その後ろ姿を見送った。




