第二章 金星(3)
彼女が俺にくれたアイスティーを一口飲み、その冷たさで喉を潤してから言った。
「俺、実は小説を書いているんだ。だから、小説の創作者なんだ。物語を書いているとき、俺はいつも自分の気持ちを物語の中に込めようと思っている。えっと……このキャラクターが大好きだという気持ち、この場面を書きたいという気持ち、それから、この場面をみんなに見てもらいたいという気持ちとか、俺はそういう感情を抱きながらキーボードを打っているんだ。
ただ、現実では、俺はあまり人付き合いが得意じゃないんだ。えっと、できないというより、できることはできるんだけど、どちらかというとスキルを使っているような感覚で、心の中ではまだ、自分は人と簡単に付き合えるんだと素直に思えるほどではないんだ。だから、どちらかというと人々から距離を置くほうなんだ。
でも、そんな俺でも、君は気づいてくれて、それに自分から俺と会話を築いてくれた。それは誰にでもできることじゃないと思うんだ。だから、君はきっと、これからたくさんの人を気遣える学科会長になれると思う。きっとそうだよ──」
俺は話しながら、心の中にも信じられるという確かな感覚が生まれ、思わず口元を緩めた。
ショートヘアの女子は思わず目を少し大きく見開き、俺は続けて言った。
「今回たくさん手伝ってくれたあのイベント総責任者は確かにすごく有能だし、彼女には彼女の得意なことがある。でも、君にも君に向いていて、それにできることがあるんじゃないかな? 君の話を聞いて、俺も思わず見てみたくなったんだ。君が創ろうとしている、あのアニメの魔法使いギルドのように、そこにいるとまるで自分の家に帰ってきたように感じられて、お互いに支え合える教育学科を」
俺が言い終えると、ショートヘアの女子は少しだけ俯いた。俺からは彼女の表情が見えなかった。
二人がしばらく沈黙していると、彼女はようやくゆっくりと口を開いた。
「ありがとう。あなたが初めて私にそんなことを言ってくれた人だよ。すごく励まされた」
それを聞いて、俺は微笑み、「どういたしまして」と言ってから、焼き網の上で焼き上がったしいたけの串を彼女に差し出した。
ショートヘアの女子は、先に皿に置かれていた団子の串に刺さった最後の一個を噛み取り、その後、さっぱりとした表情で熱々のしいたけの串を受け取った。
「ただいま。二人で何を話していたの?」
さらに少し経つと、端月はイベント総責任者との会話を終え、俺たちのところへ戻ってきた。
「この紅茶は君に。二人とも手伝ってくれてありがとう」
「あ、うん。わざわざ持ってきてくれてありがとう」
端月はショートヘアの女子に礼を言い、それから腰を下ろした──しかも、わざと俺とくっつく位置に座った。
焼き炉に近いため、俺たち二人とも一時的に制服の上着を脱いでいて、俺は彼女から伝わってくる温もりと、腕が触れ合うことで生まれる柔らかな感触を感じることができた。
俺たち三人はしばらくまた話をした。いつの間にか、もう夜八時半近くになり、人々が写真を撮る準備をするために集まり始めていた。
そのとき、ショートヘアの女子が立ち上がり、俺と端月に向かって言った。
「私も二人の写真を撮ってあげようか。そうすれば、思い出を残せるから」
「えっ? いいの?」
俺と端月が首を傾げて尋ねると、ショートヘアの女子は「二人とも一生懸命手伝ってくれたんだから、写真を撮るくらいどうってことないよ」と言った。彼女にそこまで言われては断れず、俺と端月も立ち上がり、二人で並んで立った。
ショートヘアの女子はすぐにスマートフォンを持ち上げ、集合写真を撮るのにちょうどいい距離まで後ろへ下がった。彼女はスマートフォンを目の前まで高く掲げ、俺と端月もそれぞれ写真を撮るためのポーズを取った。
「二人ともキスしないの?」
横向きにスマートフォンを構えたショートヘアの女子が、突然そんなことを言い、俺はその言葉にたちまち固まった。
「分かった。じゃあ、タイミングを見計らって撮ってね。いくよ」
俺がまだ反応できていないうちに、端月の軽やかな声が響いた。
次の瞬間、彼女は俺の肩を押さえ、それから、そっとつま先立ちになり……そして──
俺の左頬に、愛おしむようなキスを落とした。
そしてちょうどそのとき、シャッターの音がカシャッと響いた。
俺はこの音に驚いたのか、それとも恋人の突然の行動に衝撃を受けたのか、自分でも分からなかった。
とにかく、最後には俺の呆然とした表情が、その写真の中に永遠に残ることになった。
「今日は二人とも手伝ってくれてありがとう。帰り道、気をつけてね」
「うん、どういたしまして」「バイバイ、また明日ね」
俺たちは会場を元の状態に戻し、先ほどのスタッフたちが集めてくれたゴミを決められた場所へ捨て、機材を返却した後、駅でショートヘアの女子と別れた。
時刻は夜九時半になっていて、当然ながら空はすでに真っ黒になっていた。俺たちは地下鉄に乗り、見慣れた駅に到着すると降りた。
朝に歩いたのとは反対方向へ進んでいると、俺はずっと昔からここが自分の居場所だったような感覚を覚えた。
俺と端月はこのとき、最初に着ていた普通の上着を再び羽織っていて、高校の制服の上着ではなく、手を繋いで歩いていた。
俺たちが住宅街の公園を通りかかったとき、端月が軽やかな声で言った。
「夜もまた一緒に帰ってきたね。もう一回キスしたくないの?」
俺は彼女の手を揺らし、黄色い足元灯に照らされた公園の柵際の植物へ目を向けながら答えた。
「え、うん……さっきのがまだ印象に残っているから」
写真を撮っているとき、端月が人前で突然俺の頬にキスをしてきたせいで、俺は心臓が止まりそうになった。今でもまだ余韻が残っている。
「ただ頬にキスしただけじゃない──?」
端月はそう言いながら、軽く笑った。それから足を止め、手を繋いでいた俺も一緒に立ち止まった。
そして先ほどと同じように、彼女は俺の肩を押さえ、つま先立ちになった──
「ん……ちゅ──ふん、ん……ん────……ん……」
俺の唇に、ぴったりと重ねるようにキスをした。
「もう──君がキスしたくないなら、仕方ないから先にちょっとだけしておくね。だから、明日はもう『昨日の夜に帰ってきたときキスできなかったから、今日取り返そう』なんて言わないでよ?」
端月の頬はほのかに赤みを帯び、甘い蜂蜜を食べたかのように思わず笑みを浮かべ、俺がまだ少し酔いしれている間に離れていった。
彼女はいつもより少し早口で話していて、まだ頭が追いついていない俺は、ただ頷いて返事をした。
「行こう」
端月はもう一度俺の手を握り直し、二人で歩き続けた。俺が我に返ってから、途中では肩をぶつけ合う遊びまで始め、そのまま端月が住んでいる住宅街の入口まで戻ってきた。
ちょうどそのとき、少し離れた場所で一人の人が路肩の駐車スペースにバイクを停め、鍵をポケットにしまってからこちらへ歩いてきた。
端月はその人に気づくと、思わず足を止め、少し驚いた声で言った。
「お父さん……?」
その言葉を聞き、俺もその男性をまじまじと見た。
がっしりとした体格で、髪は黒く、革製のコートを身にまとい、下半身には丈夫そうなジーンズを履き、足元には灰色と白が混じったスニーカーを履いている。この人は髭を生やしていないのに、どこか厳かな雰囲気を感じさせた。
その瞳には落ち着いた光が宿っていて、まず声をかけた端月を見、それから彼女の隣にいる俺へ視線を移した。
俺たちの目の前まで歩いてくると、端月に向かって言った。
「おう、帰ってきたか」
声の調子は穏やかで、最後に少し下がるような話し方だったため、そこに少し威厳が加わっていた。
俺は全身に力が入り、端月は少し居心地悪そうに尋ねた。
「お父さん、今日は帰ってくるのが少し早いみたいだね」
「ああ、会社のほうが早く終わったからな。隣の彼は?」
端月の父親が俺へ話題を移したため、端月はおずおずと答えた。
「前に少し話したけど、私、彼氏ができたの。彼は高校の同級生で、今は大学も同じクラスなの」
端月は少し俺のほうへ身体を向け、手のひらを上にして父親を指し示すようにしながら、俺に言った。
「逐幸、この人が私のお父さんだよ」
父親に会ってからずっと彼女が少し緊張しているのを感じた。それで俺も少し勇気を出し、彼女の父親に向かって言った。
「初めまして。俺の名前は旭逐幸です。大学に進学してから、俺と端月は正式に付き合い始めました。こ、この前、俺と端月は一緒に演奏会を聴きに行って、そのときはチケットを用意していただいて、本当にありがとうございました。あの日は二人ともすごく楽しみました」
「……うん」
端月が小さく相槌を打ち、繋いでいる俺の手にも少し力が加わったようだった。俺も同じように少し強く握り返した。
端月の父親はまず俺の目を見つめ、それから俺を頭から足元まで一通り見て、最後に俺と端月が繋いでいる手に目を向けた。しばらくして、彼は口を開いた。
「俺は端月の父親だ。もう遅い時間ではあるが、少し中に入って座っていきなさい」
端月の父親はそう言い終えると管理人のおばさんを見た。管理人のおばさんは住民であることを確認すると、カチャッとボタンを押してそのまま住宅街の門の鍵を開けた。
端月の父親が先に門を押し開けて中へ入っていった。端月は少し迷い、再び俺と視線を合わせた。
俺も緊張していて、心臓がドクドクと激しく鳴っていたが、それでももう一度彼女の手を強く握り、少しだけ安心させてから、二人で一緒に住宅街へ入った。
端月の家は、住宅街の中庭にある池の右側に並んで建っている三棟の建物のうちの一棟だった。
三人は沈黙したままエレベーターに乗り、エレベーターが三階に到着すると、「チーン──」という音を響かせた。エレベーターを降りると、端月の父親は隣のマンションの扉を鍵で開けた。




