第三章 明月(4)
俺は端月と最後に一人鍋を食べに行ったが、食事中、無意識のうちにもっと話をしたくなってしまい、結果として彼女に笑いながら「私たち、やっぱり先にご飯を食べよう。じゃないと、とても食べきれないよ」と言われた。
その後、俺たちはお互いの顔を見つめながら食事をし、食後にお茶を飲んでいる時には、先ほどのやり取りは変だったとお互いにツッコミを入れ、二人ともおかしくて笑ってしまった。
家に帰り、いろいろな雑事を片付けた後、SNSを開いて、ロアン兄に「もう彼女には説明しました。彼女は俺を信じてくれると言ってくれて、俺も彼女の期待を裏切りたくありません」と送った。
それに対して、ロアン兄は「おう」と一言だけ返してきた。
それだけで分かったと伝えるような返信の仕方が、とても格好いいと思った。
それと、俺は改めて練り直して修正したプロットをアップロードして、ロアン兄に指導をお願いすることはしなかった。
何と言っても、俺の目標はロアン兄を超えることだからだ。
すでに彼からヒントをもらっている以上、残りの部分はしばらく彼の力を借りずに進めることにした──できるだけ早く、自分一人でやっていけるようになりたいからだ。
授業中にノートを書き、課題やレポートと格闘し、さらにプロットを書いては確認するという繰り返しの中、数日が過ぎた。
今日は金曜日で、時間は夕方六時に近かった。
俺はある人と会う約束をしていて、今夜は用事があることも端月に伝え、二人は電車を乗り換える途中で別れた。
スマートフォンの地図アプリの案内に従い、俺は一軒のレストランへやって来た。
この店は午後四時半から営業を始め、そのまま深夜二時まで営業しているらしく、アフタヌーンティーのような軽食のほか、夕食や夜食などの料理も提供しているようだった。
俺は淡い青色のガラス扉を押し開けて中へ入った。
店内の空調は少し強めに効いていて、天井のシーリングファンがゆったりと回り、耳元には穏やかな軽音楽が流れていた。
落ち着いた木製の内装で、仕切り板によって空間の広がりも演出されている。
通路の脇にはいくつかの展示棚も置かれており、その中には有名な少年漫画のキャラクターフィギュアが飾られていた。
約束していた人はすでに先に来ていて、窓際の席に座っていた。
彼女は少し濃い青みのある黒髪で、瞳には活気が満ちていた。
白いトップスに緑色のカーディガンを羽織り、下はベージュ色の膝丈スカートで、女子大学生という印象を与えていた。
しかし、彼女の本当の身分は教師である。
曙 庭雪先生。
現在は市立春風高校に勤めており、担当教科は歴史だ。
俺は春高に三年間通い、三年間、歴史の係も務めていた。
主な仕事は、先生が使う教材を運んだり、黒板を整理したり、小テストの準備や成績の記入などをすることだった。
先生との日常的な交流がなかったら、高校時代の俺は間違いなく、もっと人から遠ざかっていただろう。
高校を卒業した後の夏休みにも、俺たちは一度会って、お互いの近況を話した。
今日は俺のほうに先生に相談したいことがあり、ついでに大学生活なども話したかったので、メッセージで先生を誘ったところ、先生も快く応じて時間を空けてくれた。
先生の家には小学生の子供が三人いて、一人は長女、一人は次女、そして一番下は弟だった。
もともと金曜日の夜に誘ったら先生が困るのではないかと思っていたが、先生は、たまには子供を夫に預けてもいいと言っていた。
何と言うか、うん、やはり子供の世話というのはかなり大変なことなのだろう。
今日はメッセージで、授業の時間と交通の都合で、早くてもこの時間にしか来られないと先に先生へ伝えていたが、それでもやはり相手を少し待たせてしまったような気がして、少し申し訳なかった。
俺がゆっくり歩いて近づくと、庭雪先生も俺に気づき、ティーカップを置いて手を振ってくれた。
「外は暑かったでしょう、やっぱり室内が涼しいのはいいわね」
庭雪先生は親しみのある口調でそう言った。
たった短い一言で、しばらく会っていなかった間の隔たりを簡単に壊してくれて、俺の顔には思わず笑みが浮かんだ。
「先生、こんばんは」
「早く座って、ほら、ここには美味しそうなものがたくさんあるわね、みんなの口コミを調べてみたんだけど、この麺とこのご飯、どちらもすごく美味しそうよ」
先生はすぐに顔を下げ、メニューを見ながら、その上に載っている二種類のセットを順番に指差した。
俺は「しまった、買ってきたお土産のお菓子を、どのタイミングで先生に渡せばいいのか全然分からない」と思いながら、先生の言う通り大人しく座った。
仕方がないので、ひとまずバッグとお土産の入った紙袋を隣の席に置くことにした。
先生の向かいに座った後、俺は椅子を少し前に引き、俺もメニューを見始めた。
料理を決めた後、俺たちは呼び出しベルで店員を呼び、注文をお願いした。
俺が注文したのは、チキンのジェノベーゼパスタにフライドポテト、バディニックエッグ、大きなグラスのアイスティーが付いたセットで、先生はビーフクリームドリア、チキンナゲット、大きなグラスのアイスラテを注文した。
メニューを閉じて店員に返した後、俺たちは雑談を始めた。
例えば、春高に新しく入学してきた後輩たちはどんな感じなのか、先生の家の三人の子供たちにどんな面白い出来事があったのか、あるいはどんな騒ぎを起こしたのか、そして大学の教育学部の授業についても話した。
先ほどまでの話題が一段落すると、先生は飲み物を一口飲み、続けて言った。
「ああ、あなたの新作、読んだわよ」
「この前の連休に、喧嘩する子供たちの裁判官を時々やりながら、ベッドに寝転がってのんびり最後まで読んだわ」
その言葉に、俺は少し驚いた。
俺は以前から先生に小説を書いていることを話していて、新作を完成させるたびにリンクを送って読んでもらっていたが、人に読んでもらうだけでも先生の時間をかなり使わせてしまう可能性があると思っていたので、感想を聞くのもなかなか難しかった。
大事なのはそこなんだ……ええと、俺は恥ずかしくなってしまうのだ。
特に、自分が創作した物語についての感想を、誰かから面と向かって言われる時はそうだ。
嬉しいのは当然なのだが、その瞬間には、恥ずかしさもひときわ強くなる……
けれど、最後にはいろいろな展開について話したり、そこから適当に別の話題へ広げたりするのが楽しいと思ってしまう。
作品の感想を話し終えた後、俺の頭の中に端月の姿が浮かんだ。
まるで彼女が俺を応援してくれているようだった。
「先生、実は今日は一つ、先生の許可をいただきたいことがあります」
俺はこの言葉を切り出しとして話し始め、先生は目で続きを促した。
俺は今回の新作が恋愛物語であること、そして今回は自分の実力を確認するための作品でもあり、いわば重要な節目なので、記念として先生を重要な脇役のモデルにしたいと、先生に説明した。
以前、端月とこの話題について話していたばかりだったからなのか、俺はいつもより勇気を出してこのことを話すことができた……とはいえ、先生が本当に承諾してくれるかどうかは分からないので、できる限り自分の考えを伝えるしかなかった。
「モデルとして参考にするとはいっても、現実の状況とすべて同じになるわけではありません」
「今のところの予定では、先生は転職して別の仕事に就いていて、それから家には四人の子供がいるという設定です」
「もし先生が何か不都合だと思うところがあれば、これらの設定はまだ変更しても大丈夫です」
「先生はどう思いますか?」
それに対して、先生はほとんど迷うことなく、すぐに答えた。
「それなら、今と同じように女の子を多めにしてほしいわ」
「うちは女の子のほうがおとなしくて、弟の面倒も見てくれるから」
「だから、女の子を二人か三人に設定してもらえる?」
「あっ、そうすれば四人でちょうど一卓囲んでボードゲームができるから、人数の心配もしなくていいし、なんだかすごくいいわね」
その言葉を聞いた瞬間、俺の胸には温かいものが込み上げてきた。
そこには感動と、深い感謝が含まれていた。
先生が受け入れることを前提に答えてくれたからだ。
端月に打ち明けた時と同じように、俺も今日まで長い間悩んでいた。
まさか二人とも、俺の提案を温かく受け入れてくれるとは思わなかった。
「それなら三姉妹という設定にして、その下に末っ子の弟がいるということにしましょう」
「三人の姉はそれぞれのやり方で弟の面倒を見る、というのはどうでしょう?」
俺は自分の反応がおかしくならないようにしながら言った。
先生は落ち着いていながらも喜びのこもった声で言った。
「まあ、それはあまりにも幸せすぎるじゃない」
「だって──今回書くのは、幸せを追い求める物語だから」
その言葉を口にして、俺は初めて、さっきまで物語の主軸を先生に説明していなかったことに気づいた。
それでも、先生は俺のお願いを受け入れてくれた……先生、本当にいい人すぎるだろ。
俺が「自分の周りにいる人たちは、みんな優しい人ばかりだと感じます」と言った時、庭雪先生は温かな表情で俺を見つめながら言った。
「あなたの物語を読んでいると、逐幸は人にはいろいろな面があることを分かっているんだなって思うわ」
「例えば、少し意地悪な人とか、仲間内でグループを作りたがる人とか、他の人をいじめるような、ちょっと悪い人もいるでしょう」
「うん……そうですね」
俺は首を傾げて困惑を示すと、先生は微笑みを浮かべた。
「それなら、このことはとても簡単よ」
「自分の周りに優しい人がたくさんいると思えるのは、優しい人だからこそ、周りの人それぞれの優しさに気づくことができるからよ」
その言葉を前に、俺は数秒間呆然とした……そしてさらに数秒が過ぎても──どう反応すればいいのか分からなかった。
そこで思わずテーブルの上のアイスティーを手に取り、一口すすって、自分を少し冷ますことにした。
「実はもう一つ、先生に報告したいことがあります」
「ええと、その、日和教育学院に合格してから、俺、彼女ができました……」
その言葉に対して、先生はやはりすぐに驚いた表情を浮かべた。
「え、ええっ? 言いたいことはいろいろあるけど、まずはおめでとう!」
「ついに、うちの逐幸の良さを分かってくれる人が現れたのね」
その言葉に、俺の心の中が少しくすぐったくなった。
すると先生は突然、不満そうなふりをして「どうしてもっと早く言わなかったの? おかげでさっき他の話題を話しすぎちゃったじゃない。今からじゃもう三時間かけて詳しく聞くこともできないわ」と言った。
いやいや、三時間もあれば、俺が知っていることを全部聞けるでしょう?
俺が心の中でツッコんでいると、先生は何かを思い出したように尋ねた。
「ああ、でも、あなたが高校生の時、あの女の子が好きだったんじゃなかったかしら……ええと──なんとか月っていう名前だったと思うけど、フルネームは忘れちゃったわ」
「うーん……でも、確かに大学ではもっと女の子に出会うでしょうし、やっぱり時機の問題でもあるのかしらね」
その驚くべき発言を聞き、俺は思わず「え?」と声を漏らした。
「ちょ、ちょっと待ってください、先生」
「高校の時……俺、こんな話を先生にしたことは一度もなかったと思うんですけど?」
すると先生はようやく記憶の中から該当する名前を掘り出したらしく、困惑したように首を傾げた。
「え? 言ってなかったかしら?」
「私もあなたが話したかどうか忘れちゃったけど、同じクラスの繋 端月のことをすごく気にしていたのは覚えているわ」
「時々、一瞬でも授業から意識が外れると、あなたは彼女のほうを見ていたもの」
「そういえば、何度か授業の終わりが近づいた頃、私が授業を早く進めすぎて、雑談で時間を潰し始めた時に、彼女があなたのほうをちらっと見ていたこともあったわね」
「ああ、それからあの時もそうだったわ」
「あなた、一度、テストの答案に名前を書くのを忘れたことがあったでしょう?」
「でも、その時にはみんなもう答案を提出していて、彼女が最後の列の席で答案を集める係をしていたの」
「自分が集めた答案の束の中に名前が書かれていない答案があることに気づくと、すぐにそれがあなたの答案だと私に教えてくれたわ」
「それで、私はあなたに名前を書くのを忘れないようにこっそり注意したのよ」
「ああ……そのことは覚えています」
「確かに一度、先生から答案に名前を書くのを忘れないように注意されましたけど、その前にそんな経緯があったことは知りませんでした……」
俺の頭の中は次々と新しい情報で埋め尽くされていき、先生は続けて言った。
「まあ、高校のことはひとまず置いておきましょう」
「今はあなたの大学の彼女の写真を見せてもらおうかしら」
ここまで言われると、俺は突然、少し言い出しにくくなった。
しかし、最後には俺も認めるしかなかった……繫端月は俺と同じ大学に通っていて、俺たちはその後、正式に付き合い始めたのだと。
そのことを聞くと、先生は思わず口元を手で覆い、さらに顔を横へ向け、肩を揺らしながら笑いが止まらなくなった。
どれくらい経ったのか分からないが、先生はようやくなんとか笑いを抑え、大声で俺にツッコんだ。
「もう、あなたたち二人、とっくに付き合っていてよかったでしょう」
当時の高校での状況を考えれば、それは難しかったのだが、それでも俺は恥ずかしさでいっぱいになりながら、先生の祝福を受け入れた。
俺たちはゆっくりと料理を食べ終え、心地よい時間を過ごした。
お腹を満たしただけではなく、俺の頭の中も高校時代のさまざまな恥ずかしい記憶でいっぱいになった。
今夜はなかなか眠れそうにない……
そんな感慨を抱きながら、俺と先生はそれぞれの持ち物を手に取り、顔を上げて互いを見ながら言った。
「それじゃあ、また今度、時間がある時に会いましょう」
「はい、ありがとうございました、先生」
会計を済ませ、俺たちは一緒に店の外へ向かって歩いた。
しかし、その時、先生が突然振り返り、俺の手に持っていた紙袋を指差して言った。
「そういえば、それって端月に選んだプレゼントなの?」
あ、ああ──!
俺は心の中で叫び、慌てて首を横に振った。
「ち、違いますよ!」
「それは……今日、先生に渡すためのお土産です……」
俺のほうから先生を誘ったのだから、少しでも気持ちを伝えたいと思っていた。
でも、これからは会ったその時に、自然に物を渡すようにしよう──俺はそう心に決めた。
先生と一緒に近くの駐車場まで歩き、先生と別れた後、俺は一人で駅へ向かう通りを歩いた。
最後にまた端月の名前が話題に出たせいで、今の俺は無性に恋人と話したくなり、彼女の声を聞きたくなった。
頭上の月を見上げると、夜空の中で、その月もどこか寂しそうに見えた。




