第一章 恋人(5)
「端月、おはよう。」
隔週の水曜日の早朝、俺はマンションの敷地の出入口から出てきた端月に声をかけた。彼女は今日は白いニットの服を身につけ、その上からロング丈のピンク色のコートを羽織り、下半身は濃い色のスカートに黒いタイツを合わせており、小柄で可愛らしく、とても温かそうな印象を与えていた。
黒いセミロングの髪は滑らかに背中へと垂れており、入学した頃よりもずっと長くなっていて、もうしばらく伸ばせば腰まで届く長い髪になるのかもしれない。
「おはよう、逐幸。今日も早いね。」
俺を見つけると、端月は花が咲くように笑顔を浮かべ、その瞬間、俺の心は強く揺さぶられた。彼女が俺のほうへ駆け寄ってきたので、俺も迎えに行き、二人は自然と手を繋いで学校の方向へ歩き出した。
端月の家があるマンションから駅まで歩く道は二つあり、一つは比較的幅の広い大通りに沿って歩く道で、もう一つはマンションの公園を通り、脇道も多い道だった。
普段、比較的遅い時間に帰宅する場合、端月は大通りのほうを選ぶことが多いが、俺と一緒なら、マンションの公園を通るこの道も比較的安心して歩けるようだった。
普通の時間帯ならそれほど違いはないかもしれないが、早朝や夜のように人が少ない時間帯に、女の子が一人でこのような道を歩くのは、やはり少し心配になる。
俺たちは手を繋いで五、六分ほど歩くと、マンションの公園が目に入ってきた。赤、黄色、青など、鮮やかな色の子供向け遊具が公園の敷地に並んでいる。この辺りの年配者は、もう少し遅い時間になってから活動しに出てくることが多いらしく、今は静かな雰囲気だった。
並木道の木々では、鳥が時折一声鳴く程度で、少し冷たい空気に、俺たちは思わず繋いだ手に力を込め、時々身体の側面が触れ合った。それはまるで、相手が自分のすぐ隣にいることを確かめるようだった。
俺たちは公園の入口まで歩き、外周の歩道に沿って進み、ある路地の入口まで来たところで、端月が少し身体を揺らし、小さな声で言った。
「今日はダメだから……」
この言葉は表面上は断るという意味だったが、彼女は俺のほうへ身体を縮めるように寄せ、わざと歩く速度を落としていた。俺がどれだけ鈍感でも、彼女が何を伝えようとしているのかは分かった……
俺は半歩ほど歩みを速め、端月の手を軽く引きながら、路地のほうへと曲がった。
ここは家主が道路を塀で囲って、その奥を私有空間としているため、奥へ進むことができない。つまり、この路地の中では、反対側から歩行者が突然現れる心配はなかった。
俺は端月を路地の中央付近にある壁際まで連れていき、それから彼女の美しい顔を見つめた。
青みがかった瞳には柔らかな光が宿り、長いまつ毛はまるで芸術品のようだった。彼女は桜色の唇をわずかに結び、頬の肌には目立たないほどの赤みが浮かんでいた。
「……」
俺たちは互いを見つめ合い、数秒が経つと、端月は俺が彼女の顔へ近づいていくのに合わせるように、ゆっくりと目を閉じた──
……ちゅ、ちゅ、ん────……ちゅ──ん、ん……ちゅ──ん!─────……ちゅ──……はぁん……!ん────……
一度キスをすると……俺たちはゆっくりと離れた。
「……これじゃ、癖に……なっちゃうから……私、今日はダメって、言ったのに……?」
端月は甘えるように拗ねながら、息を切らしていた。その姿は、言葉では言い表せないほど可愛らしかった。
「俺が覚えている限り、前に話したのは三回、三十秒……だったよな? 忘れたのか──?」
「でも、月曜日のとき、五回もキスしたじゃん……」
端月は怒ったような表情を作ろうとしているようだったが、俺はまた我慢できずに近づき、彼女の唇にぴったりと重ねた。
ん、ん──! んぁ…………ん……────ん!…………──ん──!────……ちゅ──ん────…………ん……!──ん、ん─────………──ん────ん──………
二人が再び離れたとき、端月の耳はすでに艶めいた緋色に染まっていた。
「……だから、昨日はちゃんと、少し我慢して……回数を減らしたじゃん……?」
俺は恋人に自分の主張を伝えたが、彼女はまだ不満そうで、続けて突っ込んできた。
「減らしたって……それって、最初に言ってた、三回だけキスするっていう回数に戻っただけじゃん?」
俺はすぐには答えず、もともと彼女の身体を抱いていた腕を下へと移動させ、十本の指を絡めるように彼女の手を握った。二人の掌の温もりを感じながら、そして──再び彼女へと近づいた。
もし端月が抵抗する素振りを見せたなら、俺はすぐにやめるつもりだったが、今のところそのような合図はなかった。
それどころか、彼女は指をわずかに動かして、二人の指の絡みをさらに強くし、そして自ら首を伸ばして俺へ近づいてきた。
──……ん、ん──…………! ん………………ん──……──────…………
─────────────────────…………
───────────────────────────────────……
──────────────────────────────────………………
俺たちは互いを求め合い、最終的に六回キスをして、月曜日の記録を無事に破った。
「もういいよ、これ以上キスしちゃダメ……!……私、もうダメ……逐幸、これ以上キスしちゃダメだからね? 唇が腫れちゃって、それで、クラスのみんなに気づかれちゃう……」
端月はキスで心を乱されてしまったようで、俺と自分がこの雰囲気に流されて続けてしまうのを止めるかのように、距離を取った。
彼女はわざと顔をそむけ、斜め四十五度の方向へ視線を向け、恥ずかしそうな様子を見せた。
朝の風が俺たちの間を吹き抜け、俺はそのとき、唇と頬に冷たさが走るのを感じた。
ついさっきまで、これらの場所は愛する恋人の温かな息遣いを間近に感じ、きめ細かな顔に触れ、柔らかな唇を擦り合わせていたというのに、俺は急に少し寂しく感じた。
そして端月の唇の周りにも、俺と同じように湿り気が残っていた。
二人の間では、たとえ頬を互いに向けていなくても、下唇から垂れた細い糸を通して繋がり合い、半透明の弧を描いていた。そして冷たい空気に揺さぶられるたびに、時折揺れ動いていた。
俺は呆然と端月を見つめ、恥ずかしさと戸惑いが入り混じった彼女の姿を眺めていた。しばらくしてから、俺はようやく手をポケットへ入れ、一袋のティッシュを取り出すと、彼女へ一歩近づいた。俺はビニール包装の口を開き、ティッシュを一枚取り出して、彼女の頬をそっと拭いた。
端月はそのまま腕を下へ垂らし、少しぼんやりとした眼差しで、わずかに上目遣いで俺を見つめていた。
俺は彼女と一度目を合わせ、それから彼女の唇の周辺へと意識を集中させ、顔に残った湿り気を拭き取った。
ティッシュはすぐに一枚丸ごと濡れてしまったため、さらに二枚取り出し、彼女の美しい頬が乾いたことを確認して、ようやく肩の力を抜いた。
俺が自分の顔を拭くために新しい一枚を取り出そうとしたところ、端月が突然俺の手を掴み、そのティッシュを奪った。そして新しい一枚を取り出し、腕を前へ伸ばして俺の頬に触れた。
「ほら、今度は私が拭いてあげる。大人しくして、動かないでね。」
彼女は俺が自分の顔を拭いてあげている間に、少しだけ本来のペースを取り戻したようで、表情もかなり落ち着いていた。慈愛に満ちた真剣な眼差しで俺の顔を見つめ、丁寧に拭いてくれた。
彼女も同じように二、三枚のティッシュを使って俺の顔を拭き終えると、袋に残っていたティッシュで俺たち二人の手を拭き、一袋のティッシュを二人でちょうど使い切った。
「じゃあ、学校に行こうか?」
「うん、行こう。」
身体は依然としてかなり熱く、冷たい風にさらされて触れた部分のほうが、むしろ心地よく感じられた。
俺たちは再び手を繋ぎ、駅の方向へ歩いていった。
駅に着くと、駅構内の電子時計に現在時刻が七時五十分と表示されているのが見え、端月は思わず少し慌てた表情を浮かべた。
「全部、ある人のせいで、自習の時間がなくなっちゃった。どうやって弁償してくれるの?」
彼女はわざと不満そうな顔をして抗議した。
確かに、彼女の今日の授業は九時頃から始まるため、今から電車に乗って日和へ行っても遅刻はしないが、余裕があるとも言えず、端月にとっては少し警戒しておくべき状況なのだろう。
俺の場合は授業が十時から始まるため、今日の予定では、まず端月に会って一緒に学校へ向かい、それから一人で図書館へ行って小テストの範囲を復習し、授業の時間になったら教室へ向かうつもりだった。
俺たちは素早く駅の改札を通り、ドアが閉まる前に早足で列車へ乗り込んだ。
無事に乗車すると、俺は隣にいる端月へ言った。
「じゃあ、お詫びとして、夜は一緒に帰ろうか?」
「ダメ。何を考えてるか、丸分かりだよ。」
列車が前へ走り始め、わずかな揺れが生じた。窓の外の景色も、それに合わせるように素早く後方へ流れていく。
列車がビルとビルの間の隙間を走ると、陽光が車内へ差し込み、反対に列車がビルの影に入ると、一気に暗くなり、明るくなったり暗くなったりする変化が連続して交錯していた。
「え──? そうなのか?」
俺はわざととぼけてみせた。それに対して、端月は小さくため息をつき、それから声と表情を柔らかくして言った。
「それに、忘れたの? 今日はクラスの活動があるんだよ。もう手伝いに行くって約束しちゃったじゃん。」
ああ、そういえば、確かにそうだった。
体育祭が終わったその日、クラスのグループでは今日行われる活動のスタッフを募集していて、端月はクラスメイトから個人的に頼まれたから手伝いに行くと言っていた。そして彼女からその話を聞いたとき、俺も一緒に行くことに決めた。
そのとき、端月はさらに続けた。
「だから──私はダメだと思うけど、どうやらやらないわけにもいかないみたい。これについて、逐幸はどう思う?」
端月は表面上は淡々とした表情を保っていたが、その瞳には少しだけ期待が滲んでいた。
そこで俺も真剣な表情を作り、同意するように言った。
「やっぱりクラスの活動が一番だよな……」
その言葉を聞いた端月は、肩で俺を軽く小突き、軽やかな声で突っ込んだ。
「何言ってるの? 私たち、まだ参加したことないじゃん。もう。」
そう言いながら、彼女は微笑みを浮かべた。ちょうどそのとき、朝の光が車窓のガラスの外から優しく差し込み、彼女の可愛らしく整った顔を照らした。




