第五章 明湖(2)
五月の第二週、中間試験を終えた週末、俺と端月、湖櫻先輩は、ウォーターパークの入口前で待ち合わせた。
梅雨の季節が訪れ、このところの空気は湿気のせいでかなりじめじめしている。
しかし今日は太陽が顔を出し、気温も高く、水遊びをするにはかなり適した日だった。
俺は着替えや水着などを入れたリュックを背負い、駅で端月と合流し、二人で電車に乗って郊外にあるこの大型屋内施設へとやって来た。
外からは、施設全体を取り囲むように大きなガラス張りの窓があるのが見える。
ガラス越しに中を覗くと、すでに水着を着た人々が施設内で遊んでいる姿が見えた。
彼らはとても涼しそうに見え、太陽の光を直接浴びて暑さを感じていた俺は、夏がまだ来ていないにもかかわらず、すでにその兆しを見せている暑気を和らげるため、早く水に入って泳ぎたくなった。
俺は白い半袖のシャツに通気性の良い長ズボンを合わせている。
一方、端月は淡い緑色のトップスに白いスカートを合わせており、裾は膝より少し上くらいの位置まであった。
俺たちより先に到着していた先輩は、桜色のワンピースを身にまとっており、裾には薄いチュールを重ねたデザインが施され、どこかおしゃれな印象を与えていた。
約束していた時間が近づいた頃、入口から一人の人影が現れ、その人物は悠々とした足取りで俺たちの前まで歩いてきた。
「おや、みんなもう来てるじゃん。それじゃあ、行こうか」
曜光はスポーツウェア姿で現れた。
上半身は吸汗速乾性のスポーツシャツで、下半身は動きやすいハーフパンツだった。
もし俺が一番最後に現場へ到着していたら、申し訳なく感じていたかもしれない。
だからこそ、曜光のあっけらかんとした態度が、俺には少し羨ましく思えた。
以前、俺が先輩に曜光を誘って一緒に行くことを勧めた時、先輩も「彼なら人もいいし、大丈夫じゃない?」と賛成してくれた。
その言葉から、湖櫻先輩は学科の誰がどんな人なのかを、ある程度把握しているのだと俺は判断した。
そんなところに感心しながら、俺は隣を歩く先輩の横顔を見つめた。
先輩なら、誰を遊びに誘ったとしても、相手はきっと一緒に来てくれるのだろう。
もしかすると、同学年の友人だからこそ、もっと複雑な付き合いが生まれるのかもしれない。
俺と端月なら、状況はもっと単純で、彼ら二年生のクラスの事情にも影響しない。
だからこそ、彼女は俺と端月の二人を誘ぶことにしたのだろう。
もし本当にそんな理由で選ばれたのだとしたら、俺は少し誇らしく思うし、今日はみんなで楽しく過ごせればいいと思った。
「ん?」
どうやら俺の視線に気づいたらしく、先輩が少し笑みを浮かべた目でこちらを見てきた。
俺は首を横に振って「何でもない」と伝え、端月に気づかれる前に、このやり取りを終わらせた。
今、端月は曜光と中間試験の内容について話しているので、大丈夫だろう。
俺たちはそれぞれ更衣室へ向かった。
俺は服を脱ぎ、青いラインの入った黒いビキニブリーフ型の水着に着替え、ビーチサンダルを履いた。
身体を濡らしてから、曜光と連絡通路を通って、プールのあるレジャー広場へ向かった。
曜光は濃紺のビキニブリーフ型の水着に着替え、首にはゴーグルをかけ、手にはスイムキャップを持っていた。
本格的に泳ぐためのコースへ向かうのであれば完全装備が必要だが、水上アトラクションで遊ぶ場合はそこまで厳しく決められておらず、スイムキャップやゴーグルを着けるかどうかは個人の判断に任されている。
俺たちは更衣室へ続く通路に近い広場の端で、二人の同行者である女性たちを待ちながら、適当に雑談していた。
俺と曜光が音楽がどのように作られるのかについて話していると、通路の出口の方から軽やかな女性の声が聞こえてきた。
「待たせたねー」
俺は振り返り、先頭を歩いていた湖櫻先輩を見つけ、軽く手を振った。
湖櫻先輩は茶色の長い髪を後ろでまとめており、身につけているのは白いビキニの水着だった。
アニメやライトノベルのイラストでしか見たことのなかった、こういう水着を現実の人が着ているのを見るのは初めてで、それも知り合いだったため、俺はかなりの衝撃を受けた。
俺はほんの一瞬だけ目をやったが、先輩の胸元には確かな存在感があった。
それに、彼女が白い水着を選んだことには少し意外に感じた。
てっきり黒や紫のような、大人っぽさや誘惑を感じさせる色を選ぶと思っていたのに、まさか純粋な白とは思わなかった。
このデザインは彼女の純真で奥ゆかしい一面を引き立てている。
彼女の人をからかういたずら好きな性格を考慮しなければ、この格好なら多くの男子にとって理想の恋人になってしまうだろう。
俺の頭が素早く回転しているその時、先輩の半歩後ろを歩いていた端月が目に入り、俺は思わず喉から驚きの声を漏らした。
その時、二人の女性が俺たちの目の前まで歩いてきた。
「どうしたの? そんなに驚いた顔をして」
俺は思わず先輩の言葉を背景音のように聞き流してしまった。
なぜなら、この瞬間、俺は水着姿の端月に圧倒されていたからだ。
冬休みに、俺は端月と一緒に屋内の温水プールへ遊びに行ったことがある。
その時、彼女が着ていたのはプルシアンブルーのワンピース型水着だったため、今回もそれを着てくると思っていた。
ところが、結果は俺の予想を大きく裏切るものだった。
俺と目が合うと、端月は思わず唇をきゅっと結んだ。
青みがかった瞳からは、恥ずかしそうな気持ちが伝わってくる。
彼女も同じように黒いセミロングの髪をまとめていたが、先輩とはまったく異なる雰囲気を漂わせていた。
彼女が身につけているのはピンク色のビキニ水着で、胸元の二つの柔らかな果実はトップスの水着に包まれている。
その身体には、身体を濡らした時に残った水滴も少し付いていた。
透明な水滴が丘の上端に沿って滑り、中央の谷間へと入り込んでいく。
俺は途端に口の中が乾くのを感じ、ほとんど残っていない唾液を一度飲み込んだ。
「ふふ、逐幸。あなたの出番が来たわよ。早く私たち二人のこの格好について感想を言ってみて。まずは私からね」
湖櫻先輩は、その流れで俺に一つの挑戦を突きつけてきた。
どうやら先ほど俺が彼女の言葉に反応しなかったことが、不満だったらしい。
俺は端月を見ると、彼女は恥ずかしそうな表情を浮かべながら、おずおずと頷いた。
俺は視線で曜光に助けを求めた。
すると、曜光は早く遊びに行きたそうな口調で言った。
「何だよ? 感想を聞かれてるんだから、早く答えてやれよ──?」
こいつ……これは俺に早く挑戦を受けろと励ましているのか、それとも単純に早く遊びに行きたいだけなのか?
──そんな心の中でのツッコミによって、俺は少し態勢を立て直した。
俺は覚悟を決め、もう一度先輩へ視線を向けた。
その時、彼女の桜色の瞳と視線が交わった。
彼女は笑みを浮かべ、まるでこれから面白いものを見ようとしているような、それでいて少し期待を込めた眼差しを見せていた。
もし俺が端月と付き合っていない男だったら、彼女のこの表情に完全に心を奪われていたことだろう。
だが俺は、からかわれたことで少し揺らいだ気持ちを抑え、改めて彼女の格好を見つめ直した。
まとめた髪が、大人のお姉さんらしい雰囲気を加えている。
整っていながら柔らかな顔立ちに、純白のビキニ水着を合わせている。
俺が眺めている間にも、彼女は身体と頭を少し傾けた。
これも誘惑の一環なのか、それとも単純に少し恥ずかしく感じているだけなのかは分からない。
均整の取れた身体つきと、柔らかそうで存在感のある二つの胸が、全体として純粋で美しい印象を与えている。
上から下まで見終えると、俺は再び彼女と目を合わせた。
どう答えるべきかを頭の中で考えながら、彼女の期待に満ちた表情を前にして、俺は口を開いた。
「この格好、先輩にすごく似合ってると思います。強いて言うなら、先輩はもっと大胆なデザインを着ると思っていたので、最後にこんな自然な魅力を感じさせる格好を選ぶとは思いませんでした。すごく似合ってますし、綺麗だと思います」
俺の感想を聞いた湖櫻先輩は、思わず呆然とした。
俺は彼女がすぐにからかいの言葉を返したり、「やっぱりそうよね」といったことを言いながら胸を張り、自信満々な表情を見せたりするものだと思っていた。
しかし、結果として彼女は頬を赤くし、ひどくぎこちない様子で俺に微笑んだ。
そして、下から上へと俺を見つめながら、柔らかな声で、小さく「うん、ありがとう」と言った。
どういうことだ……?
こんな状態になった先輩なんて、今まで見たことがない。
まさか今日は、何か変なものに取り憑かれているんじゃないだろうな?
このことは、先ほど彼女の水着姿を見た瞬間よりも、俺を動揺させた。




