↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
31/76

第五章 寒冷(4)

そして、さらに数日が過ぎた。


木曜日の午前、俺は疲れ切った身体を引きずるようにして、教育学科の必修科目が行われる大きな教室へ入った。この時は呼吸することさえ少し苦しく感じ、腹から空腹の信号が伝わってくる一方で、頭は何も食べたくないと思っていた。


今日は朝の三時、あるいは四時になってようやく眠ったせいか、今の俺は強い眠気に襲われていたが、それに伴う頭痛がまた俺の注意力をかき乱していた。


俺はいつも座っている場所を少し見上げると、端月(はづき)が俯いて授業のノートをめくっていた。一瞬、見慣れた光景に温かさを感じたが、次の瞬間には心が沈み、視線を逸らして遠くの空いている席へ向かった。


俺が鞄を置き、ノートとコピー用紙を取り出した時、端月が顔を上げたようだったが、俺には彼女と目を合わせる勇気がなかった。だから元の姿勢を保ったまま、鞄の中から筆箱を取り出した。


やがて、授業の先生が教室に入ってきた。時計は午前八時十分頃を指していた。俺は眠気に耐えながら、明らかに思考速度が鈍っている脳を急かし、この辛い一日を始めた。


十時頃、授業が終わると、スマートフォンが控えめに振動した。俺はペットボトルの中の水を少し飲み、スマートフォンを取り出して通知を確認した。


だが、それは誰かからのメッセージではなく、カレンダーアプリが買い物を忘れないようにと知らせるリマインダーだった。


俺は思わずほっとしたが、同時に自分の態度を嫌悪した。


俺はスマートフォンの画面を閉じ、再び自分の思考に没頭した。授業の終了を告げる鐘も、授業中に先生が話す内容も、俺の頭の中ではノイズとなっていたが、意識して無視さえすれば、こうした煩わしい音も少しずつフィルターにかけることができた。


ようやく、昼になった。俺は学校の外で自分の昼食を買い、適当に済ませた後、学校の図書館へ戻った。そして午後一時近くになると、図書館を出てグラウンドの方向へ歩いていった。


俺は体育館一階の器材室へやって来て、その前にある大きな階段に腰を下ろした。ここは上に石造りの庇があり、昼の強い日差しが直接当たることはなかった。


しばらくすると、一人の人がやって来て、俺に声をかけた。


「やっほー、素直に来てくれて嬉しいよ。来なかったら、図書館まで行って捕まえようと思ってたんだからね。」


「先輩にこんなふうに脅されたら、来たくなくても仕方ないでしょう。」


スマートフォンのチャットには、昼近くに湖櫻(みさくら)先輩から送られてきたメッセージが表示されていた。


『今日の午後一時に、体育器材室の辺りで会おうよ?』


『もし来なかったら、下のことをこっそり言いふらしちゃうからね。』


『一年生の旭 逐幸(あさひ つぐゆき)と一夜を共にしたのに、その後になって責任を取ってくれなくて、そのことが彼女にもバレちゃった。』


『私、本当に傷ついたんだよ……あの夜、あんなに激しく私を愛してくれて、私のことが一番好きだって言ってくれたのに。』


こんな根も葉もない言いがかりに対して、俺はとりあえず一言返した。


『言ってること、全部起きてないことじゃないですか。』


先輩はすぐに返信してきた。


『この前、あなたたちが恋人同士で喧嘩したこと、もう学科中に広まってるんだよ。』


『それに聞きたいんだけど、二年生で顔が広い私の言葉と、自分の彼女に大声を出す薄情な男の言葉、みんなはどっちを信じると思う?』


『そんな噂を流したら、先輩の評判も悪くなりますよ。』俺はさらに抵抗した。


だが、先輩にはまったく通用しなかった。


『それなら仕方ないね。責任を取って、私に彼女っていう肩書きをくれればいいよ。それから、もともと可愛い彼女を酷い捨て方をしたっていう罪名も背負ってね。』


『ついでに言っておくけど、私は何を言われても全然気にしないよ。だってそのついでに、最終的には私としか付き合えない面白い彼氏を手に入れられるんだから。全然損じゃないし。』


──うっ……本当に手強すぎる。


それに、どうして先輩はここまでこの件に首を突っ込もうとするんだ?


俺たちのチャット履歴をスクリーンショットして証拠にすることもできるが、そんなことをしても自分のイメージを救えるわけではなさそうだった。結局、俺は大人しく約束の場所へ向かうしかなかった。


それに加えて……ちょうど先輩に一つ頼みたいことがあった。前向きに考えるなら、せっかくの機会なのだから、ここで頼んでしまおう。


「それで、先輩は俺に何の用ですか?」


この言葉を聞くと、先輩はまず「ご飯食べた?」と尋ねてきた。俺が「一応食べました」と答えると、先輩は白いワンピースの柔らかな裾を太腿の下から膝の方向へと整え、俺の隣に腰を下ろした。


「別に大した用事じゃないよ。ただ、あなたを引っ張り出しておしゃべりしたかっただけ。」


先輩が少し顔を上げると、空は鮮やかな青色をしていた。その時、ちょうど上空を飛ぶ飛行機の空気摩擦音が聞こえ、秋や冬にしては暑すぎるほどの強い風も吹いてきた。


白いスカートの裾と、先輩の茶色い長髪も風に合わせて舞った。


俺たちはしばらく黙っていた。なんとなく、その場は妙に静かだった。まるで、ここ最近俺が感じていたノイズが一時的に消えたようだった。


そして、先輩の言葉を俺がもちろんまったく信じていなかったので、こう言った。


「俺と端月のことですよね。俺が悪かったのも分かっています……でも……」


俺は罪を認め、それによって少しでも楽になろうと思った。だが、先輩は少し首を横に振り、それから穏やかな笑みを浮かべて言った。


「──特別に、私のことを少しだけ教えてあげるよ。大学に入ってから、誰にも話したことのないこと。」


ん? どうして先輩が突然こんな話をしようとするのか、俺にはまったく分からなかった。あまりにも困惑したため、俺はただ聞き続けるしかなかった。


「小さい頃からずっと、好きってどういうものなんだろう、いわゆる恋愛ってどういうものなんだろうって考えてた。子供の頃に物語を読むと、いつも思わず気になってしまうんだよね。その後、少し大きくなって、中学生の頃に誰かから告白された。でも断ったんだ。だって隣のクラスの男子で、それまでまったく知らない人だったし、話したことがあったかどうかも覚えてなかったから。その後も何人かいたけど、だいたい同じような感じだった。」


「本当にモテるんですね、先輩。」俺は慎重に相槌を打った。


「うん、だってその頃からちょっと可愛かったし、高校生になったらさらに可愛くなっちゃって、また少し多くの人に言い寄られるようになったんだ。あ、別に自慢してるわけじゃないよ。その人たちが書いたラブレターやメモは全部取ってあるし、見たいなら証拠として全部写真に撮ってあるよ。」


このまま俺が止めなければ、先輩のスマートフォンに入っている写真を無理やり見せられることになる。だから俺は慌てて言った。


「わ、分かりましたよ。先輩の言ってることは信じてます! それで?」


先輩はまず「逐幸はやっぱり女の子の話を聞くのが上手だね」と感心して俺を褒め、それから続けた。


「その頃、同じクラスの男子が一人いて……うーん、どう言えばいいかな? あなたは私が考えすぎだと思うかもしれないけど、その男の子、一目見ただけで私のことがすごく好きなんだって分かる感じだった。」


「考えすぎだなんて思ってません。続けてください……」先輩がこの時表情を曇らせたので、俺はこの言葉で、少しでも彼女が話を続けられるようにした。


「その頃、私も彼とたまに話をしていて、それである時、彼が私を買い物に誘ってきたの。だから、もしかしたらその人と一緒に出かけてみてもいいかもしれないって思った。ところが、乗り物に乗っている時……私たちの間の会話をして、『違う』って感じたんだ。」


──俺は、将来彼と付き合っている姿を想像できなかった。先輩はそう付け加えた。


「私たちは本当にただ買い物をしただけで、それから駅でそれぞれ帰りの電車に乗った──それに実は、最後に私が、まだそんなに急いで帰らなくてもいいんじゃないって言ったんだけど、相手はその言葉をどうとも思わなかったみたいで、結局私たちはそのまま別れた。その時、私の心の中には一つの考えしかなかった。『ああ──やっぱり私たちは無理なんだ』って。


もしかしたら、私と出かけた後で、彼も何か違うと感じて、そのまま何もなく終わったのかもしれない。でもとにかく、私たちは卒業するまで二度と一緒に出かけることはなかったし、私も自分が本当にその人を好きではないと判断した。少し好意があったのかもしれないけど、それは全部友達の範囲だった。」


──私は彼と恋人にはなれない。先輩は寂しさを帯びたような笑みを浮かべた。


「大学に進学した後は、本当の恋愛に出会えると思ってた。自分も誰かと親密な関係を築けると思ってたし、人と付き合って、恋愛の味を体験してみたいと思ってた。でも……どうしてなんだろうね?」


──どうして、私はそんな恋愛ができないんだろう?


──どうして、私の物語にはずっとそんな人が現れないんだろう?


──どうして、ようやく少し気になる男の子ができたのに、相手にはすでに好きで、大切にしたい女の子がいるんだろう?


──分からない。この問いの答えは。


まるでこの晴れた空に向かって打ち明けているようだったが、俺には分かっていた……先輩が伝えようとしている意味が。


それでも彼女はさらに自分の言葉を掘り下げ、俺にはっきりと告げた。


「|逐幸《つぐゆき》、誰かを好きになって、相手もたまたま自分を好きになってくれる。そんな巡り合わせは、とても貴重なんだよ。」


軽快な歌を歌っているようでありながら、過去の皆との写真が入った額縁を抱きしめているような、切なさも感じさせた。


「私はあなたたちが好き……本当に、人はこんなにも互いのことを思いやって、こんなにも相手を大切に思って、こんな素敵な関係を築けるんだって私に信じさせてくれるあなたたちが好き──私はあなたと端月が好き……お互いにこの関係を大切にしてほしい。私の前で、以前みたいにもう一度笑顔を見せてほしい。」


──あなたなら、きっとできるよね……うん?


奏 湖櫻(かなで みさくら)先輩は振り向き、桜色の瞳で俺を見つめた。その時の彼女は、まるで一つの庭園にいて、暖かな日差しに照らされながら、目の前に咲くピンク色の花に願いを込めている少女のようだった。


俺は突然、自分の悩みをすべて彼女に打ち明けたいという衝動に駆られた。


でも、そうしてはいけないと分かっていた。


なぜなら、誰かに悩みを打ち明けるとしても、俺が選ぶ相手は先輩ではないからだ。俺は彼女の信頼を裏切るわけにはいかないし、ましてや、このことを俺に話そうと決意してくれた彼女の覚悟を汚すわけにはいかなかった。


だから、俺は別の方法で答えることを選んだ。


「今の俺は、まだ本当の意味で端月と向き合うことができません。自分が今やっていることが彼女を傷つけていることも、よく分かっています。でも、俺は何らかの方法でこの壁を乗り越えて、それから自分の口で彼女に謝りたい。その前に、俺にはもう少し時間が必要です。彼女がその時まで待ってくれるかどうかは分かりません。でも、できるだけ早く答えを出します。」


「ここまで頼まれても、あなたって本当に頑固だね。」


どうしようもないと思ったのか、先輩は苦笑を浮かべた。


俺は一度頷き、それから続けた。


「前に俺が端月と喧嘩した時、先輩も聞いていたはずです。俺は物語を書いていて、言い換えれば小説家なんです。そして創作者という生き物は、性格がどうしようもなく悪くて、とても頑固で、頭の中で何を考えているのか分からないような連中なんです。でも……」


俺は一秒だけ間を置き、先ほど先輩が見つめていた空へと視線を向けた。


「さっき先輩の話を聞いたからこそ、俺が思い描いている物語……いや、俺の一部の志まで繋げたものを、返事として聞いてください。」


「え、ちょっと待って。先に録音してもいい? これはもしかしたら、私の人生における重要な瞬間かもしれないから。」


先輩は突然真剣な表情を浮かべ、手でストップのジェスチャーまでしたので、俺は思わず固まった。


ん? なんだか女の子って、みんな録音するのが好きなのか? まあ……いいけど。


結局、先輩は本当にスマートフォンを取り出し、録音アプリの録音ボタンをタップした。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。