第六章 旭日(4)
今日は土曜日だ。
先週、店内休業でSUNRICEに行かなくてもよかったのとは違い、今日は大切な日なので、俺はあらかじめかつ姉に休みをもらっていた。
つまり、俺が端月と会う約束をした日だ。
前日はかなり早くベッドに入って眠り、最初は少し眠れないのではないかと心配していたものの、普段から積み重なっていた疲労は俺を裏切らず、十分な睡眠を取ることができた。
きっと大丈夫だ……!俺は自分の頬を軽く叩き、心の中で自分を励ました。
俺は端月の家から最も近い駅へ向かい、電車に乗っている間に、会話のきっかけを作ることができればいいと思っていた。
俺は駅の改札口付近で待っていると、しばらくして、ついに端月が姿を現した。
彼女は藍色のカーディガンを着ていて、下半身には足首まで届く黒いプリーツスカートを穿いており、裾にはさらに立体感を加えるためのチュールまであしらわれていた。
美しい黒髪は生命力を感じさせる緑色のヘアリボンで結ばれていて、以前、彼女が好きな色の中には緑色も含まれていると言っていたのを覚えている。
端月は俺を見ると、少し視線を落とし、それから視線を上げて、俺のほうへ歩いてきた。
彼女の顔には淡く上品な化粧が施されていたが、目の下だけには少し憂鬱そうな雰囲気があり、俺は途端にとても心が痛んだ。
俺たち二人は無事に顔を合わせたものの、しばらくの間、お互いに何も言うことができなかった。
電車に乗る乗客の人波が次々と俺たちの傍らを通り過ぎ、耳元には到着した列車から発せられる乗車案内の音が聞こえていた。
「ごめん、待たせちゃって……」
ようやく、俺は口から一言を絞り出した。そして、この言葉を口にした後、続く言葉はまるで止められない潮のように、一気に溢れ出してきた。
「その服、すごく似合ってる。綺麗だと思うし、俺はすごく嬉しい。ありがとう」
彼女が少しやつれていることに、俺は自責の念を抱いた。それでも、彼女が頑張っている姿を見られたことが嬉しく、そしてとても愛おしく感じた。
「もしかしたら、俺は先に謝ったほうがいいって思うかもしれない……えっと、でも、もう少しだけ待ってもらえないかな……デートの時に、ゆっくり話すから。お願いだから……いい?」
その時、俺の頭の中に庭雪先生の言葉が浮かんだ――
『今のお前が一番練習すべきなのは、人に甘える方法を覚えることだ! あの子みたいな女の子は、普通、甘えられるのに一番弱いんだ。よっぽど無茶なことじゃない限り、甘えれば解決できないことなんてない』
それによって、俺は思わず少しだけ勇気を出し、心の底から言った。
「俺、本当に会いたかったんだ。来てくれてすごく嬉しいから、少しだけ笑ってくれないかな。俺、端月の笑顔が見たいんだ。笑うと本当に可愛いし、綺麗だよ……俺、悪いことをしたんだよね……でも、自分が悪かったことも分かってるから、こんなに厳しく罰するのはやめてくれないかな……分かったから――先にそんなに怒らないでよ……俺たち、会ったばかりなのにそんなに怒ってて、あとでうっかりもっと怒ったらどうすればいいんだ? これじゃ俺、耐えられないよ……こんなに可愛いんだから、そんなに怒るのは似合わないよ。せっかくこんなに綺麗な服を着てきてくれたんだし、今日はせっかくのデートなんだから、先に一度だけ笑ってくれないかな? お願いだから……?」
俺が話し始めたばかりの時、端月の小さな肩が少し震えたが、俺が話し続けると、顔の表情も身体も目立った変化を見せなかったので、俺は少し怖くなった。
いや……とても怖かった。
だが、これらすべては俺が引き起こしたことなのだから、俺自身が向き合い、耐えなければならない。
俺は懇願するような目で、端月の青藍色の深い瞳を見つめた。
端月はゆっくりと息を吸い、それから整った鼻からゆっくりと吐き出し、唇を開いて、静かに言った。
「逐幸……私は今、どうやら笑えそうにない」
彼女は桜色の唇を少し噛み、それから一言付け加えた。
「でも、今日はせっかくのデートでしょう……あとで、デートの途中でまだ機会があるかもしれない」
――それから……
端月は少しだけ視線を横へ逸らし、最終的には俺と目を合わせて言った。
「この前の……湖櫻先輩が私に渡してくれた。ありがとう……毎月、いつも心を込めて用意してくれて。私、もう身体は大丈夫だから」
この瞬間、俺は彼女を抱きしめたくなり、キスしたくなった。
でも、今の状況では駄目だろう。
俺は分かったという意味を込めて頷き、小さな声で「どういたしまして」と言った。
俺は断られるかもしれないという心の準備をしながら、ゆっくりと前へ手を伸ばした。
端月は俺の表情を見て、それから、彼女の視線が俺の手へと移動した。
俺の手に、久しぶりの温もりが伝わってきた。
少し泣きそうになったが、この時の俺はただゆっくりと、確かに、彼女の温かく、それでいて小さく感じられる手を握った。
俺たちは列車に乗り、それぞれ目の前の吊り革を握りながら、繋いだ手から気にかけてしまうほどの温もりを感じていた。
この柔らかな温もりに、思わず握る力を強めたくなるが、彼女を痛がらせてしまうのではないかと心配にもなる。
なんとなく、端月の手から、彼女が抱えている一抹の恥じらいと不安が伝わってくるようだった。
俺が上方にある、車内に合わせて弧を描いている広告欄へ目を向けた時、端月が「私たち、どこへ行くの?」と尋ねてきたが、俺は降りる駅名だけを答え、具体的にどこへ向かうのかは彼女に伝えなかった。
おそらく端月は、俺が明かすつもりがないことを理解し、俺を信じることにしたのだろう。彼女はそれ以上尋ねなかった。
俺はもともと、乗車中に少しでも雰囲気を和らげられればと思っていたが、二人とも気軽に話せる余裕がないようだった。
俺たちは目的の駅名で降り、改札を出た後、エスカレーターに乗って地上へ戻った。
外は陽光が燦々と降り注ぎ、少し暑く感じるほどで、とても十二月が近いとは思えない天気だった。
だが、そう思った時、大きな建物の影の下へ入ると、遠くから建物の隙間を通って吹いてくる冷たい風を、突然感じた。
「寒くない?」
俺は端月を見て静かに尋ねると、彼女は首を横に振り、「大丈夫」と言った。
陽光の隙間を通り抜けて影の場所へ来るたびに、そして緑色のヘアリボンで結ばれた彼女の黒い長髪の毛先が冷たい風に煽られるたびに、俺は少し胸が痛くなった。
だが、本人が大丈夫だと言っている以上、俺は彼女の手を繋いだまま、前へ進んで歩道を歩くしかなかった。
道中、チェーンのカフェ、牛肉麺の店、文房具店を通り過ぎ、その後、まるで交差点全体を囲むような四角形の歩道橋へとやって来た。
こちら側の道路には歩道がないため、四角形の歩道橋を通って向こう側へ渡る必要があった。
俺は端月がうっかり自分のスカートの裾を踏まないように、わざと歩く速度を落とした。
俺たちが少し息を切らす頃、ようやく歩道橋の上の踊り場へと登り着いた。
「懐かしい……もうしばらく、この辺りには来てなかったな」
陽光が俺たちの肩と頭上へ降り注ぎ、上から温かいお湯をかけられているような感覚を与えてくる。
空気さえも乾燥してきたように感じられた。
端月は周囲の街路樹の梢を眺め、それから下方を異なる方向へ走り抜けていく車を見て、感嘆の声を漏らした。
俺は「うん」と声を出し、少しだけ同意した。
コンクリートで塗装された路面には確かな感触があり、俺たちはまるで展望回廊を歩いているように、慎重に前へ進んだ。
歩道橋を下り、ほどなくして、傍らに古い赤レンガの塀がある歩道へ踏み入れた。
そのまま歩道に沿って前へ進むと、やがて広々とした門へとたどり着いた。
門は車両の出入りを想定して設計されており、今は車両が出入りする必要がないため、柵状で車輪の付いた車止めによって入口が塞がれていた。
しかし、さらに前へ進むと、警備室の隣にある小さな門は閉じられていなかったので、俺たちは警備室へ行き、警備員に自分たちの名前と電話番号を登録して、訪問者の入場許可を得た。
俺と端月は順番に自分たちの情報を記入し、一緒に小さな門から中へ入った。
少し視線を上げると、建物の外壁に校名を刻んだ装飾が施されているのが見えた。
そう――
ここが、俺と端月の母校、東雲市立春風高等学校だった。
俺たちは校舎の右側から中へ回り込んでいったが、これはおそらく、先にあまり馴染みのない場所から見て回れば、その後で雰囲気をもっと盛り上げられる……いや、単純に二人のうちどちらかがたまたま右側へ歩いていただけなのかもしれない。
校舎の右側は主に付属の幼稚園と駐車場に近い場所だった。
少し前、俺はSNSで現職の教師が台風の日に木の葉が吹き落とされたことについて投稿しているのを見かけたが、幸いにも車両以外、その教師本人に怪我はなかった。
ここの校舎は最後に改修される工事対象に指定されていたため、逆に今では最も古びた印象を与える区域になっていた。
主に二年生と一部の三年生の教室があり、建物の中には大きな曲がり角の区域があり、掃除用具を収納できるロッカーが置かれていた。
「昔は部活動の時間に、ほとんどこの辺りの教室を使ってたよな」
「うん。私、前にボードゲーム部に参加してたんだけど、ちょうど角の隣にあるあの教室で活動してたの」
端月は上方、ちょうど角の隣にある一つの教室を指差し、彼女の記憶を呼び起こしたようだった。
「君は当時、どんな部活に入ってたんだ? 俺、なんだか少し忘れちゃったよ」
「俺は囲碁部。ここじゃなくて、前の建物の一階だった」
俺たちは少し前へ進み、グラウンドの西側にある校舎へやって来た。
当然、教室はすべて施錠されており、階段の踊り場のゲートも下ろされていて中へ入ることはできなかった。
しかし、一階の教室にはこの障害物がなかったため、教室の外から窓越しに中を覗くことができた。
「当時はよくあの席に座って後輩と碁を打ってたんだ。先輩が熱心に囲碁の定跡を教えてくれたんだけど、俺は一度に覚えるなんてとてもできなくて、最後には仲のいい後輩と五目並べばかりやってた。そしたら学期末には、部内の半分以上の人が五目並べをやってたんだ」
俺がそう話していると、当時の記憶も思わず蘇ってきた。
あの後輩は今、どうしているんだろう?
「どうして後輩を悪い方向へ導いてるの? しかも、悪い風潮を部全体に広めちゃってるじゃない」
端月は相変わらず少し遠慮がちな様子だったが、面白い話を聞いたからなのか、表情が少し柔らかくなった。
俺の心に温かなものが込み上げ、俺は彼女に答えた。
「俺はあの後輩と、彼が好きな冒険小説についても話してたんだ。それで、彼に薦めてもらったおかげで、その作品を見直して、もっとその作品の良さを知ることができたんだ」
「二人ともお互い様じゃない。だから、そんなに仲がよかったのね」
端月の言葉には、少しだけ笑みが浮かんでいた。




