第二章 金星(5)
今日の午前八時半頃、学校に来た俺は一棟の校舎へ向かい、エレベーターに乗って最上階まで上がった後、階段へ向かってさらに上へ登った。
階段にはカビ臭さが漂っており、脇に置かれた器具は埃に覆われ、壁の白い塗装もひび割れて剥がれ落ちていた。
最上階に到着すると、開け放たれた大きな扉が出迎えた。
俺はその扉を通り抜け、この建物の屋上へと辿り着いた。
雨水による浸食のため、灰色のコンクリートの床は一部がでこぼこになっていた。
地面の縁に近い場所には、鳥によって残された灰白色のものがあり、周囲にはアニメでよくあるような柵が設けられていないため、自分の安全には注意する必要があった。
冬とはいえ、空気には涼しさが感じられたが、屋上で太陽に照らされている場所はまるでオーブンで焼かれているかのようで、汗が出るほど暑かった。
この屋上は大まかに二つの区域に分かれており、見渡すと、反対側に設置された白い筒状の給水タンクが太陽の光を反射し、眩しい白い光の点を作っていた。
俺がいる区域には、直方体のような構造物があり、その外側にはコンクリートが塗られていた。
俺はその直方体の構造物が作り出す太陽の影に寄りかかり、鞄から一枚のコピー用紙を取り出した。
今日は俺が授業で模擬授業を行う日だ。
この後十時の授業が始まると、すぐに俺が前に出て試験を受けることになる。
「皆さん、おはようございます! 今日の授業は──」
俺は喉をリラックスさせ、丹田の力を使うことを意識しながら、大きな声で朗読を始めた。
コピー用紙には、模擬授業の流れと、授業で生徒たちに伝える知識の要点が書かれている。
このような台本とメモに似たものは、実際の模擬授業では上に書かれた内容を一字一句そのまま話すのではなく、その場で最も適した言い方に変えて、そこから応用する必要がある。
このように大きな声で読み上げることは、声を出す準備になるだけでなく、ある程度自分の緊張を和らげることもできる。
実際、俺も歌い方を勉強しているが、今学期に履修している音楽の授業では、先生が授業時間を使って一人ひとりの生徒を個別に指導することは難しく、授業の中心も歌うことではないため、俺はせいぜい授業中の活動で積極的に取り組み、授業後に自分の問題について先生に尋ねていた。
先生に教えてもらった発声や声出しの方法を通して、俺は張り詰めていた筋肉をうまくリラックスさせ、力を入れなくても大きな声を出せるようになった。
最近、創作に使える時間が期末試験の準備によって大幅に減っていることは残念だが、こればかりは仕方のないことだ。
俺はコピー用紙に書かれた内容に向かって声を出しながら、頭の中で授業の状況をシミュレーションし、しばらくの間こうして練習した。
十時近くになってようやく、この秘密の特訓を終え、暑さで死にそうな屋上から降りて、校舎の内部へ戻った。
その過程で、俺はまるで異世界から元の世界へ帰還したような感覚を覚えた。
「よし……行くぞ!」
ただ自分を励ますために小さく呟くつもりだったが、声出しをしていたせいで、声はごく自然に出てしまい、普段自然に話しているときとほとんど変わらない音量になった。
今になって、俺はまた少し緊張してしまい、エレベーターを待って下へ降りるのも待ちきれず、そのまま階段へ向かい、一階ずつ下へ降りていった。
一階へ戻ると、俺は早足でこの建物の敷地を横切り、この後試験を行う遠くにある校舎へ向かった。
途中、ズボンのポケットに入れていたスマートフォンが振動した。
スマートフォンを取り出した後、画面の明るさを上げ、端月からのメッセージだと確認した。
ちょうど授業の休み時間だったため、学生たちがそれぞれの校舎から出てきて、周囲の音も騒がしくなっていた。
しかし、このときの俺は静けさを感じていた。
試験によって生じた緊張を意識する以外に、高鳴る心臓の鼓動の中には、このメッセージがもたらしてくれた温かさも混ざっていた。
『試験、頑張ってね。私の大切な恋人。』
この言葉に対して、俺はとても短い返事だけをして、スマートフォンをポケットに戻した。
『端月、愛してる。』
自分が送ったメッセージが頭に浮かび、俺は思わず歩く速度を上げた。
物語を書いているせいか、言葉の意味の正確さを追い求めるため、以前の俺はせいぜい「好きだよ」としか言わなかった。
しかし先週、端月の家へ行ってから、俺には新たな覚悟ができたように感じ、今日は「愛してる」と言えるようになった。
それが今の俺が抱いている本当の気持ちだったからだ。
メッセージを送った後、俺は少し恥ずかしくなり、試験が終わった後のその授業の休み時間までスマートフォンを開かないことにした。
同時に、俺はもっといい男になりたいと思った。
そして、まずやるべきことは、もちろん試験に無事合格すること──目標は高得点を取ることだ!
いつの間にか俺は走り出し、木陰のない場所をずっと走り抜けていた。
そして背中と頭のてっぺんには、太陽のもたらす灼熱が確かに感じられた。
試験が終わってから、さらに一コマの授業が過ぎた。
昼の時間を告げる鐘が鳴ると、先生は授業の終了を告げた。
俺はグループの仲間に別れを告げ、教室を出て、軽快な足取りでとある校舎へ急いだ。
俺は端月と会う約束をしていた。
お互いに今日の午後はそれぞれ別の授業で試験があるが、今日はどうしても彼女に一度会いたかった。
先ほどの試験については、途中で一つだけ、突然頭が反応しなくなった場面があった。
しかし、下にいるクラスメイトたちが少し気づいたとき、俺は機転を利かせ、あるユーモアのある方法で切り抜けた。
その後はすべて練習したときと同じように正常に進み、クラスメイトたちの全体的な反応もかなり好意的だった。
まあ、そこそこうまくいっただろうか?
特に先生が講評したときも、厳しい内容を特に指摘されなかったので……俺は成功して切り抜けたことにして、続いて端月と真剣に向き合い、それから午後の試験にも臨むことにした。
教育学部の校舎の共有スペースに到着すると、俺は息を切らしながら廊下で左右に首を動かし、端月の姿を探した。
しかし、彼女はまだ到着していないようだった。
今は昼食の時間なので、この時間帯はここを学生が通ることはあまりない。
実際、すぐそばの共有席にも一人もいなかったため、俺はとりあえずそこに自分の鞄と手に持っていた紙袋を置いた。
俺はスマートフォンのメッセージを確認した。
端月とのチャットでは、授業前に俺が送ったメッセージに既読がついていたが、その下には何の返事もなかった。
どういう状況なのかは分からない。
しかし、もし急に会いに来られなくなったのなら、またメッセージを送ってくるはずだ……。
「やあ──!」
そのいたずらっぽい声とともに、立っていた俺の後ろから突然、未知の物体がぶつかってきて、俺の重心が一瞬前へと傾いた。
幸いにも、それでバランスを失うことはなく、次の瞬間、俺は背中に触れた柔らかな感触と、相手の温かな体温を感じた。
俺はまずその人に後ろからぶつかられ、続いて彼女が伸ばした両腕に抱きしめられた。
こんなことをする人といえば、俺は一瞬、湖櫻先輩がついに自分に残されたわずかな慎みさえも捨てたのかと思った……。
しかし、その可愛らしい声と、俺を強く抱きしめている腕から受ける印象から、やって来たのが俺が心から待ち望んでいた恋人であることが分かった。
俺は少しだけ振り返り、自分の考えが間違っていないことを確認した。
そして、穏やかな声で尋ねた。
「どうしたの──? 試験はうまくいった?」
「うん。だって私は繋 端月だから」
端月は両腕にさらに力を込め、俺の体に強く密着し、なぜか体を小さく揺らし始めた。
「ずいぶん頼もしい答えだな。いつになったら、俺の名前もこんなふうに使えるんだろう」
そう聞くと、端月は微笑んだ。
しかし彼女はそれ以上答えず、頬を俺の背中に擦りつけ、続いてそっと俺の首元に寄せた。
「どうしたんだよ……? キスしたいのか?」
端月が真っ昼間の人前でキスするのをあまり好まないことは分かっていたが、それでも俺はわざとそう尋ねた。
ところが、彼女の答えに俺は少し驚いた──。
「あなたがキスしたいなら、してもいいよ……ただし、先に私の質問に正解してね」
たった一言で、俺の闘志に火がついた。
「どんな問題ですか? どうぞ出題してください」
俺がそう言うと、端月は俺の背中から体を離し、俺は振り返って彼女と向き合った。
端月は俺の目を見つめ、それから言った。
「さっき……たまたま忙しかったから、あなたのメッセージは見てないよ……?」
ん……?
俺の記憶によれば、チャットでは、俺が先ほど送ったメッセージに確かに既読の表示がついていた。
つまり、端月はわざとそう言っているのだ。
さまざまな恋愛喜劇を読み慣れている俺でも……いや、恋愛喜劇を読んでいても、こんなことを手取り足取り教えてくれるわけではない。
それでも、俺は彼女の言葉から、彼女が何を意味しているのかを推測することができた。
少しあれだが……俺は覚悟を決めて、突っ込んでみるしかないと決めた──




