第五章 寒冷(3)
家に帰った後、俺は自分のパソコンで端月から送られてきた物語のファイルを開いた。
前のほうの段落を読んでいると、思わず──さすが端月だ、と思った。
主人公の内面描写はとても繊細だ。カメラの動きや場面描写からも、少し工夫が凝らされていることが分かる。
だけど……次第に、俺は一つの冷たさを感じた。
それは文章のせいではない。
端月の文章からはすっきりとした印象を受けるが、文章の下には、それでも一抹の温かさが滲み出ている。
俺はそのまま読み進め、春風に吹かれるような文章が、読み手をその感化力のある世界で包み込んでいく。
「もし彼がこの一節を読んだら、きっと喜んでくれるだろうな」、「ちょっと恥ずかしい……でも、私はこう書きたい」、「これであなたは受け入れてくれるかな……?」、「褒めて……くれるかな?」という気持ちが読み取れる。
恋人の文章は、俺に託された宝物のようだった。
柔らかく、それでいてかけがえのない光を放っている。
──これは、普通の人を幸せにする物語だ。普通の人を笑顔にする物語だ。
……けれどそれは、それが初めて小説を書く創作者によって生み出されたものだと知っている、この分野で奮闘している一人の創作者にとって──大きな衝撃をもたらす物語でもあった。
すごいな、君は。
俺は君のことが大好きだ。
俺の愛する恋人。
「初めてなのに、こんな物語を創作できるなんて……本当にすごいよ。」
俺は画面を見つめた。カーソルが点滅しているが、視界が少しぼやけてきた。
もし君がこのまま物語を書き続けたら、俺はあっという間に君に追い越されてしまうんじゃないだろうか?
「君を強く抱きしめたい。君にキスしたい……君が嬉しそうな顔をするところが見たい。」
──でも今の俺には、そんなことはできない。
──俺も、君にこのことを慰めてもらうわけにはいかない。
──なぜなら。
──創作は、俺が存在する意味だからだ。
君は、そんなことはないと言うかもしれない。
でも。
少なくとも……
──君が俺のそばにいない時。
──このことだけが、俺が自分が生きていると感じられる唯一のことなのだ。
「端月……端月……俺、すごく寂しい……」
──何も知らないままこれを読めていたなら、きっと俺は笑顔になっていただろう。
俺の身体が思わず震えた。
すごく寒い。心臓を何本ものナイフで刺し貫かれたようだった。
「でも……こんなの、駄目だよな?」
自分の愛する恋人に嫉妬する……そんな事実はあまりにも醜い。
旭 逐幸……こんなのは駄目だ。
自分の恐怖を消化しろ。自分の悔しさを徹底的に覆い隠せ。
だって……物語を人に届けることと、誰かが心を込めて書いた物語を読むことは、素晴らしいことなのだから。
俺はずっと、そんな気持ちを抱いて文章を書いてきた。
うん。しっかりしろ。恋人を幸せにできる彼氏になりたい。
「よし、久しぶりに読後感想と調整案を書いてみよう。これによって彼女がもっと物語を書くことを好きになって、より強い創作者になってくれたら、俺も嬉しい。より強いライバルがいれば、きっと俺ももっと強くなれる。」
──この言葉が心から出たものだということは、俺自身が保証できる。
──でも、文字を使う者なら、文字が使われていない余白にも、別の本心が含まれていることにきっと気づくだろう。
俺は新しい文書ファイルを開き、「愛する恋人、端月への物語の返答」と名前をつけた。そして、まるで冷たい白い雪原のような文書ファイルの上に、燃え盛る薪のような、情熱と温度に満ちた文章を書き始めた。
「──こう調整すれば、キャラクターの行動がより読者を納得させられるようになるし、君が伝えたいことにも、もっと合うようになると思う。全体的には、温かさを感じられる物語で、読んでいて楽しかったよ。さすが俺の恋人だ。次の作品へ進もう、端月先生。」
「感想をありがとう。時間があったら、また試してみるね。」
放課後の時間を利用して、俺たちはまず学生食堂で食事を済ませ、それから以前先輩が紹介してくれた科学教育学科の棟の五階へ行き、ノートパソコンを開いて読後の感想を共有した。
俺たちは同じ側の隣り合った席に座った。左側に並んでいる窓の外には、すでに外の景色は見えず、一面の暗闇が広がっている。上にある蛍光灯だけが、ガラスに室内の反射を映していた。
黒いTシャツを着て、黒いヘアゴムで髪を結んだ端月は、俺の感想を聞き終えると、微笑みを浮かべた。それを見て、俺は少し安心した。
「逐幸……」
端月は突然俺の名前を呼び、青みがかった青色の瞳が、サファイアのように愛らしい光を放っていた。俺が困惑して少し首を傾げると、彼女は続けて言った。
「私……ちゃんとできてたかな?」
「うん、すごくよくできてたよ。端月はすごい。本当に優秀だった。文字に込めた君の気持ちが伝わってきたよ。」
その言葉を聞いた端月は、純真で恥ずかしそうな表情を浮かべ、それから言った。
「じゃあ……ちょっとご褒美をくれてもいい?」
彼女は子守歌でも歌うようにゆっくりとその言葉を口にし、最後まで言い終える頃には、その瞼も下がり始めていた──
俺には彼女の小さな合図が分かった。でも、彼女を褒めながらも、自分の心の中に潜んでいる負の感情を再び意識してしまった俺に、本当に彼女にキスをする資格があるのだろうか?
俺は無意識に拳を握りしめ、ちょうどこの提案を断ろうとした時、頭の中に以前読んだ物語の一場面が浮かんだ。
主人公の男が肝心な時にヒロインへのキスを拒み、そのために彼女に気にさせ、悲しい思いをさせる。
俺は端月を失望させたくない。拒絶されたような気持ちにさせたくない。
そしてその時、端月はすでに完全に目を閉じていた。
だから──
俺はもともと強く握りしめていた手で彼女の肩を押さえ、もう一方の手でそっと彼女の後頭部を支え、自分の唇を彼女の桜色の柔らかな唇に重ねた。
俺は、自分が応えられる本心で、この気持ちに応えることを決めた。
俺は確かに、この女の子が好きだ。
彼女を励ましたい。彼女を幸せにしたい。
彼女は俺にとって一番大切な恋人だ。彼女を大切にしたい。
ん……ん、ん……─────んん………………──
俺が少し我に返った時、俺たちはすでに互いを強く抱きしめていた。
息を吸い、俺たちの唇が再び重なった。
ん……ん、ん、ん……──! は───ん──……………………
今夜はとても静かで、グラウンドから聞こえてくる掛け声も聞こえず、古びた蛍光灯がドン、ドンと明滅する音だけが残っていた。
あ……逐…………幸……ん、ん──!──────はん──!………ん……────
このキスが終わると、俺たちは息を切らしながらゆっくりと離れた。その時、二人の唇はまだ液体状の糸によってつながっていた。
「今日のご褒美……どうしてこんなに豪華なの……?」
端月の瞳には、少し朦朧とした様子が浮かんでいて、その光景に俺は胸がときめいた。
「俺の恋人、可愛い……」
「もう一度……言ってくれる……?」
俺は思わず、いったん離した身体を再び彼女に寄せ、抱きしめながら言った。
「すごく頑張ったね……可愛いよ、綺麗だ……」
「もう一度言ってって言ったの、さっきの言葉を、でも全部同じようには繰り返してくれなかった……だから、もう一度言って……?」
「世界で一番可愛い。綺麗だよ。抱きしめたい……キスしたい……俺の愛する恋人……」
端月の瞳には、もともとの朦朧とした様子に加えて、再び恥ずかしさが滲み、唇をすぼめて言った。
「だから、そういうことじゃないって言ったのに……それに、今もう抱きしめてるじゃない……さっきも、あんなに夢中になって、キスしたでしょう……?」
彼女は表面上ではそう言っているものの、その瞳にはまた、「このままキスを続けないの?」という、少し疑問と期待の入り混じった光が浮かんでいた。
俺は本当に幸せだ。彼女のことが大好きだ……端月、本当に可愛い……
俺は思わず微笑みを浮かべ、まるですべての悩みを忘れたかのように、再び前へと身を寄せた──その甘く柔らかな気持ちを感じながら。
しかし、俺の心のどこかでは、ある部分がかすかに痛んでいた。
十一月下旬。
俺は階段状になった多目的教室の中に座り、先生がスライドを使って著作権法に関する法律の条文を紹介していた。
この授業はもともと、自分の法律に関する知識を補うために選んだものだった。評価方法は、おおむね書面によるレポートの提出とグループ発表で、比較的単位を取りやすい科目だった。
学期が半分を過ぎ、俺のグループの発表は先週終わった。残るのは期末の書面レポートだけだ。授業内容についても、そのほとんどは俺がすでに独学した内容だったため、授業時間は普段、別のことをするために使い、時々前方にまだ学んでいないことがないかを気にする程度だった。
前方には、俺が家から持ってきたコピー用紙にたくさんの文字が書かれている。よく見なければ、俺が真面目にノートを書き写していると思うかもしれないが、実際にはそのほとんどが小説の素材だった。だが問題は、今の状態ではどんな筋書きや場面を思いついても、どうしても使えないように感じることだった。
くそ……焦るなと自分に言い聞かせても、時間は一分一秒と過ぎていく。授業に出席しなくてもいいのなら、心を乱されることなく物語を考えられる。壇上の先生には少し申し訳ないが、今の俺は、単位を取ることが人生にとって一体何の意味があるのかと、思わず考え始めていた。
その時、ようやく授業終了の鐘が鳴り、先生も授業の終了を告げた。
俺は素早く私物を片付けて前方のドアへ向かった。その時、俺は見慣れた瞳と目が合った。
端月は今日、薄緑色の、ワンピースに似たトップスを着て、頭には黒いヘアバンドをつけていた。俺を見るなり、期待に満ちた表情を浮かべて言った。
「逐幸、今日は一緒にお昼ご飯を食べに行こう……いい?」
この時、俺は彼女を強く抱きしめたい、「大好きだよ」、「本当に会いたかった」、「もっと君と近づきたい」と言いたかった。でも俺の口から出てきたのは、別の言葉だった。
「ごめん、今日も用事があるんだ……集中したいから、先に図書館へ行くよ。」
「じゃあ、お昼ご飯は食べないの……?」
「そっちが終わったら、適当に何か買って、それから午後の授業に行くよ。」
「最近ずっとそう言ってるよね。今日は少し休んだら……? 湖櫻先輩が、今日は私たちと一緒に食事したいって言ってたよ──」
「その、ごめん……今日は本当にやらなきゃいけないことがあるんだ……先輩にごめんって伝えておいて……」
お願いだから……これ以上聞かないでくれ。
アニメで見たことのある場面なら、ここでひどい主人公の男がヒロインを強く突き飛ばすのだろう。
でも、俺にはできない。会話で、今は集中する必要があることを彼女に理解してもらいたい。
だが、目の前の俺のヒロインは形の整った眉をひそめ、青みがかった青色の瞳に、少しの涙と怒りを浮かべていた。
「逐幸……創作があなたにとって大切なのは分かってる。でも、そんなことで本当に問題を解決できるの?」
その言葉が俺を刺激した。まるで、すでに肌に刺さっている針のような破片を、誰かにそっと触れられたことで耐え難い痛みが生じたようだった。
「今はまだ問題を解決できてないから、どうやって解決するか考えてるんだ……!」
俺の怒りもまた掻き立てられ、そのため少し大きな声を出してしまった。
だが、頭の中のもう一人の自分は、自分の振る舞いを目の当たりにして悲しんでいた。俺は……君──端月に、こんなことを言いたくなかった。
どうして俺はこんな口調になったんだ? もっと穏やかな口調で伝えることだってできたはずなのに。どうして俺にはできないんだ?
「今は解決できてないからこそ、あなたはこんなふうに空回りしてるんじゃないの? もういいでしょう……少しご飯を食べて、それから一緒に方法を考えよう。それとも、私の助けなんて必要ないなら、私はただあなたのそばにいる。それじゃ駄目なの──?」
端月の顔は、怒りに煽られて赤く染まった。俺は彼女があんなに激しくなった姿を初めて見た。
彼女が言っていることは絶対にとても優しい言葉なのに、今の俺の耳には、まるで自分自身から逃げるための毒を受け入れろと言われているように聞こえた。
「これは俺が自分で乗り越えなきゃいけない問題なんだ。俺が挑戦する目標なんだ──! 君がそばにいてくれたって、俺は君に頼りたくなるだけだ──でも、それじゃ……俺は前に進めない──俺はどんどん弱くなる。だって、そんなことをしたら、俺は戦う意志すら失ってしまうから。分かるか、端月──? 俺が戦えないなら……俺には一体何の価値があるんだ……?」
端月は俺の話を聞きながら、思わず唇をすぼめた。彼女の頬が震え、呼吸の音まで震えているようだった。
「つまり、どうしても今日は私たちと一緒にご飯を食べられないってこと? あなたが言う──いわゆる創作者の戦いのために……? あなたが言っていることのためなら、一食分の時間すらないの? そんなの、あまりにもひどいと思わない? それなら、もうこれからは私たち、一緒に食べるのをやめよう──」
「あ──あ──! 端月、こんなところにいたんだ──! ずっと探してたんだよ! おお──あなたの愛しい彼氏もここにいたんだね! でも二人とも、なんで教室の前のドアの近くで話してるの? ちょっと出入りする人の邪魔になってるよ?」
その時、俺の後ろから一人の人が歩いてきて、俺と端月の会話に割り込んできた。
湖櫻先輩はピンクを基調としたトップスを着ていて、下半身には体にぴったりとしたジーンズを履いていた。俺が呆然としている間に、先輩はすでに端月の後ろまで来て、両手を彼女の肩に置いていた。
「湖櫻先輩……」
端月は少し顔を横に向けて先輩を見た。彼女が口を開く前に、先輩が先に尋ねた。
「それで、今の状況は、逐幸は私たちと一緒にお昼を食べに行けないってこと?」
「うん、用事があるって言ってるんだけど──」
「分かった。じゃあ今日は私たち二人のデートってことね? やった。ちょうど女性限定の話題があるから、この機会にあなたと話したかったんだ。じゃあ行こう?」
「で、でも……」端月は俺をちらりと見た。その瞳には、三割の迷いと、七割のまだ消えていない怒りが含まれていた。
「逐幸の旦那、今日はお付き合いできないんだったら、今度、今回できなかった食事の時間を埋め合わせてちょうだいね。いい?」
「う、うん……分かった。ごめん、先輩……端月も。」
「先輩にはちゃんと謝るのに、私の番になったらそんな適当なの……?」端月は冷たく言った。
「はいはい! もうお腹空いたんだから、端月、早く行こう。二人が恋人同士で喧嘩してるのが、もうこの建物全体の注目の的になってるの、知らないの? 私は早く逃げたいんだから、うん、行こう!」
そう言うと、先輩は端月の手を引いて校舎の出口へ歩いていった。
その場に残された俺は、周囲で見ている人々の探るような、批判するような視線を受けながら、またため息をついた。
なんだか、このすべてが俺には重苦しく、そしてどうしようもなく苛立たしく感じられた。




