第一章 恋人(4)
『ほら、もうあなたの隣で寝てるよ、言いたいことがあるんじゃないの?』
端月は軽く催促するような、それでいて甘えるような声を出した。
俺は再び身体をスマートフォンのある側へと向け直し、端月に言う決心をした。
「うん。えっと、話というのはこういうことで──」
俺は自分が考えてきたすべてのこと、自分が抱いている姿勢や、さまざまな心配事を、一つ一つ端月に打ち明けた。
この話を聞き終えた彼女は、いったいどんな反応をするのだろう……?
俺は少しばかりの不安を抱えながら、自分の話をひとまず終えた。
そして俺の話を聞き終えた端月は、すぐには返事をしなかった。その沈黙が、俺の恐怖をさらに大きくした。
俺が次に何かを言おうかと考えていたところ、端月の声が聞こえてきた──
『逐幸、私はあなたが好き。』
その一言を聞いた瞬間、俺は困惑した。
次の言葉は、さらに俺を不意打ちした……
『あなたのことが大好き……一番大好き──どうして今、私の目の前にいないの? あなたを抱きしめたいし、もっと近くにいたい……キスしたい……本当にずるいよね、わざと面と向かって直接言わなかったの?』
──その反応に、俺は完全に呆然としてしまった。
俺の記憶が間違っていなければ、これは端月が、俺と親密になりたい、俺に近づきたいと、ここまで明確に示したのは初めてのはずだ。
しかし、俺には彼女が突然こんなことを言い出した理由が、まったく分からなかった。
「どうして……そんなことを言うの?」
俺の身体は震えているようで、喉まで震えているように感じた。
それでも、俺はなんとかその言葉を口にした。
『うん──? まさか、分からないの? 馬鹿な逐幸、嫌い、世界一のクリエイターを目指して頑張るって言ってるくせに、こんなことも分からないの?』
端月の話し方は普段よりも急になり、しかも珍しく、恥じらいと心からの不満を帯びた声になっていた。
そんな彼女の姿さえ、俺にはとても愛おしく感じられた。
「ごめん……その目標については、まだ頑張っている途中なんだ。俺に説明してくれる?」
『人に説明してもらうなら、自分から少しくらい誠意を見せるべきじゃない?』
恋人の言葉に煽られ、俺はとても耐えられなくなり、胸の中から湧き上がる大きな感情に従って言った。
「俺は端月が好きだ。お願いだから教えてくれよ……? 俺は端月が一番好きだ。端月はすごく綺麗だ……今だって端月を強く抱きしめたいし、キスしたい、触れたい。端月は可愛すぎる、可愛すぎて俺には耐えられない……ほら──もう怒らないでくれよ、端月がどう思ってるのか、教えてくれる……?」
いつの間にか、この一言を言い終えた俺は、肺の中の空気まで全部抜き取られたように感じた。
呼吸は荒くなり、頭もさらに熱くなったように感じる。
俺、もしかして壊れかけてるんじゃないか?
けれど……さっきの言葉はどうやら恋人の心に届いたようで、端月は深く息を吸い込み、それから自分の感情を意図的に抑えながら言った。
『さっきの私の言い方、ちょっと酷かったみたい。だけど……すごく温かい気持ちになった、ありがとう、逐幸。私のために、私たちのことのために、こんなにも真剣に考えてくれてありがとう。すごく嬉しい、こんな嬉しさをどう表現したらいいのか分からない……今の私は本当に嬉しくて、幸せなんだってことを、あなたに分かってほしい。』
俺がさっきしたことは、ただ自分の悩みを恋人に打ち明けただけなのに、どうして……どうして彼女はそれを嬉しいと感じるのだろう?
端月は、俺が二人のことを考えてくれたことに感謝していると言った……でも──それは当然のことじゃないのか……?
好きだからこそ──相手のことを何よりも大切だと思うからこそ、真剣に向き合って、一生懸命考えるものじゃないのか?
俺が自分の困惑を端月に伝えると、向こうから枕が揺れる音が聞こえ、それから彼女が言った。
『こういうことは人それぞれだと思うけど、私たちは二人とも今は大学一年生だし、大学全体を見ても、三年生や四年生になってから考えようと思っている人はきっと少なくないと思う……でも、逐幸は自分の将来の計画についてこんなにも真剣に考えていて、それに……それに私のことまでちゃんと考慮に入れて、しかもそのことを私に話してくれた……それがすごく嬉しい……自分が好きな男の子にこんなにも真剣に向き合ってもらえたら、きっとほとんどの女の子は嬉しいと思うよ……? あなたはどう思うの、逐幸?』
この言葉に対して、俺は彼女の考えを少し理解できたものの、頭の中には多少の疑問が残っていた。
というより、まだどこか落ち着かないような感覚があった。
それでも、俺は自分の恋人が幸せを感じ、心から喜んでいる気持ちを感じ取ることができた。
それが俺にとっても嬉しく、誰か大切な人に必要とされているように感じ、胸の中が温かくなり、そして少し恥ずかしくなった。
「俺はただ……端月を大切にしたいだけだ。」
俺には、それが今の自分にできる唯一の答えのように思えた。
それに対して、端月はこれまで俺が聞いたことのないような、恥ずかしそうな笑い声を漏らした……しかも、それはしばらくの間続いた──このとき、俺は今の彼女の表情が見たくてたまらなかった。
本当に可愛い……どうして、どうしてこの人はこんなにも可愛いんだろう?
『分かった、私が一番愛している逐幸がこんなに真剣なんだから、私も真剣に答えるね。話している途中で、何か言いたいことがあったら、遠慮なく言って話し合っていいからね。』
「うん、分かった。ありがとう……俺が一番愛している恋人、端月。」
それを聞いた端月は、また耐えられなくなったように動揺した甘い声を漏らし、それから答えた。
『逐幸が言ったように、二人で一緒に暮らすなら、当然たくさんのお金がかかるよね。そして私たちは今、理論上は小学校の先生になる方向に進んでいるけど、以前の授業で、学科の先生が紹介してくれたこともあったよね。先生という仕事は確かに平均より給料が高い職業だけど、給料の上がり幅は一般企業ほど大きくない。企業や産業の種類によっても変わってくるけど、先生になった場合、基本的に給料の上がり幅はそれほど大きく変動しないと考えていいと思う。』
端月は二秒ほど間を置いて、それから言った。
『だから、給料という観点から見るなら、二つの違いは実はそれほど大きくないと思う。今のところ先生になるメリットは、仕事に就くことができれば、一般企業より安定性が高いこと……でもね、この仕事に向いていなかったら、その安定性も必ずしもメリットとは限らないよね。逆に一般企業なら、最初の給料はあまり良くないかもしれないけど、昇給する余地はあるし、注意しなければならないのは、自分が続けられる仕事を選ぶこと。それが一番大切なことだと思う。
もし逐幸が働きながら創作したいなら、さっきあなたが言っていたように、先生になると放課後の時間を取られる可能性があるというのは、今の子どもの保護者たちの一般的な状況を考えると、実際かなり根拠のある話だと思う。もし一般企業なら、それをどう避けるかは、さっきあなたが言ったように、両立できる可能性のある仕事を探す必要がある。
そして今の私が思うに、今重点を置くべきなのは、逐幸が創作以外に、ほかにやりたいことがあるかどうか──子どもを教えることでもいいし、あるいは違う職業に触れてみて、その経験を創作の素材にすることでもいい。自分の興味や、本当に試してみたいと思うかどうかに従って、最後の選択をすればいいと思う。幸い、私たちは今、卒業までまだ長い時間がある。何をしたいと思っても、何を試してみたいと思っても、自分自身を探ってみたいと思っても、まだ時間はあるから……私たち、ゆっくりやっていこう。』
端月の言葉を聞いて、俺はとても感動した。
いや、彼女が話している間にも、この気持ちはどんどん強くなっていたと言うべきだろう。
どう言えばいいのだろう……自分がすでに考えていた可能性であっても、端月の口から語られると、俺は安心する。
そして、自分ではまだ把握できていなかった情報については、彼女が口にすると、とても尊敬するし、自分の恋人を誇りに思う。
おそらく俺はこうしたことを考えていたせいで、しばらく呆けてしまったのだろう。
我に返ったとき、端月が俺に呼びかけていることに気づいた。
『逐幸……まだいる? もしかして寝ちゃった──?』
俺は手の甲で鼻を少し擦り、それから彼女に答えた。
「寝てないよ……まだ起きてる。俺はただ……端月がこんなに一生懸命説明してくれて、すごく感動したし、それに、すごく安心した……端月がいてくれてよかった。」
俺は思わずスマートフォンを手に取り、自分の耳と頬に当てて、今この瞬間の自分の気持ちをできる限り伝えようとした。
『じゃあ、もう一度「好き」って言ってくれる?』
その甘えるような言葉を聞いて、俺は思わず笑みを浮かべた。
「端月、俺は端月が好きだ。大好きだ──それから、次に会ったときは、覚悟しておいたほうがいいよ。」
『うん──? どうして?』
端月は合わせるように疑問の声を出したので、俺は答えた。
「俺、我慢できなくなって、先に端月に三回くらいキスしちゃうと思う。一回につき少なくとも三十秒は超えるから……だから、気をつけて。夢中になりすぎて呼吸するのを忘れないようにね。」
『え? でも、次に会うのって月曜日の授業だよね。』
「じゃあ俺が早めに端月の家まで迎えに行って、どこかでキスしてから日和に行こう。そうじゃなかったら、学校のどこかで済ませることになるけど、どっちの場所がいいと思う?」
『じゃあ──そのときは先に私の家まで迎えに来て。あとは、またゆっくり相談しよう。』
俺が同意を示したあと、話題を元に戻した。
「──分かった……また時間を使って、自分でも調べて考えてみるよ。そのとき、また端月に相談してもいい?」
『うん。あなたが私を頼ってくれるの、すごく嬉しいよ。それに……あなたのことを全部知りたい。』
その言葉を聞いて、俺は心から嬉しくなった。
「俺も、端月の全部を知りたい。まだ……俺たちにはお互いに知らない部分もあるけど、時が来たら、端月自身のことも俺に話してほしい。」
『うん、そうする……ありがとう、逐幸。』
その言葉の後半で、端月はわざとスマートフォンに近づき、俺にそっと言ったようだった。
彼女の影響を受けて、俺も同じように彼女へ感謝を伝えずにはいられなかった。
俺の話を聞いてくれたこと、俺の悩みを一緒に背負ってくれたこと、そして俺を理解しようとしてくれたことに、ありがとうと伝えた。
『今、何時なんだろう……うん、もうすぐ十一時半だ。不知不覺にこんなに長く話してたんだね。』
端月はスマートフォンで時間を確認したのだろう。
そして最後の言葉を聞いた俺は、その後半が「じゃあ、そろそろ終わりにしよう」という意味ではないように感じたので、彼女に言った。
「俺、もう少し……端月と話していたい……一緒にいてくれる……?」
この一、二分のうちに、この色っぽくて、それでいて安心させてくれる声を聞けなくなるかもしれないと思うと、とても寂しく感じた。
俺の誘いに対して、端月はまた笑みを含んだ吐息を漏らし、それから言った。
『じゃあ、もう一時間延長してもいいよ。明日もバイトがあるんでしょう、時間を超えちゃ駄目だよ?』
「うん、分かった。ありがとう。」
『じゃあ、何の話を続けようか?』
「端月……端月と話していると、ちょっと自分の身体を触りたくなるんだ……端月も、そういう感覚になることってある?」
『ちょっと待って、話しながら変なことしちゃ駄目だよ──? そうしたら、私も一緒に我慢できなくなっちゃうかも──』
しかも、えっちな話をするのは駄目って言ってなかったっけ──端月は少し慌てたように付け加えた。
彼女の反応を見て、俺は安心したように笑った。
「──端月、俺は端月が好きだ。端月がいてくれて本当によかった。端月の声が大好きだし、端月が俺に言ってくれる言葉も大好きだ。俺は端月が大好きだ。」
それに対して、端月は小さく息を吐き、すぐ近くにいるような距離で、ゆっくりとはっきりと次の言葉を口にした。
『逐幸……私もあなたが好き。でも、これ以上言い続けたら……私、あなたを寝かせないからね──?』
その後、俺たちは午前二時までずっと話し続けた。
もちろん大幅に時間を超えてしまい、翌日、俺は仕事でさえ調子を崩してしまい、かつ姉に何度も小言を言われることになった。




