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第三章 明月(1)

カランカランという澄んだ鈴の音とともに木製の扉が押し開けられ、一組の夫婦が子供を連れて、ベビーカーを押しながらこのブランチ店へやって来た。


「いらっしゃいませ。三名様でよろしいでしょうか?」


客が「はい、席はありますか」と答えたあと、俺は営業用の親しみやすい笑顔を浮かべて言った。


「ございます。こちらへどうぞ。」


客を空いている席まで案内したあと、子供用の椅子が必要かどうかを確認し、それから通常の椅子を子供用の椅子へ取り替えるのを手伝った。


「こちらが当店のメニューです。お決まりになりましたら、テーブルにあるQRコードからオンラインでご注文いただくか、前方のカウンターまでお越しください。また、本日は連休中で店内が混み合っているため、お料理の提供が少々遅れる場合がございます。あらかじめご了承ください。」


客にメニューを渡したあと、俺はレジへ向かい、店内が満席になったことを同僚へ伝え、店内での飲食を希望する客が来た場合は少し待ってもらうよう伝えた。


今日は月曜日ではあるものの、中秋節の連休の最終日にあたるため、午前九時にもならないうちに店内はすでに満席になっていた。


「逐幸(つぐゆき)、料理を出すのを手伝って。」


俺は厨房の配膳口へ向かった。かつ姉が客の注文したセットメニューと飲み物を四角いトレーの上に整然と並べ、手際よくハーブの調味料入れを取り上げ、パスタの上にパセリをそっと振りかける。完成すると、マスク越しに言った。


「十二番テーブル、運んでいいよ。」


俺はそれ以上返事をせず、すぐにトレーを持ち、慌てることなく指定されたテーブルの客の前まで歩いていった。


「お待たせいたしました。お料理をお持ちしました。こちらがご注文の料理で──」


料理を届け、空いたテーブルを片付けたあと、俺は洗うのを待っている食器を持って厨房へ戻り、すでに少し水を張ってあるシンクへ食器を入れて水に浸した。


「今のうちに、お皿を全部洗っておこう。二人でやったほうが早いから。」


桐 千美(きり かつみ)さん──つまり、かつ姉から指示を受けたので、俺は左側のシンクへ向かい、かつ姉は右側のシンクへ向かった。俺たちは長い蛇口の右側にある吐水レバーを回し、水を出すと、澄んだ水が吐水口からザーザーと流れ出した。


プラチナ色の髪をポニーテールに結び、整った顔立ちは大学生のような印象を与えるが、以前彼女と話したときによれば、本人は三十代前半だという。俺よりずっと年上の大人だとは、とても想像できなかった。


かつ姉はこの「SUNRICE」というブランチ店の店長だ。それにもかかわらず、普通の従業員と同じように自ら洗い場へ入って食器を洗い、ただ立って指示を出しているだけではない。彼女の指示は明確で、店員に対しても敬意を持って接しているので、彼女の下で働いていても不快に感じることはなかった。


俺は食器を洗いながら、突然客から助けを求められても対応できるよう、視界の端で店内の様子にも注意を向けていた。ほかにも二人の従業員がいるとはいえ、かつ姉を含めても全部で四人しかいないため、今日の押し寄せる客の波に対応するのは、正直なところ少々厳しかった。


「どうやら逐幸は、もうすっかり百戦錬磨の店員になったみたいだね。安心して。もう助っ人は見つけてあるから、あとでその人が来て、洗い物を手伝ってくれるよ。今はもう少し頑張ろう。」


このとき、かつ姉は一時的にマスクを外し、ときどき店内の様子を確認しながら、非常に流れるような速さで確実に食器や箸を洗い、すすいでいた。それによって、俺たちの間にはまだかなり大きな差があることを感じさせられた。


「助っ人……前に来てくれたあのお姉さんですか?」


現在の飲食店の人手不足の状況では、休日の客のピーク時に、追加で人を頼んで応援に来てもらうことがよくある。前回やって来たのは、かつ姉が以前雇っていた従業員だったらしく、その人は空いた時間に俺と以前の仕事の経験について少し話してくれた。俺もまた働きに来てくれたら、機会があればまた話をして、見聞を広げられたらいいなと少し期待していた。


「今回はあの人じゃないよ。今日来るのは、私が以前働いていた頃の仲間。」


「仲間……? 当時一緒に起業した人ですか?」


俺はできるだけ丁寧かつ確実に皿についた油汚れを落とし、食器用洗剤をつけて白い泡に包まれた皿をシンクの隅に重ねていった。


「うん……まあ、だいたいそんな感じかな。あ、そういえば君には話したことがなかったね。私、以前は漫画アシスタントをしていたことがあるの。そして今日手伝いに来てくれるのは、昔一緒に漫画を描いていた先生だよ。」


「えっ? かつ姉って、漫画を描けるんですか?」


──うん。でも、私はあくまで手伝っていただけだよ。かつ姉は朝日のような笑みを浮かべ、小さな金色の菱形のピアスがわずかに揺れた。彼女は少し間を置いてから続けた。


「私はこの道を全身全霊で歩むことはできなかった。でも、そうできる人たちのことは心の底から尊敬しているよ。だって、自分の夢や目標に向かって、どんな困難も乗り越えて、前へ進んでいくんだから。思わず応援したくなっちゃうよね。」


そう言われて、俺自身も励まされたような気がした。俺は今まで、かつ姉に小説を書いていることを話したことはなかった。まさか、かつ姉も創作やほかの創作者たちと繋がりがあるとは思わなかった。


「その漫画家の先生って、どんな人なんですか?」


このときには、俺はすでにシンクの中の食器を洗い終え、清水ですすぎ始めていた。


「なんて言えばいいのかな? 漫画のためなら、ひどい風邪を引いていても席に座って描き続けようとする馬鹿だよ。それに、自分の憧れのためなら、好きな小説家の先生のサインを買うために、その場で五、六枚の千元札を取り出すような人。こいつ、ちょっと鈍いところがあるんだけど、最近はどうやら彼女とうまくいっているみたい。頭の中には創作以外何も入らないと思ってたんだけどね。」


かつ姉はくすくすと笑った。そのときの彼女は、とても嬉しそうに見えた。俺がかつ姉にその漫画家の先生についてもっと尋ねようとしたところ、かつ姉はすでに水を止めていた。シンクの中はすっかり綺麗になっていた。かつ姉は綺麗な布巾で洗った食器を拭き始め、そのまま尋ねてきた。


「そういうことなら、逐幸はどうなの? 高校の夏休みからこの店でバイトを始めたんだよね。今はもう大学生になったんでしょう。どう? 好きな女の子はできた?」


「え、えっと……うん。三週間前、高校の頃に二年間片思いしていた女の子と付き合い始めました──」


「おお! 本当なの? おめでとう。ちゃんと大切にしてあげるんだよ。」


かつ姉の瞳は驚きと喜びの光をきらめかせ、温かな口調で言った。


このとき俺も食器をすべて洗い終え、別の綺麗な布を取り上げて皿を拭き始めた。


「それは当然でしょう。それに……自分が好きな人なら、自然と大切にしたいと思うものじゃないですか……」


俺の答えを聞くと、かつ姉は口元を上げ、「初々しいね」と言ってから、さらに尋ねてきた。


「彼女の写真、見せてもらってもいい?」


まるで俺に断る余地を与えないかのように、かつ姉は手を伸ばしてこちらの食器を取り、拭き始めたので、俺たちはすぐにそのときの仕事を終えた。


彼女の視線が期待に満ちていたので、俺は仕方なくスマートフォンを開き、宿泊行事のときに観光バスの中で撮った端月とのツーショット写真を見せた。すると──


「あら。可愛い女の子だね。優しそうにも見える。うちの逐幸が、道端の変な女に酷い目に遭わされる心配はなさそうだね。」


「え、写真を見るだけで分かるんですか……あ──!」


俺がそう言うと、かつ姉は計画がうまくいった小悪魔のような表情を浮かべ、次の言葉を口にした。


「君の言う通り、確かに今の私にはまだ本当に確かめることはできないからね。だから、今度暇なときに彼女を店に連れてきて、私自身の目で確かめさせてよ。約束だからね。」


そう言い終えると、かつ姉はまるで俺に断ることを許さないかのように、「外の様子を見てくるね」と言い、そのまま厨房を出ていった。


し、しまった……! いや、全部俺自身が相手につけ込む隙を与えたせいだ。人のせいにはできない。


でも、かつ姉になら、確かに端月を紹介してみたいと思う。


少し恥ずかしいけれど……それでも、かつ姉の言葉には俺への祝福が満ちていることが、俺にはよく分かっていた。


その後の一日中、店内は今と同じように満席の状態が続いた。


そして、かつ姉が今日来ると言っていた漫画家の先生は、見た目が怖く、凶悪そうな印象を与える人だったが、俺たちは空いた時間に何作品もの漫画について話をした。それは、今日の仕事の疲れとは別に、楽しいと思える時間だった。


たまにまた手伝いに来てくれたらいいのに。そういえば、彼のペンネームを聞くのを忘れていた。今度機会があれば、聞いてみよう。




バイトが終わり、家に帰った俺はシャワーを浴びてから机の前に座った。机の上にあるデスクトップパソコンの電源ボタンを押してゆっくりと起動させ、それから宿泊行事で使った旅行バッグの中からクリップボードとコピー用紙を取り出し、机の上にあったシャープペンシルを手に取って、空白の部分へほかの細々としたアイデアを書き続けた。


俺はそれらのアイデアをパソコンの文書に整理し、以前書いていた、物語のプロットが入ったファイルを開いた。別の考え方が浮かんだので、新しい文書を作成し、カタカタとキーボードを打ち始めた。


高校時代……か?


その過程で、俺は思わずかつ姉の言葉を思い出した。


高校三年生の冬休み、大きな試験を終えたあと、三学期を迎えた。


三学期が終わりに近づいた頃、俺はかつ姉の店へアルバイトの面接を受けに行き、無事に合格した。


このときにはすでに試験の合格発表があり、日和教育学院への合格が決まっていたので、俺はのんびりと高校三年生の三学期の授業内容を学び、その後できる限りの時間を創作に費やしていた。


小説投稿サイトで自分の書いた物語を発表したとき、俺はロアン兄と知り合った。


俺たちが友達になったあと、夏休みに入った。その頃の俺はバイトをしながら創作し、さらにさまざまな創作技法を学んでいた。


「分かった。君が言っているのは、だいたいあれのことだろうね。俺の考えとしては……」


豊富な創作経験を持つロアン兄は、チャットルームで一度も愚痴をこぼすことなく、いつも俺が尋ねた問題に真剣に答えてくれた。


あるとき、俺たちは三日間連続で創作技法について深く議論し、研究した。俺でさえ、自分のために毎日数時間を費やし、連続して創作についての議論や雑談に付き合ってくれる人がいるなんて信じられなかった。そしてその後、話の流れに乗って、俺は思わずこう言った。


「今はまだ無理だけど、いつか──俺はロアン兄を超える。」


俺の第一歩の目標は、まず自分の国の頂点に立つことだった。その次に、自分の実力がもう一つの国のトップにいるロアン兄を上回るようにする。


過去の会話から、ロアン兄には必ずしもこの分野で頂点に立たなければならないという執念がないことは分かっていた。それでも、この言葉は経験豊富な創作者の目からすれば、かなり大言壮語に聞こえただろう。


それでも──


「おう。じゃあ、もっと早く動けよ。俺が完全に執筆を諦める前に、いつでもかかってこい。早く俺を超えてみろ。」


ロアン兄はそれでも俺を前へ押し出し続けた。


何の義務もない。


少しの嘲りもない。


まして、俺の好感を得るためでもない。


ただ先輩として、後ろから追いかけてくる後輩を励ましていた。


俺たちは「約束」という言葉を口にしなかった。でも、俺にはよく分かっていた──これが約束なのだ。


創作は自由なものであり、作品そのものに優劣をつけることはできないと考える人は多い。


だが、それはただの誤解に過ぎない。さまざまな基準はあるものの、物語の技法、テーマの深さ、企画、全体構成の完成度は比較し、評価することができる。


俺がしていることは、自分の作品と、自分が読んできたさまざまな作品を照らし合わせ、自分の能力を比較しているだけだ。言ってしまえば、これは自分の頭の中にある基準へ挑む戦いであり、自分自身と遊ぶゲームでもある。


たとえこれが自分でそう思っているだけのゲームだったとしても、自分の能力によって、自分が「神作」と呼ぶに値すると考える作品を創り出し、今まで自分が見てきたあらゆる時代の作品を超えることができたのなら、それこそが俺の考える「世界一」なのだ。


そんな考えを抱く者こそが、旭逐幸、いや、「逐夜(つぐや)」という名の創作者だった。


そして彼は、いついかなるときも──挑戦者だった。


目の前にいる強敵へ挑み、彼らを打ち倒せるまで、自分の能力を高める方法を考え尽くす。


もし一時的に頂点と呼べる場所まで登ることができたなら、過去の自分を打ち倒す。


絶えず前へ進み、絶えず自分を超えていく。


それこそが、創作を人生の意味とする創作者(俺)の生き方だった。





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