第二章 金星(2)
俺はこのことを端月に話すと、彼女は何気なく俺の手から焼肉用のトングを受け取り、発泡スチロールの皿に残っていた鶏もも肉を焼き網の上に載せた。
「うちの場合は、室内でコンセント式のホットプレートを使ってたよ。普段は特別な日しかそのホットプレートを使わないから、使うたびに新鮮な感じがしたんだ。でも、焼いたものは正直あまり美味しくなくて、小学生だった私には焼肉は少し噛みにくかったから、最後はむしろトーストを多く食べてたみたい。」
「じゃあ、今食べたいか?」
彼女がそう言ったのを聞き、俺は細長い保存袋に入っている食パンを一本取り出して尋ねた。
端月はわずかに唇を結び、左手で優しく俺の腕に絡みつきながら言った。
「残念だけど、私はもうお腹いっぱい。茶碗蒸し、美味しかった。どうしても食べるなら、これかな……いっそ逐幸を食べちゃえばいいんじゃない? どう思う?」
その言葉を聞いた俺は、まるで遠い昔のことを思い出したような気持ちになり、数秒間呆然とした。
「冗談だよ……あなた、こういうこと言うの得意じゃん? ほら、今そんなに驚いちゃって。」
端月は俺の表情を観察し、数秒後には、まるで波紋が広がるように笑顔を浮かべた。
自分がからかわれたと知った俺は、不満そうな様子を装って端月の手から焼肉用のトングを奪い、わざとため息をついて言った。
「俺はただ、今ならそのまま帰るか、どこかで休むこともできるなって考えてただけだ。何しろ、愛しい恋人から真剣に誘われたんだから、俺も全力で応えてあげようと思って。」
「はいはい──私はあなたを抱きしめさせてあげないからね。」
端月はそう突っ込んだが、正直なところ、彼女の口から「抱きしめる」という言葉を聞くと、やっぱりかなり色っぽく感じる。
そのとき、俺が新しい食材を焼き網の上に載せるのを見て、端月は思わず尋ねた。
「まだ食べられる? これ、ちょっと多くない?」
「ああ、これは人に焼いてあげる分だから。俺はもうだいたい食べたよ。」
俺の皿にはまだ鶏もも肉と豚肉のスライス、それにピーマンが数切れ残っていて、それを食べれば十分だと思っていた。
「誰に頼まれたの?」
「えっと、誰かに頼まれたわけじゃないよ。活動の総責任者があまり食べる時間がなさそうだったから、先に少し取っておこうと思っただけ。あとで持っていくつもり。」
それを聞くと、端月の瞳に柔らかな光が浮かんだ。
彼女はまず微笑みを浮かべたが、二秒ほどすると、表情を変えて言った。
「でも……相手は女の子だよ。」
端月は少し気乗りしない声で言った。
俺は少し考えて、ようやくその意味に気づいた。
「あ、あ──その……俺の美しくて、寛大で優しい恋人、端月。」
「……何?」
「あとでこれを、君の名義で活動の総責任者に持っていってもらってもいいか?」
俺は焼肉用のトングを置き、両手を合わせて、どうやらへそを曲げているらしい可愛い恋人にお願いした。
それを聞くと、端月はわざと考えるような声を出し、それから──箸で俺の皿にある鶏もも肉を一つ取って、自分の皿へ入れた。
「いいよ。じゃあ、お礼として、遠慮なくこれをもらうね。」
俺はその流れに乗って箸を取り、まずは自分の取られた鶏もも肉を奪い返そうとするふりをして、端月を警戒させた。
しかし実際には、焼き網から焼肉を一枚取り、肉を口元へ近づけて息を吹きかけて冷ましてから、恋人の口元へ伸ばした。
俺が食べ物を冷ましているときから意図に気づいていたらしく、端月は温かな手のひらで俺の箸を持つ手を包み、それから身体を前へ伸ばして、箸に挟まれた肉をそのまま口に咥えた。
小動物に餌を与えているような感覚は、やはり俺をむずむずさせる。
同時に、胸の中にも甘い熱の流れが生まれ、ゆっくりと広がっていった。
人に渡す食材が紙皿いっぱいになると、端月はその紙皿を両手でしっかりと持ち上げ、俺に「ごちそうさま、じゃあ、行ってくるね」と言って、俺の返事を待たずに走っていった。
それでも俺は、彼女の背中に向かって小さな声で「気をつけて」と言った。
「ここには君一人しか残ってないの?」
俺が小声でアニメの主題歌を鼻歌で歌っていると、一人の女子が俺のそばへやって来た。
相手は買い出しのときに俺たちと一緒だった活動幹部で、耳のあたりまで届くくらいのショートヘアに、知的な雰囲気の眼鏡をかけていた。
茶色の瞳は、親しみやすいものの少し遠慮がちな印象を与えていた。
彼女は白を基調として青を装飾に使った制服とスカートを身につけ、胸元には鳶沢高校の校章が刺繍されていた。
しかし、大学には異なる県や市から学生が集まってくるため、鳶沢高校がいったいどの県市にあるのかは、俺の物知らずゆえによく分からなかった。
「うん、そうだよ。他のみんなは別のグループへ雑談しに行ったから、誰か一人はここに残って火の番をしないとね。」
「端月は?」
その疑問を聞き、俺は少し離れた場所にある別のグループの周辺へ視線を向けた。
ショートヘアの女子も俺の視線に沿って、そちらへ目を向けた。
端月は活動の総責任者の女子と立ったまま雑談しており、後者は俺たちが渡した紙皿と食べ物を持っていた。
二人の顔には笑顔が浮かび、話も盛り上がっているようなので、しばらくは戻ってこないだろう。
「見ての通り、彼女は人と話すのに忙しいみたい。君はまだお腹空いてる? 何か食べる?」
「あ、私はさっきもう食べたよ。ありがとう。これを二人に渡して、手伝ってくれたお礼をしたかったの。」
ショートヘアの女子はペットボトル入りの紅茶を二本俺に渡した。
どうやら買い出しや会場設営を手伝ったことへの慰労品らしい。
「そんなにいいのか。じゃあ、遠慮なくもらうよ。」
「うん、気にしないで。ここに少しいてもいい? あっちへ戻る前に少し休みたいんだ。」
「もちろん。座っていいよ。まだお腹が空いてるなら、追加で注文してもいいから。」
礼を言って慰労品を受け取った後、俺は箸を取り、自分の皿に残っていた食べ物を食べ終えた。
ショートヘアの女子も腰を下ろし、それから尋ねた。
「君と端月は仲が良さそうだね。クリスマスも近いけど、何か予定はあるの?」
「ああ、うん。期末試験も近いから、何日か遊びに出かけるのはちょっと難しそうなんだ。俺はプレゼントを贈るつもりだけど、何を贈るかはまだ考えているところ。ついでに、君の意見を聞いてもいいかな?」
「お、いいよ。話してみて。」
どうやら相談に乗ることに興味を持ったらしく、ショートヘアの女子の目は、可愛いマスコットのグッズを見つけたときのように輝いた。
そこで俺は、自分が考えている案とプレゼントの候補を話した。
彼女も少し考えや方向性を出してくれて、俺は本当に助かったと思った。
ただ、最終的にどれを採用するかについては、もう少し考える必要がある。
この話題が終わると、ショートヘアの女子は焼いた料理の皿から冷めたピーマンの串を一つ手で取り、ゆっくりと食べ始めた。
それを食べ終えると、彼女は続けて言った。
「二人とも普段は静かな印象があるし、テストの成績もけっこういいよね。でも、君がこんなに一生懸命、彼女へのプレゼントを考えてるとは思わなかった。」
「ああ──俺の成績は普通かな。それにしても、どうしてそう思ったの?」
俺が尋ねると、ショートヘアの女子は少し考えてから言った。
「こういうことを言うのは、あなたに対して少し失礼かもしれないけど、以前、学科の学生たちの間で、君は二年生の奏 湖櫻先輩とも付き合っているっていう噂が流れてたんだ。本当なの?」
え? どうしてそんな妙な噂が……?
確かに先輩は俺や端月と一緒に食事をすることが多いし、俺と先輩は一緒に受ける授業もある。
でも、まさかみんなが俺たちをそんなふうに見ていたとは思わなかった。
噂というものは、本当に自分が気づかないうちにひっそりと広がっていくものなんだな。
「違うよ。端月だけが俺の彼女だ。先輩は大切な友達だよ。」
ショートヘアの女子はそれを聞くと、雨上がりのように穏やかな笑みを浮かべた。
「そうだったんだ……確か、君と端月は合宿の日に、みんなに付き合っているって話してたよね。男子たちが雑談しているとき、端月のことが気になってる人がたくさんいるって聞いたことがあるよ。あのとき、彼らもかなりショックを受けたみたい。でも……君が彼女を大切にしてるなら、彼女はきっと幸せだと思う。」
「えっと……彼女が実際どう思っているのかは分からないけど……俺は、彼女が幸せだと思えるように頑張りたい。」
俺は少し緊張しながら、この本心を口にした。
ショートヘアの女子は笑うこともなく、団子を一本手に取ってから言った。
「じゃあ、これからもちゃんと彼女を大切にしてね。必要なら、学科の同級生にも頼っていいよ。全員がちょうど暇だとは限らないけど、きっと一緒に方法を考えてくれる人はいるから。」
その言葉を聞いて、俺は少し温かな気持ちになった。
高校時代、クラスメイトはだいたい冷たいほうだったが、今大学へ進学して、俺は確かに新しい同級生たちの中に、助けを差し伸べようとしてくれる人がたくさんいることを感じていた。
俺は控えめに「うん」と答えた。
ショートヘアの女子は団子を少しずつかじり始め、それから言った。
「私、高校の頃はほとんど勉強ばかりしてたんだけど、大学に入ったら自分を変えたくて、今までやったことのないことを少しやってみようと思ったの。それで先輩に誘われて学科自治会に入ったんだ。あ、君に話しておくね。私、あの魔法使いギルドを題材にした少年漫画がすごく好きなんだ。学科自治会を通して、私たちの代の教育学科をあんなふうに、家みたいな温かさに満ちた場所にしたいと思ってる。」
俺は頭を彼女のほうへ向けて見た。
彼女の視線は俺と接していなかったが、この動きに気づいて、視線を動かして俺を見た。
俺は、これは彼女にとって大切なことなのだと感じた。
そこで続けて言った。
「なるほどね。俺もあのアニメが好きだよ。あのテーマ曲やBGMを聞くと、思わず泣いてしまうくらいだ。俺もまだ少し見終わってなくて、本編の最後のシーズンと外伝シリーズが残ってるんだ。それを全部見れば、完走できる。だから、君の言っているような感覚は分かるよ。あ、ただ、この話の中に一つ問題があるような気がするんだけど?」
「え、どんな問題?」ショートヘアの女子は団子を一つ噛み終えてから尋ねた。
「それって、学科自治会長の仕事に近いんじゃないか? あ、いや、もしかして君たちは、みんなで話し合いながら、この代がどんな方向を目指して頑張るのかを決めているのか?」
学科自治会内部のメンバーや理念についてあまり詳しくないため、俺は疑問に感じた。
すると、ショートヘアの女子はくすくすと笑った。
彼女は残った団子一個の串を置き、少し胸を張って言った。
「うん、そうだよ。それは学科自治会長の仕事だけど、私は今、副会長……つまり、次の代の会長なんだ。確かにこれはみんなと話し合って決めることだけど、前に他のみんなに聞いたら、特に意見はないから、私にやってみてもいいって言ってくれたの。」
え? 副会長……会長?
確かに俺たちの学科の一部の部活動では、次のキャプテンを先に副キャプテンに推薦することがあるので、制度そのものには疑問を感じなかった。
しかし、俺は別のことに驚いていた。
「えっと、俺はてっきり君は普通の幹部だと思ってた。まさか次の会長だったなんて……」
そして、そんな人が俺と話をしている。
俺の胸には、突然、少し慌てたような気持ちが生まれた。
「ははは、知らなかったんだね。みんな知ってると思ってたよ。」
ショートヘアの女子は穏やかな笑い声を漏らし、本当に俺がこのことを知らなかったのが意外だったようだ。
しかし──彼女は続けて言った。
「今回の学科のバーベキューでは、確かに私はいろんなことを活動の総責任者に任せるほうだったんだ。私はまだ、みんなの前に立って事務を取り仕切るのが得意じゃないから、ああいう人が羨ましいなって思ってる。」
彼女は上を見上げた。
その目の焦点は、橋の底に設置された照明の間にある、比較的暗い部分へ向けられているようだった。
俺は少し考え、それから彼女に答えた。
「君なら大丈夫だと思うよ。いくつかの挑戦に直面することはあるかもしれないけど、俺は君ならできるって信じてる。」
「え? どうしてそう思うの?」
彼女はその答えをとても知りたそうに、先ほどまで見ていた場所から視線を離し、俺のほうを見ながら言った。




