第三章 連結(3)
午後四時に近づくと、このエリアは先ほど俺たちがいた競泳エリアよりも少し人が増えていた。
親に連れられてプールへ来た子供たちもいれば、年配の人が静かに水に浸かり、時々少しだけ移動している姿もある。また、何組かの中高生がふざけ合っていて、どうやら俺たちと同じように、すでに冬休みに入っているようだった。
このエリアのプールは水深が浅かったので、俺たちは岸辺で適当に場所を見つけて水に入った。
そして今回も俺が先に水へ入り、それから端月の手を握って彼女が水に入るのを手伝った。
端月は大げさな姿勢で水に入るような人ではないので、水に入った時に上がった水しぶきもほんの少しだけだった。
「今回はどうして私にちょっかいを出さないの?」
プールの底にしっかり立った後、端月は俺にからかうような笑みを浮かべた。
俺は彼女の顔に手を伸ばした。
てっきり俺の手を払いのけると思っていたのだが、どうやら彼女は俺に顔を触らせてくれるようだった。
俺は手のひらを彼女の柔らかな頬の上で優しく滑らせ、水に入った時にうっかり付着した水滴を拭い取った。
「そんなにちょっかいを出して、君が警戒しすぎて俺を避けるようになったら、俺はちょっと寂しいな。それとも、実は俺にちょっかいを出されるのが好きなの?」
「逐幸、私、怒るよ……?」
そんなことを言っているものの、彼女の口調はとても柔らかく、少しも怖く感じない。
俺がもう少し彼女の表情を観察しようとしたその時、端月は突然、指を揃えて少量の水を跳ねさせ、俺の顔面を直撃させた──
「ぶっ……! うぅ──!」
や、やられた……!
俺が腕で顔を覆い、鼻に入った水を流し出していると、端月はさらに追撃してきた。
そして、俺も立ち直ると反撃を開始した。
俺たちはまるで子供のように互いに水を掛け合った。
比較的気をつけなければならないのは、彼女が水を掛けるために腕を力いっぱい振ると、胸元の布地がわずかに揺れることだった。
そして、その瞬間に俺は気を取られて攻撃を受けてしまう。
自分で作った水の幕で相殺しようと思うのだが、いざ本当にそうしてしまうと、それはそれで少し惜しいような気がした。
それでも、最後には俺はとても楽しく遊んでいた。
端月の顔には花嫁のような屈託のない笑顔が浮かんでいて、彼女も俺と同じように、二人で一緒に遊ぶことを楽しいと思ってくれていたらいいなと思った。
水の掛け合いが一段落すると、俺たちはまた適当にしばらく泳ぎ、それから互いの手を繋いで、プールの中で仰向けになって浮かんだ。
そうしてしばらく遊んだ後、ようやく岸へ上がって休むことにした。
ロッカーから水筒といくつかの荷物が入ったトートバッグを取り出した後、俺たちは二階へ上がった。
ここはプール利用者の休憩エリアとして整備されていて、利用者が自由に使えるテーブルや椅子だけでなく、スポーツドリンクやミネラルウォーター、お菓子を購入できる自動販売機も設置されていた。
俺たちはすぐに席を見つけた。
席の片側には、誰かがうっかり二階から落ちないようにするための手すりが設置されている。
手すりの近くに立つと、一階の競泳エリアを見下ろすことができた。
俺はトートバッグからバスタオルを取り出し、身体と顔を拭いて乾かした。
端月は先に小さなタオルで顔を拭き、それから大きなバスタオルを取り出して身体を拭いた。
俺はすぐに身体を乾かし終え、座った。
こんなことをするのは少し失礼だと思いながらも、俺の視線は恋人の動きに引き寄せられていた。
端月はバスタオルで、自分の肌とそのプロシアンブルーのワンピース型の水着の表面を一緒に拭いて乾かしていた。
そして、肩紐のあたりからバスタオルを中へ入れて拭こうとしたところで、俺の視線に気づき、いったん動きを止めた。
「えっち……やっぱり隣の更衣室で拭くことにする」
彼女が頬を膨らませて抗議するような表情を浮かべるのを見て、俺は申し訳なく思ったが、同時に苦しい気持ちにもなった。
そんな気持ちが表情に出ていたのか、端月はバスタオルを俺に差し出して言った。
「でも、その前に私の背中を拭いてくれる? そこは一人だとちょっと拭きにくいから」
彼女に頼まれたことで、俺の苦しい気持ちは一瞬で喜びに変わった。
そして俺がバスタオルを受け取ろうとする直前、端月はさらに付け加えた。
「もー、ちょっとだけ手伝ってよ。いい……?」
そこまで言われなくても俺は喜んで手伝うつもりだった。
だが、彼女はおそらく俺の気持ちを気遣って、そう言ってくれたのだろう。
先ほどの喜びにさらに甘い感情が加わり、俺は思わず顔をそらしながら、彼女の手からそっとバスタオルを受け取った。
端月は微笑み、身体を後ろへ向けた。
このワンピース型の水着は、後ろ側がどの部分でも彼女の身体を覆っているわけではなく、一部のとても滑らかできめ細かな背中が露出していた。
俺はバスタオルでゆっくりと拭き、彼女の肌を乾かした。
終わると、端月はバスタオルを受け取り、両端を掴んで広げると、わざと俺の身体を囲むようにしてしばらく遊んでいた。
俺にはこの行動の何が楽しいのか分からなかったが、彼女の顔には興味津々といった表情が浮かんでいて、俺もとても素直に嬉しくなった。
その後、端月はバスタオルと小さなポーチを持って更衣室へ向かった。
突然やることがなくなった俺は椅子へ戻り、先ほど二人で一緒に遊んでいた時の光景を思い浮かべた。
まぶたもいつの間にか重くなり、周囲の人の声や一階のプールで水をかく音が、まるで子守唄のように聞こえてきた……
──幸……逐幸、今そんなふうに上半身裸で寝ていたら、風邪を引いちゃうよ。逐幸、逐幸……? はぁ……もう、仕方ないんだから……
朦朧とした意識の中で、誰かが俺にそう言っているようだった。
だが、もともと睡眠不足だったことに加え、何往復も真剣に泳ぎ、端月と存分に遊んだことで、俺には眠気のさらなる誘惑に抗うことが難しかった。
その時、先ほどまで少し冷えていた身体が、突然かなり暖かくなった……なんだか……すごく気持ちいい……
安心すると、すべての音がまるで俺から遠ざかる速度を速めたかのように感じられた。
そして、周囲が完全な静寂へと変わった時、俺の意識は途切れた。
俺は温かさを感じた。
上半身と太腿のあたりが温かな空気に包まれ、頬、首、肩にも何か温かいものが触れている。
一方、足の裏には地面の硬さと冷たさを感じ、背中が寄りかかっているものは少し肌に張り付いているようで、少し気になった。
俺の喉から小さな呻き声が漏れ、それからゆっくりと目を開いた。
どうやら俺は眠っていたらしい。
身体には少し粗い布地のようなものが掛けられているようで、肩から右腕、太腿のあたりまでがそれに触れていた。
不思議なことに、左腕には布地の感触がなく、代わりに柔らかく心地よい温度を発するものに触れていた。
頬と首のあたりにも同じような熱が伝わってきて、俺は安心した。
その時、ぼんやりしていた視界がはっきりしてきた。
改めて確認すると、俺の身体には二枚のバスタオルが掛けられていて、左腕、肩、そして頬が触れているものは、それぞれ端月の腕と首だった。
つまり俺は彼女の肩にもたれかかっていて、頭を左側へ傾け、端月と頭を寄せ合い、二人の頬が互いに触れ合いながら寄り添っていた。
彼女の身体にも、俺と同じように二枚のバスタオルが掛けられていた。
二人の体温によって、バスタオルの中の空気が温められて暖かくなっている。
二人はそれぞれ背もたれの付いたプラスチック製の椅子に座り、バスタオルと身体を通して互いに繋がっているような状態になっていた。
俺は恋人の存在を感じながら、心臓が少し速く鼓動するのを感じた。
彼女の頬はとても柔らかく、熱を帯びた首も同じように愛おしく感じられ、二人の腕が触れ合っているところには少し恥ずかしさを覚えた。
その時、俺が目を覚ました動きが影響したのか、眠っていたお姫様が目を覚ましたようだった。
端月は目を開き、同時に少し口を開いて、熱を帯びた色っぽい吐息を漏らした。
俺が静かに待っていると、しばらくして端月は少し気だるそうな声で俺に話しかけてきた。
「起きたの……?」
まるで小動物が自分の親を呼んでいるようで、俺の心にはたちまち甘い味わいが浮かんだ。
「起きたよ。毛布を掛けてくれてありがとう。すごく暖かい」
「あなたが寝るって言い張ったからでしょ……私はもともとあなたの面倒を見るつもりなんてなかったんだから」
端月は俺を見ずに、そのまま答えた。
俺には、それが俺に甘えているようにしか見えなかった。
すぐに彼女を強く抱きしめたかったが、周囲の視線が気になったので、俺は元の姿勢を保ったまま、声を落として彼女への親しみを示した。
「じゃあ、どうして後からそんなに俺を甘やかしてくれたの?」
「うん……あなたが寝ている姿が可愛かったから……?」
俺たちは黙ったまま、バスタオルの下で手を繋いだ。
彼女の手はバスタオルの中の空気よりも温かかった。
互いの指先をわずかに擦り合わせ、それから少しずつ相手の指を絡めていった。
「でも、君とこんなに近くにいると、俺、ついえっちな気持ちになっちゃう……」
「お? どんなふうにえっちになるの?」
その挑発するような言葉によって、俺は警戒を解いて言った。
「身体全体をもっと近づけたくなったり、それから、腕がちょっとだけ君の胸に触れる機会があったら……さらに我慢できなくなったら、手のひらも伸ばして、その場所を触ってみたくなる。嫌かな……?」
「幸い、あなたが悪さに使いそうな手はもう先に封じておいたから……逐幸、そんなに胸が好きなの?」
端月はとても小さな声で言った。
この時の会話は、二人にしか聞こえない。
「だって……すごく柔らかそうだし、それに、だって、君の胸と身体だから……」
「……ドキドキする?」
「えっちな気持ちになる……」
「変なの。どうしてあなたは、頑なにドキドキするって言わないの……?」
端月は少し不満そうな声で言った。
「もちろんドキドキするよ……でも、それ以上にえっちな気持ちになるから、先にそれを言わないとなんだか正直じゃない気がする……」
俺がそう言い終えると、端月は穏やかな呼吸音だけを立てて返事をしなかった。
俺は二人が触れ合っている身体から、呼吸によって互いの身体が上下するのを感じることができた。
「もう……そんなに正直に言われても、今すぐ触らせてあげるわけにはいかないよ」
「それって、帰ったら触ってもいいってこと?」
俺の心臓はどんどん激しく鼓動し、口も乾いてきた。
端月は身体の側面を俺に少し擦りつけ、それから言った。
「違うよ。私が言ってるのは、いつか未来に、逐幸が私をすごく喜ばせてくれて、私が触ってもいいと思った時に触らせてあげるってこと」
やっぱり、そういう答えか──俺は少し笑いたくなった。
だが、さっきの俺は少し本気だったような気がして、素直に笑うことができなかった。




