第六章 旭日(3)
「ママ、書き終わったよ」
「もう、あなたのは私にも見せてくれないの?」
「ママは、別にみんなに見せる必要はないって言ったもん」
俺がわけがわからずにいると、庭雪先生は三人に号令をかけた。
「はいはい、みんな書き終わったなら、自分で直接渡してあげなさい」
黄色い服に黒いスカートを身につけたお嬢様が、勢いよく俺の隣のソファに座った。
そして、上下に折り畳まれた黄色いカードを俺に差し出したが、俺はそれが何なのかまだ知らなかったため手を伸ばさなかった。
すると、彼女はそれを俺の太ももの上にちょこんと放った。
「はい、これ」
──ついでに、こんな一言も投げかけてきた。
そのとき、白い服を着た二番目のお嬢様が俺の前まで歩いてきて、右手を伸ばしてピンク色のカードを俺に渡した。
「おじさん、これあげる」
「お、おう、ありがとう……」
俺が受け取ると、少し恥ずかしそうな表情を浮かべた少女は、まるで逃げるように母親のそばへ隠れた。
そして、身を隠すように母親の腰に抱きついた。
最後に、坊ちゃんが俺の左側に座っていたお嬢様を跨ぎ、さらに俺のふくらはぎの上を通って、右側のソファへ座った。
続けて左手を伸ばし、青いカードを差し出して言った。
「……これ、あげる」
「おう、ありがとう」
こうして俺は三色のカードを集めることになり、庭雪先生が言った。
「せっかく来てくれたんだから、みんなにカードを書いてプレゼントする練習をさせたんだよ。今、見てみる?」
いつ次にこの子たちに会えるのかわからなかったので、俺はその場でカードの内容を見ることにした。
とりあえず、順番に一枚ずつ見ていこう。
お嬢様の黄色いカードには、こう書かれていた。
『今度また遊びに来てね。それと、あなたが言ってた彼女も連れてきて。私、その子と結婚するから、そうしたらあなたはその子と結婚できなくなるでしょ』
俺の顔に笑みが浮かび、少し顔をそむけているお嬢様に向かって言った。
「ふん、次はあのゲームじゃないかもしれないぞ。それに、彼女は俺より頭がいいから、強敵に出会ったな。それに、彼女に勝たないと俺と結婚するチャンスはないぞ」
それに対して、お嬢様は振り向き、そして──リズムに合わせて俺を叩いた!
「わ、た、し、は、あ、な、た、と、な、ん、か、結、婚、し、な、い、も、ん! 変なこと言わないでよ。私だって次は勝つんだから。あの子に私と結婚してもらって、そしたらあなたには奥さんがいなくなるんだから!」
「おう──じゃあ、頑張れ。俺と彼女は結婚する可能性がかなり高いから、もっとゲームの腕を磨かないとな」
それに対して、お嬢様はまた何度も俺を叩き、そのあとになってようやく俺を解放してくれた。
俺は次のピンク色のカードを開いた。
そこには、こう書かれていた。
『おじさん、あなたが誠実だから、もしこれからも振られたら、私と付き合うかどうか考えてあげる』
読み終えてから顔を上げると、二番目のお嬢様はまた母親の後ろへ引っ込んでいた。
そこで俺は言った。
「俺にチャンスをくれてありがとう。やっぱり俺ってモテるんだな。でも、もしこれから好きな人ができたら、その人を好きになってもいいからな」
「──はあ? 何? あの子、何て書いたの! ちょっと見せて!」
「ちょっと、ダメ! これは私の秘密だから、見せちゃダメ!」
「お姉ちゃん、それは私のなんだから、見ちゃダメだよ!」
俺はピンク色のカードと黄色いカードを大切にポケットへ入れ、拗ね始めたお嬢様を一旦無視して、二番目のお嬢様に向かって言った。
「ほら、俺はちゃんと守ることができたぞ。安心していいからな」
その言葉を聞くと、二番目のお嬢様の顔にほっとしたような表情が浮かんだ。
彼女は小さく頷き、「うん」と言ったあと、再び母親の身体を隠れ蓑にして隠れてしまった。
最後に俺は青いカードを開いた。
『おじ……お兄ちゃんの話は面白い。今度また聞かせてね。それに、僕もこれから物語を書いてみたい』
この一行を見た瞬間、俺は一秒ほど固まった。
隣にいる坊ちゃんは少し俯き、興味がないふりをしていた。
俺は少し身体を向けて彼のほうを見て、それから言った。
「うん、君が書くものを楽しみにしているよ。ああ、もしこれからどうすればいいのかわからなくなったら、俺が君の先生になってやるぞ」
坊ちゃんはゆっくりと顔を上げ、少し考えてから言った。
「おじさん、そのときは僕、あなたの内弟子になりたい」
え?
内弟子……?
どうして、小学五年生の子どもが内弟子なんて言葉を知っているんだ?
「まさか……あの将棋小説を読んだことがあるのか?」
ありえないだろうと思いながら尋ねると、若様はなんと頷いて言った。
「うん。学校の図書館にあるから、読んだ。すごく熱かった」
こ、これが……!
突然、俺はなんとも言えない感動を覚えた。
まさか、こんなに小さな子どもまで、あのシリーズを読んだことがあるなんて……!
そういうことなら、俺もいい加減な答えをするわけにはいかない。
俺は表情を引き締め、誠実な眼差しで若様を見つめた。
すると彼も、俺に見つめられたことで、俺の目を見返した。
「君も知っていると思うけど、内弟子は簡単に取るものじゃない。だから……そのときは君の頑張り次第だ。俺が君を認めることができたら、俺の内弟子にしてやる」
「──うん」
坊ちゃんはそれだけ答え、そして力強く頷いた。
そのあと、俺たちはもう少しボードゲームで遊び、最終的には坊ちゃんが最後の勝利を手にした。
そして、このときの俺はまだ知らなかった──。
数年後、俺が勝手に内弟子(義理の息子)を取ったことで、ある人物から三時間もキーボードの上で正座させられることになるのだが、最後までこの内弟子を一番可愛がったのも、その人物だったということを。
それはまた、別の物語である。
『ロアン兄、ちょっと聞きたいことがあるんだ』
家に帰ったあと、俺は少し昼寝をした。
夜になって気力を取り戻すと、俺はロアン兄とのチャットルームを開いた。
俺は状況を説明し、それから次の言葉を打ち込んだ。
『いったいどうすれば……こんな嫉妬を乗り越えられるんだろう……それとも、一気に追い抜かれてしまうんじゃないかっていう気持ちを、どうすればいいんだろう?』
先生の家にいるとき、俺はようやく気づいた。
今の創作の壁を突破できない理由は、端月の創作によって自分自身の判断力を失ってしまったからなのだ。
いつもそのことに囚われて、集中して考えることができず、何をするにも及び腰になっていた。
この間ずっと、俺は創作能力を解決し、さらに磨きをかけているつもりだった。
だが実際には、俺はただこの感情から逃げていただけだった。
その感情が存在していることを明らかにわかっていたのに、向き合わず、無視することを選んでいた。
しかし、正面から見ようとしないものが存在しないというわけではない。
それどころか、意識しているかどうかに関係なく、影響を与え続ける。
俺より創作経験が豊富なロアン兄なら、この問題に答えてくれるはずだ──俺が今になってようやく、この問題を解決できる可能性の高い選択肢を思いついたことからも、俺自身がすでに深い泥沼にはまり込んでいることがわかる。
ロアン兄はオンラインになっていなかった。
俺は少しアニメを見て気分を落ち着かせていたが、ちょうどその一話を見終えたところで、返信の通知が届いた。
『おう。なるほど、そういう問題か』
ロアン兄はまずこの一言を入力し、そのあと入力欄には、彼が続けて文字を打っていることを示す表示が出た。
『じゃあ、逆に聞いてみよう。俺に対して、あるいは他のクリエイターに対して、彼らのほうが優れているところを見たとき、君は同じような感情を抱くのか?』
俺は少し考えてから、返信を入力した。
『すごいクリエイターを見たら、当然嫉妬する気持ちは生まれる。でも、今の俺はむしろ、彼らの長所を学んで、自分を強くして、それから彼らを超えたいと思っている』
ロアン兄のアイコン表示が返信の下へ移動し、続けて彼はメッセージを入力した。
『正直だな。でも、俺はそういう態度、嫌いじゃない』
『じゃあ、あの優秀な彼女によって、どうして君は動揺したんだ?』
その二つの返答について、俺は考えながら文字を入力した。
『俺は……怖いんだと思う。俺がやってきたことが、もしかしたら一瞬で追い越されてしまう程度のものなんじゃないかって、怖いんだ』
『それに、相手は俺にとって一番近い人だ。もし俺が、自分が一番誇りに思っている分野でさえ相手に勝てなかったら、あるいは将来のある時点から勝てなくなったら……俺は相手とどう向き合えばいいのかわからなくなる』
『これが自分の弱さだってことはわかっている。相手には何の落ち度もない。それでも俺は、このことを消化して受け入れるのが、難しいんだ』
俺が新しいメッセージを入力するたびに、ロアン兄のアイコン表示は下へ落ちていった。
彼がこのことをどう受け止めるのか、俺自身も少し不安に感じていた。
すると、ロアン兄から返信が届いた。
『君があの子に嫉妬するのは、彼女が自分がこれまで経験してきたような厳しい鍛錬をしてきたようには見えないのに、より高いスタート地点に立っているのを見て、危機感を抱いたからだろう』
『だが、君が実際にどんな練習をしてきたのかは俺にはわからないが、君が教えてくれた一部の練習方法と一部の文章を見る限り、実際にどれだけの時間と努力を投入したのかは判断できなくても、このことに対して君が抱いている情熱と覚悟は感じ取れる……そういえば、以前はこれを執着とも呼んでいたな』
『その執着があったからこそ、君はいろいろな困難を乗り越え、多くの地道な訓練を積み重ねて、もともとの文章から少しずつ今のレベルまで進歩したんだ』
『君の目標は、もっと良い文章を書けるようになることのはずだろう? 過去に経験してきた訓練は、絶対に無駄にはならない。そのことを一番よくわかっている人間は、君自身じゃないのか?』
『他人を気にしすぎても、自分が前へ進む助けにはならない。自分自身の成長に目を向けろ』
『それに、君が話してくれた内容によれば、君の彼女はまだ君のレベルからかなり離れている。でも、その間には無数の困難な橋と道がある──普通、そんな覚悟も小説への執着もない人間が、いわゆるインスピレーションと読書経験だけを頼りにして、こんな短い時間でその間にある隔たりを本当に越えられると思うか?』
その文章を読んで、俺は思わず目を見開いた。
ロアン兄は創作について話しているときだけ、一続きの長い文章で返してくる。
普段の彼は、ほとんどの場合、短いながらも要点を突いた返答をする。
そしてこのことから、俺は彼の心の中にも、同じようにある種の穏やかな熱が潜んでいるのを感じた。
そのとき、また新しい返信が表示された。
『だから、君の目標は何なんだ? 君が物語を書くすべての理由は何だ?』
俺は自分の気持ちを確かめるように、すぐに文字を打って返した。
『俺の目標は、神作を書くことだ。自分自身が心の底から面白いと思えて、それと同時に、誰かの心に届く神作を書くこと』
『今の俺がこの目標からまだ遠く離れていることはわかっている。でも、いつか必ず、この目標にたどり着いてみせる』
そのとき、画面が下へ移動し、一つの返信が表示された。
『じゃあ、君の武器は何だ?』
『君が鍛えてきたものは何だ?』
まるで胸の中の何かが震えているようだった。
俺はカタカタとキーボードを叩いた。
『絶対に諦めない。それに、いつも頭を働かせて、困難に遭ったときは、正面から解決方法を考える』
『それを執着と呼ぼうが、意地っ張りと呼ぼうが、あるいは創作バカと呼ぼうが、そんなことはどうでもいい』
『この図々しさ、何も顧みず、簡単には倒されまいとする精神で、馬鹿みたいに必死になって研究し続ける。それこそが、俺が持っている最強の武器だ』
なんて熱いんだ。
『今あるすべてを、自分が今持っているものを使って、全力で戦う。それが俺──名を逐夜というクリエイターの戦い方だ』
俺は、こういう人間だったのか。
胸の中で炎が燃え続け、まるで自分自身を溶かしてしまいそうなほどの高熱。
だが、いつの間にか、目の縁と頬には、ふと湿り気を感じていた。
俺は何かを言おうとしたが、強く口を閉じ、今この瞬間の自分の気持ちを心の中で噛み締めた。
悔しい。
過去の努力によって生まれた確かな実感。
自分自身の弱さによって深く感じた無力感。
そして──前にいる人と、さらに大きな舞台への憧れ。
そして。
恋人に対するわだかまりが解けたこと……
そして、この間に積み重ねてきた──彼女への、増すばかりの愛情。
そして、自分が考えすぎてしまったことで、彼女を傷つけてしまったことへの申し訳なさ。
自分の進む方向を改めて確立した俺は、ロアン兄にこう返した。
『ロアン兄。わかった。この部分については、もう迷わない。ありがとう』
やはり、ロアン兄から予想どおりの返信が届いた。
『前に言っただろう。俺の国では、よほど重大なことでもない限り、友人同士で礼を言う必要はない』
俺は少し口元を緩め、肩の力を抜いてからキーボードを叩いた。
『うん。だからこそ、こう言ったんだ』
『そうか』
何の根拠もないが、俺にはロアン兄もこの返信を打ちながら、少し笑っているように感じられた。
この雰囲気に乗じて、俺は自分の頬を軽く拭い、それから尋ねた。
『ロアン兄、もう一つ相談したいんだけど、どうすれば彼女と仲直りできるかな?』
送信したあと、入力欄にはロアン兄も続けて入力していることが表示された。
そして、止まった。
それから、再び入力し始めた。
しばらくすると、画面に新しい文字が表示された。
『それは人を間違えて聞いてるぞ。俺、彼女なんていたことない、ただの普通の独身のおっさんだからな』
この情報には少し驚いたが、俺は諦めず、彼に食い下がって尋ねた。
『でも、ロアン兄は俺よりずっとたくさんGALGAMEをやってるだろ。だから頼む、一緒に相談に乗ってくれよ!』
最後に、ロアン兄はこう返してきた。
『しょうがないな。付き合ってやるよ』
俺には、その瞬間の彼が苦笑を浮かべているのが感じられた。
ロアン兄と話し終えたあと、俺は曜光にも連絡して相談に乗ってもらい、同時に曜光の元彼女の意見も聞いてみることにした。
何日もかけて準備を重ね、すべてが終わったあと、俺はスマートフォンを手に取り、端月へメッセージを送った。




