第三章 明月(5)
「それでは、今日の授業はここまでです。皆さん、ありがとうございました」
俺、端月、奏 湖櫻先輩、そしてもう二人の仲間は、教壇の上に並んで立ち、教室の下にいる「生徒」に向かって軽く頭を下げると、その後、教室内に拍手が響いた。
拍手が終わると、教壇の下に座っていた本当の授業担当の先生がマイクを手に取り、俺たちのグループの模擬授業について指導し、さらに順番にいくつかの質問をした。
俺たちが答えると、先生は自分の評価表にコメントと点数を書き込み、他の学生たちはフィードバックシートに俺たちのグループの授業についての感想を書いた。
先生の率直な笑顔と比較的前向きなコメントを見る限り、俺たちのグループの出来は悪くなかったようで、俺はほっとした。
先生と他の学生たちからの質問にすべて答え終えて、ようやく今回の模擬授業は一段落し、俺たちは難関を乗り越えたような気持ちでゆっくりと舞台から降りた。
そして舞台から降りる直前、俺の右側に立っていた、淡い緑色のトップスに控えめな黒いパンツを合わせた端月が俺を一瞥し、俺に優しく微笑みかけたので、俺も労いと、少しばかりの達成感を含んだ笑みを返した。
授業担当の先生が再び教壇に立ち、今日の授業をまとめた。
ほどなくして澄んだ鐘の音が鳴り、先生もあっさりと授業の終了を告げた。
他の学生たちが片付けをしたり、教室を出たりしている中、ピンクを基調とした服装の湖櫻先輩がこちらへやって来て、俺と端月に尋ねた。
「二人とも、この後時間ある? もし暇なら、グループで振り返りをしない?」
──もう二人はこの後も授業があると言っていて、自分で反省するほうがいいという考えだったので、参加しないそうだ。
先輩は続けて付け加えた。
このことについて俺には特に異論もなく、少しくらい時間を使って反省するのも構わなかったので、俺は答えた。
「俺はちょうど時間があります。参加できます。端月は?」
「私も大丈夫。でも、この教室はこの後、次の授業を受ける学生が来るから、反省するなら別の場所に移動しないといけないね」
端月はノートを鞄にしまい、前の扉へ目を向けた。
彼女の言う通り、すでに次の授業を受ける学生たちが次々とこの教室へ入ってきていた。
「私に任せて。知っている場所があるから、この時間帯なら使えるはずよ」
湖櫻先輩のバイオリンの演奏のような柔らかな声が響き、桜色の瞳には明るい笑みが浮かんでいた。
まるで「やっぱり二人とも引き受けてくれると思った」と言っているようだった。
彼女は栗色の長い髪を耳の後ろへかき上げ、講義資料の入った手提げ袋を持って悠然と教室を出ていった。
ベージュ色のスカートの裾が初雪のように軽く揺れていた。
私物を片付け終えた俺と端月も後についていった。
俺たちはエレベーター前に並んで下りるのを待つ列には加わらず、西側の階段へ向かい、軽快な足取りでぐるぐると階段を下り、六階から一階まで降りた後、連絡通路に沿って校門の方向へ進んだ。
途中で正門を通り過ぎ、車道の脇にある別の建物へやって来た。
一階の共用スペースを通り抜け、廊下を進んでエレベーター前まで来ると、先頭を歩いていた湖櫻先輩がカチャリと上階へ行くボタンを押した。
エレベーターが来るのを待っている間、俺はこの階の様子を少し観察した。
この時は学生の姿がほとんどなく、エレベーターの近くにある背の高いベンジャミンバロックだけが俺の目を引き、全体的にとても静かな環境だった。
ほどなくしてエレベーターが一階までやって来て、三人で乗り込んだ。
ピンポーンという案内音が鳴り、エレベーターが五階に到着した。
エレベーターを降りると、すぐに右側の廊下が比較的広く設計されていることに気づいた。
そして通路の側面の空間は学生が自由に利用できるスペースとして設計されており、五つのテーブルが設置されていて、それぞれのテーブルには二人掛けの木製ベンチが二つ付いていた。
「よかった、やっぱり今は誰も使っていないわね。ここで話し合いましょう」
「この時間帯は、ここってこんなに空いているんだね」
端月は小さく感嘆の声を漏らしながら周囲を見回し、その瞳には明らかに興味を示す様子が浮かんでいた。
校内のさまざまな場所は、それぞれの学科などが比較的厳しく管理している会議室や多目的教室を除けば、申請しなければ使えない場所もあるものの、建物内の半開放型のスペースは空いていれば、各学科の教員や学生が自由に利用できる。
湖櫻先輩は中央にあるテーブルを選び、窓側の席に自分の私物を置いた。
俺と端月も先輩の向かい側の席に座った。
建物内には空調が備えられているので外の暑い空気に触れる必要もなく、さらにここは廊下の縁に並んだ窓から日光が差し込むように設計されているため、自然の光も感じることができた。
湖櫻先輩は先ほど鞄にしまったノートを取り出し、新しいページを開くとシャープペンシルを取り出した。
俺と端月もそれぞれノートを取り出した。
俺たち全員の準備が整うと、湖櫻先輩が口を開いた。
「よし、それじゃあ私から始めるわね。私が話し終わった後で、二人も自分の考えを言ってくれていいから、三人で順番に自分の授業内容を振り返る、ということで問題ないわよね?」
俺と端月は頷いた。
先輩はこの段階を「説課」と呼ぶのだと補足し、それから先ほどの演習について、自分の反省を語り始めた。
自分で良かったと思うところ、先生から質問されたところ、自分が改善する必要があると思った点、そして授業を受けていた学生たちの反応の分析などが含まれていた。
俺は湖櫻先輩が自分の授業について分析するのを聞きながら、「先輩は自分に対してこんなにも厳しいんだな」と思った。
授業の二週間前にも、俺たちはグループ全員で集まって練習したが、彼女は他の人へのフィードバックでは励ますことや実際的な練習のアドバイスを中心にしていた。
しかし今、自分の授業内容については、一切妥協せず、容赦なく一つ一つ分解して反省していた。
俺は思わず先輩に強い敬意を抱き、この話し合いにももっと真剣な態度で向き合うべきだと思った。
「だいたいこんな感じかな。二人は何か思うところある?」
先輩は俺たち二人へ視線を向けた。
俺がまだ半拍遅れて反応している間に、端月はすでに先輩の話を聞きながら書いていたばかりのノートを取り出し、フィードバックを始めていた。
先輩が話し合っている時の真剣な表情と、先輩の向かいに座って凛とした態度を見せる端月の横顔を眺めながら、俺もペンを走らせ、二人が話した要点をノートに整理した。
「──以上、だいたいこんな感じかな」
三人が順番にそれぞれの授業内容について話し合い終える頃には、すでに一時間ほど経っていた。
俺のノートには、今や五、六ページほどの内容が新たに書き加えられていた。
先輩は自分のノートを閉じ、すっきりした表情で言った。
「お疲れさま。私がこんなことを言うと、なんだか上から目線に聞こえるかもしれないけど、逐幸はすごく成長したと思うわ。前回と比べたら、まるで別人よ」
その言葉を聞いて、俺は思わず苦笑した。
前回の練習では、俺はいい加減な気持ちで、来てしまえば何とかなるだろうと思っていた。
その結果、順番に演習をした時、俺は何度も台詞を忘れただけでなく、何度もどもってしまった。
それについて、メンバーたちは何も言わなかったが、かえって俺の罪悪感を強くした。
俺はどうにかこうにか演習を終え、心の中にこれ以上ないほどの気まずさを抱えながら舞台から降りた。
そして、練習をしなかったことを後悔し、家に帰った後、回数を数えながら部屋で一人、慣れるまで練習した。
そのおかげで、今日は授業中に心臓が激しく跳ねていたものの、目立った失敗をすることなく、自分の担当する部分を何とか終えることができた。
「ありがとうございます、先輩……俺は痛い目に遭って初めて痛みを知るタイプなので、帰ってからちゃんと練習しました。これからはもう、いい加減な態度で向き合うことはしません」
「そうなのね」
湖櫻先輩は優しい声を出し、続けて言った。
「どんな人にも初めてはあるわ。たとえ最初はうまくいかなかったとしても、その後でこのことをきちんとやりたいと思って、自分の時間と心血を注めば、きっとどんどん成長していけると思う」
「あなたは逃げることを選ばず、ちゃんと向き合った。私はそれがすごいことだと思うわ」
その言葉を聞いて、俺は一方で恥ずかしさを感じながらも、一方ではそれを大切な言葉として心の奥に収めた。
俺がしばらく何も答えられずにいるのを見て、端月がからかいと俺を誇らしく思っている気持ちを含んだ温かな表情でこちらを見てきた。
俺は拗ねたふりをして少し彼女を睨むと、彼女は逆に微笑みを浮かべた。
俺たちのやり取りが気に入ったらしく、先輩はふふっと笑い、伸びをしてから言った。
「よし、重要なことは全部終わったわね。さっき一気にたくさん話したから、ちょっと喉が渇いちゃった。下の階の自動販売機で何か飲み物を買ってこようと思うんだけど、二人は何が飲みたい? ほら、十秒以内に決めて」
その言葉を聞いて、俺と端月はそれぞれ、先輩に奢ってもらうのは申し訳ないから自分で払うと言った。
すると先輩は「そんなに気を遣わなくていいのよ。私も昔は先輩たちに面倒を見てもらったんだから、今はそれを受け継いでいるだけ。もし気になるなら、これから自分たちの後輩の面倒を見てあげればいいわ」と強調し、最後には俺たちも彼女の好意に甘えることにした。
下の階のエレベーター前付近にある自動販売機だったので、先輩は十分も経たずに戻ってきた。
俺と端月が選んだのはアイスティーで、先輩は自分用にミルクティーを買ってきた。
先輩に礼を言った後、俺はカチッとプルタブを開け、冷たい飲み物を一口飲んだ。
一時間ほど振り返りを続けたので、俺もすでに喉がカラカラだった。
ほのかな香りを放つ紅茶が喉へ入ってくると、俺はすぐに潤いを感じた。
舌で感じる甘さも、まるで糖分が一瞬で脳へ流れ込んできたかのように、俺の精神を一気に奮い立たせた。
隣の端月もこの時、自分の手に持った紅茶を一口すすり、その後、音のない吐息を漏らした。
なんとなくその姿が少し色っぽく感じられ、俺は思わずそっと視線を逸らした。
「二人はどうしてこの学科を選んだの?」
同じように飲み物を飲んだ湖櫻先輩は、ミルクティーの入った缶を置き、上半身をこちらへ乗り出してきた。
彼女の服は襟元のデザインが胸元を見せにくいものだったが、この動作によって胸元が危うい境界に置かれていた。
俺は意識して視線を上げ、彼女の目をまっすぐ見ながら答えた。
「俺は実は子供が特別好きというわけではありません。でも、人間がいったいどうやって学習するのかには興味があって、それに成績もちょうど入学基準を満たしていて、面接の後に合格したのもこの学校だけだったので、日和に来ることにしました」
大学入試の点数が出た時、俺は人間の学習の仕組みを理解できれば、もっと効率よく自分の創作能力を高められると思い、日和の教育学科を選択肢に入れた。
それについて、母もこの学科に進めば小学校教師という安定した仕事を得る助けになるという理由から、珍しく俺の決断に反対しなかった。
そして面接の準備を始めてから合格通知を受け取るまでの間に、俺は推薦されていた授業用の本を何冊か買って読んだので、基礎知識にも少し触れていた。
けれど、いくつかの部分は、やはり先生に実際に説明してもらったほうが分かりやすかった。
大学一年の第一学期も今や半分を過ぎ、俺は当初計画していた通り、自分が必要としていた知識を得て、それを小説創作に関する学習へ活かしている。
それが少し嬉しかった。
それに、自分の努力によって、もともと分からなかった人が突然理解できるようになるということ自体にも、達成感があると思っている。
俺の話を聞き終えると、端月は自分の答えを口にした。
「子供はやんちゃな一面もあるけれど、全体的にはやっぱり純粋だと思う。私はそういう素朴な感覚が好きなの」
「それに、彼らが一日一日成長していく姿を見ていると、たとえ数年間一緒に過ごすだけだとしても、そうやって日々成長していく姿を見ることに、とても安心するの」
「それから、幼い頃の教育は、その子供の未来に深い影響を与えるものだから。私は自分にできる限り、彼らに寄り添って世話をしてあげたいと思っている」
その時、湖櫻先輩が突然俺のほうを見た。
「端月はこう言っているわ。逐幸、これからあなた、くれぐれも油断しちゃ駄目よ」
「先輩……これはどういう意──ええと、先輩の場合はどうなんですか?」
俺は一瞬で彼女の意味を理解し、知らないふりをしてやり過ごそうとしたが、それもあまり良くない気がして、最終的にはぎこちなく聞き返した。
先輩は俺に意味深な笑みを浮かべ、それから人差し指で軽く顎に触れながら、気楽な口調で言った。
「私? 私はただ、この学科は勉強してみたら結構面白そうだと思ったし、それに仕事も見つけやすくて安定した収入も得やすそうだったから、この学校に出願したの」
「実際に勉強してみたら、それなりに楽しめているわよ」
「でも、結局のところ仕事は仕事よ。もしお金が自動的に空から降ってくるなら、私は自分の趣味を全力で伸ばして、国の政策が掲げている多様な発展方針にも合わせるんだけどね」
「どう考えても、働かなくていいなんてことにはならないでしょう……」
俺がため息をつくと、先輩はさらに「いったいどこに、優秀で、しかも私のことをとても愛してくれて、私もその人を愛している男がいるのかしら? その人にお願いしたら、私のために何か方法を考えてくれるはずなんだけど」と付け加え、俺にわざと「考えてみて」と言っているようないたずらっぽい目を向けた。
い、いや……俺には何を言っているのか分からない。
「先輩、私はある記事を読んだことがあります。女性であっても仕事が必要だというのが、その記事の中心的な考えでした。個人が自由に使えるお金を持つことは、発言の重みや自己認識の向上と高い関連性があるそうです。先輩の能力なら、この分野できっと抜きん出ることができると俺は思います」
端月は冷静でありながら優しい口調で言い、さらに自分の身体を俺のほうへ少し近づけたので、俺たちの腕と肩が触れ合った。
「もし相手が私の面倒を見るのが大好きな人だったら、私もその人に面倒を見てもらって構わないわよ?」
「私から見た先輩は、実は自尊心が少し強いタイプです。たぶん途中で、こういう形は適切ではないと気づくと思います」
「おおお、よく言うわね。じゃあ、あなたはどう? 他の人に面倒を見てもらいたくないって言えるの?」
その言葉を聞いて、端月は少し眉を寄せ、真剣な表情を浮かべた。
俺が、彼女は「先輩、その言葉は論点をすり替えています」と返すのだろうと思っていると、彼女は別の答えを選んだ。
「普段は二人ともちゃんと頑張って、どちらか一方が誰かに支えてもらう必要がある時には、もう一方が支えてあげる。私は……そういう形のほうが好き」
端月はそう言い終えると、少しだけ唇を引き結んだ。
俺はそんな彼女がとても可愛いと思った。
先輩でさえ、そんな控えめな雰囲気に感化されたのか、春風のような笑みを浮かべた。
「うん、分かったわ。私はほんの二言三言話しただけなのに、どうしてあなたはこんなに可愛くなっちゃったのかしら。いったい誰の影響なのかしらね」
先輩はそう言ってミルクティーを一口飲んだ。
端月も続けて飲み物の缶を手に取り、小さな声で言った。
「私も分かってる。先輩が冗談を言っているってことは。でも、やっぱり真面目に答えたほうがいいと思う」
俺と先輩は思わず微笑み、端月は不満そうな表情を作り、肩で注意するように俺へ軽くぶつかった。




