第四章 試練(5)
別の階へとやって来た。
ここは大型のホームブランドが入っているフロアで、全体の照明はオレンジがかった黄色を基調としており、展示されている商品は本棚、昇降デスク、デスクライト、キッチン用品、のれんから、枕、マットレス、布団などの寝具まで、ありとあらゆるものが揃っている。
このフロアの商品陳列は高いところまで積み上げられているため、なんとなく人間のサイズまで相対的に小さくなったように感じるが、『ガリバー旅行記』に描かれている小人国ほど大げさではない。
「なんとなく、この遮光カーテンの色、すごくいい感じ。」
端月の顔に一筋の輝きが浮かび、展示台に垂れ下がっているカーテンの生地へと手を伸ばして触れた。
カーテンにはどうやらたくさんの種類があるようで、ホテルのように光沢が比較的強いものもあれば、今端月が触っているようなマットな遮光カーテンもある。
そして彼女が気に入ったのは、どちらかというと控えめな青色のものだった。反対側にある緑色も彼女の好きな色ではあるが、そちらは少し大人びて見えるようだ。
カーテンを見終えたあと、俺たちは書斎机の展示エリアへやって来た。
「あっ、うちではあれを使ってる。でも、自分で使ってみるとちょっと高さが合わなくて、前に使ってたときはこの問題を意識してなかったんだけど、今はちょっと違和感がある。」
「それなら、机と椅子の高さが合ってないのかもしれないね。もう少し調べてみる必要がありそう。」
端月は「じゃあ今、代わりになるものを選ぼう」とは言わず、控えめな答えを返した。おそらく彼女も、机や椅子を買い替えるのは慎重に考えて調べる必要があることに加え、値段も気軽に欲しいと言って買えるようなものではないと分かっているのだろう。
俺は少し感謝しながら、続けて「じゃあ、そっちはどれを使ってるの?」と尋ねると、端月は反対側にある、より幅が広く、収納棚の付いた書斎机を指して答えた。
「私はこういうのに近いものを使ってる。化粧品とか参考書を一時的に収納棚の中に押し込められるんだけど、こういうのは収納棚がないものと比べると掃除が面倒なの。とにかく、一長一短かな。」
俺たちはそのまま先へ進み、前方にはいくつかのキッチンシンクが現れ、その上には何個もの蛇口も取り付けられていた。普通の一本の長いレバーを上下に動かして開閉するものもあれば、冷水と温水で二つのハンドルに分かれているタイプもある。
そして蛇口の吐水管にも長短があり、ホテルのようにかなり長いものもあれば、学校のシンクのような短いタイプもある。
「どれが好き?」
俺はその中の一つ、曲線を描いた中型のタイプを上へ持ち上げたが、当然ながら下から水が出てくることはなかった。
「あなたが今いじってるやつ、よさそう。どちらかというと、私はああいうホテル式のものはあまり慣れてないかな。吐水管がちょっと長すぎるうえに、水が出てくる位置が低すぎて使いにくい感じがするし、顔を洗うときにあの管にぶつかるかもしれないし。」
「これのこと?」俺は彼女が言っているタイプを指差した。
「うん、そう。ぶつかりやすそうだと思わない? ほら、あなたも試してみて。」
「え? 俺は嫌だよ。先に自分で試してみて。」
「だから、私はああいうのが好きじゃないって言ったじゃん。」
まるで子供同士がお互いに好きな玩具や嫌いな玩具を話して、互いにボールを投げ合っているようだった。ホーム用品の温かな照明の下で、端月の顔に浮かんだ笑顔が、とても眩しく見えた。
俺たちはリビングルームの商品展示エリアへやって来た。
そこには四つのベッドがあり、一列に二つずつ、四角形になるように並べられている。ベッドのそばの床には「ご自由にお試しください。ただし長時間の占有はご遠慮ください」という表示が貼られていた。また、ベッドの隣には四人掛けの長いソファが二つ設置されており、それぞれ革製と綿布製の二種類で、残りの空間には一人掛けや二人掛けのソファが置かれ、中には中央に小さなローテーブルを添えているものもあった。
先を歩いていた俺は四人掛けの革製ソファに腰を下ろした。まだ立っている端月は、まず二秒ほど上から俺を見下ろし、それから流れに任せるように俺の隣へ腰を下ろした。
このソファはかなり弾力があり、うちで以前使っていたのは綿布製だった。夏は暑くて、俺は床に座るほうがいいと思うほどだったが、その後、革製に替えてからこの状況は改善した。革製は冬になると少し冷たいものの、夏は涼しいという一点によって、俺の頭の中の天秤はこちらへと傾いている。
だが、一つ気になることもあった。大体の見当はついていたものの、やはり思わず口を開いて尋ねた。
「なんでそんな妙な目で俺を見るの?」
「ん? 何でもないよ。ただ、こんなにベッドがたくさんあるのに、どうしてソファに座ったのかなって。」
端月は腕を使って俺の右腕に絡みつき、そのまま身体の重みをこちらへ預けてきた。この階の空調は相変わらず強いため、触れ合ったときに感じる体温がとても心地よかった。
「それは……ベッドに座ると、なんとなくエッチな雰囲気になりそうだから。」
俺たちはこのとき手を繋ぎ、なぜか身体まで少し揺らし始めていた。
「お巡りさん、こっちに来て、私の隣にいるこの人を監視してください。この人、どうやら公然と善良な風俗に反することをしようとしているみたいです。」
「お願いだからお巡りさんを困らせないでよ。俺、ある漫画で読んだんだけど、お巡りさんって合コンでお酒を飲む時間すらなかなか取れないらしいよ。なのに、どうしてそんな適当に通報して仕事を増やしたうえに、見たくもない場面まで見せようとするの。」
端月はやはりその質問をしてきたので、俺もそのまま続けた。まるで先にある答えを書いてから解答集を開くようなもので、自分の答えと同じだったら、なんとなく嬉しくなる。
「ああ、じゃあ私は大人しく襲われることにするよ。どう? ソファでもいいんだろ?」
「ここで全裸になられたら俺が恥ずかしいし、それに、他の人に君の身体を見せるわけにはいかないだろ?」
わざと平静な様子を見せていたが、頬はすでに熱くなり始めていた。
「確かに、ここじゃあまりロマンチックじゃないね。やっぱり逐幸の優しい保護を受けることにするよ。」
俺たちはお互い、ただ口で言っているだけだと分かっていた。だからこそ、冷静でいられた。
──そして、ちょうどそのとき。
俺の身体が少し震えた。
愛しい恋人が、自分のある丸みを帯びた柔らかな身体の一部を、わざと俺の身体へ押しつけてきたからだ。
自分の反応がすでにばれていると分かっていたものの、俺は何食わぬ顔を装った。
もともと端月は俺の腕を引いていたが、今度はそのまま俺の耳元へ顔を寄せ、心を騒がせるような吐息を漏らしながら言った。
「そんなに紳士的で……それに面白い人だから……ちょっとご褒美をあげたいな。こういうの……どうかな……?」
「……そのご褒美って何? まさか、あとで俺にキスしてくれるとか?」
それを聞いた端月は笑い、さらに俺の腕へゆっくりと前後に二、三回押しつけた。
人を意識させるその感触に、心が乱れて仕方がない。だが、それが一体何なのかを俺は絶対に口にしないし、これ以上反応することもない。
ここまで遊んだところで、彼女もこれ以上続けるわけにはいかないと気づいたようで、少し身体を離し、最初と同じように腕を組む状態へ戻った。
俺たちは前方を眺めた。リビングテーブルの反対側には、大型の液晶テレビが一台置かれている。
「子供の頃、よくこうやって腕を組んで、お母さんの隣に寄りかかりながらテレビを見てた。」
端月が、中学生の頃には母親が自分のもとを去ったと言っていたことを覚えている。俺は一瞬、沈黙に陥った。電源の入っていないテレビの黒い画面を見つめ、数秒考えてから言った。
「そうなんだ。じゃあ、二人でどんな番組を見てたの? クイズ番組とか?」
「それもあったけど、一番印象に残ってるのは、当時流行ってた歌番組かな。私はそのままお母さんの膝の上に寝転がって、出演者が一生懸命歌っているのを聴いてた。」
端月の雪が舞い落ちるような声は、まるで昨日起きたことを話しているかのように軽やかだった。
「そのときは、楽しかった?」
俺はゆっくりと身体を横へ向け、腕を組まれていないもう一方の腕で、彼女を少し抱き寄せた。
「たぶん、楽しかったんだと思う。あの頃の私は、ただ退屈で、お母さんと遊びたかっただけだったんだと思う。でも、お母さんはあまり私の相手をしてくれなくて、他の人が歌うのを集中して見たがってた。」
端月の温かな吐息が、そっと撫でるように俺の頬へ触れ、とても愛おしく感じられた。
しかし次の瞬間、彼女が口にした言葉に、俺は衝撃を受けた──
「……私のお母さんは、自分で人生を終わらせることを選んだの。」
俺の全身が一瞬にして冷たくなった。まるでこの階の空調が突然最大まで強くなったかのようだった。
だが、端月の身体から伝わってくる熱が、彼女の言葉が俺の錯覚ではないことを教えてくれた。
「どうして……?」
俺は聞いていいのか分からなかった。
ひどく迷ったものの、最後には、端月は俺に話したかったからこそ、この話を持ち出したのだと思い、話を続けることにした。
「うん……たぶん、仕事のことだったと思う……私もあの頃、お母さんが普段からたくさん薬を飲んでいることに気づいてた。聞いてみたら、この仕事を続けるにはこれらの薬を飲まないといけないって言ってた。」
まるで中学生の頃の少女に戻ったかのように、端月は身体を縮こまらせ、手で俺に少し合図をした。そこで俺は彼女を胸の中へ抱き寄せた。
「お母さんに、仕事を変えられないのって聞いたの。だって、たくさん薬を飲んでいるのが心配だったから。でも、お母さんは大変だけど、楽しいと思えるところもあるって言ってた。自分と一緒に仕事をしている人たちや、自分が作った商品によって、みんなが笑顔になれるようにしたいって。それに、これは意味があって、やる価値のある仕事なんだって言ってた。」
俺にはどう返せばいいのか分からず、最後に少し方向を変えて言った。
「じゃあ、お父さんは……このことについて、どんな態度だったの?」
端月は俺を強く抱きしめながらも、それとはまったく反対に、静かな声で言った。
「お父さんはね、ずっと見てた。お母さんが仕事を続けるのを止めようともしたし、何度も説得してた……でも、お母さんの決意は変わらなかった。仕事のことも……それから、最後に下したあの決断も……」
彼女がこのことを口にすればするほど、俺は泣きたくなった。目の端がどうしても熱くなる。
でも、ずっとこのことで一番苦しんできたのは俺ではない。もし彼女が今ここで涙を流していないのなら、俺がどうしてそれを表に出せるだろうか。
俺がどう答えればいいのか考えていると、端月は続けて言った。
「逐幸と付き合っているときは楽しい。大学に進学してから、ずっと幸せだと思ってる。高校生の頃は少し寂しかったけど、今振り返ってみれば、あれも幸せだったんだと思う。だって、誰かが私を見てくれている、誰かがひそかに私を好きでいてくれているって感じられたから。勇気を出して、逐幸に『好き』って言えて、本当によかった。」
端月は顔を上げ、慈愛に満ちた眼差しで俺と見つめ合った。淡いピンク色の唇が、強く美しい弧を描いた。
「私はただ、逐幸にお母さんのことを話したかっただけ。そして、あなたに一番伝えたかったのは、あなたは私にとって大切な人で、いてもいなくてもいいような人なんかじゃないってこと。あなたのおかげで、私は本当に幸せを感じてる。私を大切にして、いつも大事にしてくれてありがとう。私たちが付き合い始めてから今まで、まだ八週間くらいしか経ってないけど、私はとても充実していて楽しいと思ってる。これからも、楽しく過ごせたらいいな。」
腕の中で彼女が言った言葉に、俺の鼻の奥がつんと痛くなり、喉もわずかに震えて、いつものように声を出すことが難しく感じられた。
それでも、この強くて、思わず大切にしたくなる恋人に対して、俺も励まされたかのように、懸命に笑顔を浮かべた。
「うん。話してくれてありがとう。俺は……とても光栄だと思う。俺も、俺たちの関係と、これから一緒に過ごしていく日々を、大切にしていきたい。もっと君の笑顔を見られたら、俺も嬉しい。でも、君がつらくなって、どうしたらいいか分からなくなったときは、俺に話しに来てほしい。俺は君の話を聞きたいと思ってる。」
それに対して、端月はただ小さな声で「ありがとう」と一言だけ言った。だが、俺はそれで十分だと思った。
俺たちは同じ姿勢のまま、お互いの身体の温度を感じていた。
五分ほど経ったあと、腕の中から小さな甘い声が聞こえてきた──
「さっきのとき、どうしてキスしてくれなかったの?」
その言葉に俺はひどく迷い、しばらく考えたあと、本当の理由を口にすることにした──
「あとになって気づいたんだけど、天井の監視カメラがちょうど俺たちの方向を向いてたんだ。」
言い終わっても、その言葉にすぐ返事はなかった。
それからおよそ十秒が経って、ようやく端月が小さな声で言った。
「お巡りさん、この真面目で法律を守る市民、すごく嫌いなんだけど、お願いだから一時的に逮捕してくれない?」
それに対して、俺は思わず苦笑を浮かべ、最後に軽くツッコミを入れた。
「お願いだから、お巡りさんに国家権力を乱用させようとしないでくれる?」




