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第二章 両端(7)

胸の内から今にも溢れ出しそうなときめきを抱えながら、俺たちはもうしばらくシャボン玉で遊んだ。お互いに少し落ち着いてから、俺たちはみんなと合流することにした。


俺たちが長椅子から立ち上がろうとしたとき、少し離れたところに人影が現れた。


その人は……


俺がそう考えていると、その人はすでに石段を上って、俺たちのいる廊下まで来ていた。奏 湖櫻(かなで みさくら)先輩だった。


「やあ。あまりにも派手にやったせいで、まだ余韻が残っているって聞いたよ。二人とも大丈夫? このあともまだ遊べそう?」


栗色の長い髪は鵞黄色の灯りに照らされ、桜色の瞳はいつの間にか人に活力を与えていて、その顔には柔らかな笑みが浮かんでいた。まるで、森の奥深くに隠された、陽の光に照らされた午後の湖を見ているかのようだった。


「もう大丈夫です。俺たちはこれからみんなと合流するところです。先輩はわざわざ俺たちを探しに来てくれたんですか?」


俺は端月(はづき)と顔を見合わせ、彼女の様子を確認してから先輩に答えた。


「うん、そうだよ。二人の様子を見に行ってくれる人を探していたから、私が立候補したの。二人に話したいことがあったから。」


話したいこと……?


俺の頭に困惑が浮かんだ。そのとき、先輩は少し俯いて言った。


「まずは──ごめんね。どうやら二人を喧嘩させちゃったみたいだから。同じ女性として、どんな理由も言い訳に聞こえるって分かっているから、直接謝ることにしたの。許してくれる?」


「いえ……先輩……」


端月が呟いた。まるで彼女を止めようとしているかのようだった。だが、自分が確かに先輩の言ったような気持ちを抱いていたことも否定できないようで、続けて言った。


「私たちはただ……私と逐幸(つぐゆき)は、まだお互いにきちんと向き合えていなくて、相手のことを十分に理解できていないだけです……それに、さっき先輩は私たちが体験活動を始める前に、もう謝ってくれました。だから、顔を上げてくださいませんか?」


「ありがとう……えっと──後輩ちゃん?」


先輩は顔を上げたものの、突然どう答えればいいのか分からなくなった。端月は思わず微笑んだ。


「私の名前は繋 端月(つなぎ はづき)です。奏湖櫻先輩、私たちのことを気にかけてくださってありがとうございます。これからも先輩にご迷惑をおかけするかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。」


「いやいや、そんなにかしこまらなくていいよ。うちの学科には、こんなに礼儀正しい人はほとんどいないから、びっくりしちゃったよ。それじゃあ……端月、これからもよろしくね。」


湖櫻先輩は礼を返したあと、俺へ視線を向け、真摯で誠意のこもった表情を浮かべて言った。


「逐幸、私たちが危機に陥ったときに助けに入ってくれてありがとう。君のおかげで、試胆活動を無事に終えることができた。本当にありがとう。」


「俺のほうこそ、いろいろなことを学ばせてもらいました。手伝わせてくれてありがとうございました。それに、先輩たちも後から俺のお願いを聞いてくれて、好きな人と一緒に活動に参加することができました。すごく怖い思いはしましたけど、俺たちにとって素敵な思い出もできました。」


──本当に優しい人なんだな。


湖櫻先輩は俺の言葉を聞いて、そっと呟き、端月へ目を向けた。端月は小さく頷き、それを見て俺は少し恥ずかしくなった。


「それじゃあ、連絡先を交換してもいいかな? これから連絡する必要があるとき、そのほうが便利だから。」


先輩の提案を受け、俺たちはそれぞれスマートフォンを取り出した。その途中で再び端月を見ると、彼女は先輩が気づいていない隙に頷いた。


同じデジタル時代の住人である俺たちは、すぐに友達登録を済ませた。


「よし、それじゃあ早く行こうか。私が二人にダンスを教えてあげるよ。これは私の百ある特技の一つだからね。」


先輩は冗談めかした口調で言い、残り九十九個の特技はいったい何なのか、思わず気になってしまった。


そう言いながら、彼女は廊下の反対側へ歩き始めたが、二歩ほど進んだところで何かを思い出したかのように振り返り、端月へ目を向けた。


「あ、そうだ。ちゃんと彼の心を掴んでおいてね。じゃないと、いつか私がその人を直接奪っちゃうかもしれないよ。」


端月は先輩の視線を正面から受け止め、素直に答えた。


「先輩にそんな機会は与えません。忠告、ありがとうございます。」


端月の反応を見て、先輩はくすくすと笑い、言った。


「そうなんだ。じゃあ、安心したよ。」


彼女は慈愛に満ちた眼差しで俺たちを順番に見つめ、それから振り返って再び歩き始めた。


どういうわけか、これから俺たちはこの人と長い付き合いになりそうな気がした。


そんな未来への想像を抱きながら、俺は端月の手を取った。


その後、俺と端月はダンスを踊った。二人とも最初はかなりぎこちなかったが、先輩の指導によって端月はどんどん上達していった。一方、俺自身は、運動に関しては幼い頃から身体の動きがずっと不器用だったので、急激に上達するはずもなかった。それでも、恋人の手を取り、リズムに合わせて動きながら、間近で彼女の表情を見つめられることが、本当に嬉しかった。


ダンスパートナーを交換して踊ったときは、なぜか背中がぞくぞくするような感じがして、俺がどんな表情をすればいいのか分からないこともあり、他学科のダンスパートナーも気まずそうな笑みを浮かべていた。なんだか相手に申し訳ない気がした。


次の曲では、俺は奏湖櫻先輩と一緒に踊った。彼女はやはり以前宣言していた通り、動きがとても優雅で、俺のような初心者と踊るのは少しもったいないなと思わずにはいられなかった。そして彼女の顔を見つめながら、俺は何気なく話題を探し、ダンス以外に残り九十九個の特技は何なのか尋ねたところ、「私と付き合ったら、一つずつゆっくり教えてあげるよ」と返された。


端月と彼女のダンスパートナーがちょうどこちらへ近づいてきたため、先輩は俺にとても可愛らしく、それでいて殺気に満ちた笑顔を向けた。俺は心の中で、先輩、絶対わざとだろ、とツッコミを入れながら、なんとか誤魔化そうとした。


曲が終わり、焚き火はまだゆっくりと燃え続けていた。


俺は顔を上げ、夜空を見上げた。今は夜の九時近くだ。


地面からの明かりのせいで空の星はよく見えないが、俺にはそれらがそこにあることが分かっていた。


翌日、俺たちは午前中のアトラクションを終え、午後には活動会場で宿泊行事中に最高得点を獲得した組を発表し、勝利した組と、真剣に活動へ参加した自分たちへ拍手を送った。活動もこれで一区切りとなった。


帰りの観光バスでは、最初のうちはみんながまだ燃え尽きていない情熱を消費するかのようにカラオケを歌っていたが、いつの間にかバス中の全員が眠っていた。もしかすると、低く唸るエンジンの音が、安心させてくれる子守歌になったのかもしれない。


──おーい、そこのカップル、もう着いたぞ。それとも、車内に残ってそのまま寝続けて、運転手のお兄さんが仕事を終えるときに起こしてもらいたいのか?


曜光の呼び声で、俺と端月はゆっくりと目を覚ました。すると、俺たちの頭が左右から寄り添うように重なっていたことに気づいた。曜光について前方のドアからバスを降りると、運転席に座っていた運転手さんまで俺たちに親指を立ててみせた……えっと、これはどういう意味なんだ?


学校の近くの歩道に足を踏み入れ、しっかりとしたコンクリートの地面を感じたそのとき、俺はようやく、この旅が終わりを迎えたことを実感した。




俺は端月と一緒に地下鉄に乗り、彼女を家まで送り届けたあと、ゆっくりとした足取りで駅へ戻り、自分の家へ帰った。


母さんは今日はシフトが入っていたため、家には誰もいなかった。


俺は着替えを洗濯かごに入れ、先にシャワーを浴びてから、洗濯機のある裏のベランダへ向かい、洗濯物を洗濯ネットに入れて洗濯機へ放り込んだ。


スイッチを入れ、給水口の蛇口をひねって開ける。洗濯機の投入口付近にある、先ほど洗剤と衣類用漂白剤を入れた小さなケースに清水が注がれ、ザーザーと流れる水が槽の中の衣類をゆっくりと水に浸していった。


身体はまだ少し疲れていたが、それでも掃除機を取り出して家の中の埃を一通り掃除し、それから水を入れたバケツに床用洗剤を入れ、前のベランダから裏のベランダまでモップをかけた。その途中、一区切り進むたびにモップをバケツに入れて汚れを洗い流し、柄を押さえて底部を回転させ、余分な水を絞ってから、まだ掃除していないタイルの床を拭いていった。


それが終わると、トイレの鏡面、洗面台、床、壁のタイルを綺麗に磨き、もう一度シャワーを浴びた。それから洗濯機の中から洗い終わった服を取り出し、一着ずつハンガーに掛けて、前のベランダへ持っていって干した。


これらをすべて終えてから、俺はようやく、床を拭く前に雑巾で拭いておいたソファへとへたり込んだ。


テレビ台の上の時計は九時十五分を示していた。玄関から時間通りに物音が聞こえてきた。一分後、ドアが開いた。


仕事から帰ってきた母さんは、ソファに座っている俺を一目見て、それから周囲を見回し始めた。その間、扇風機がうーんと運転音を立てていた。普段ならうるさいと思うのだが、今はむしろ、この音がもう少し大きければいいのにと思った。


「ただいま。」


「うん。」


母さんが簡単に一言言い、俺も控えめに返事をした。俺は様子を窺うかのようにいつもの場所に座ってスマートフォンをいじっていたが、実際にはソーシャルメディアの内容など一文字も頭に入ってこなかった。


七、八分ほど経った頃、母さんが前のベランダを見回っているときに俺を呼び、物干し竿を掛ける向きが逆だから片付けにくいと言ったが、俺は前回、母さんに言われた通りにしたことを覚えていた。そしてその後、逆向きのほうが片付けやすいと言われたのだ。


続いて母さんは、洗濯は自分が帰ってきてからすべきだった、そうすれば今夜は洗濯かごを空にしておけたのに、と付け加え、さらに床を拭くときに床用洗剤を使ったかどうかを再度確認した。そうでなければ綺麗に拭けないということだった。


母さんと口論したり、事情を説明したりしても何の得にもならないので、俺はただ分かったと伝えた。母さんがすべてのことを一通り話し終えてから、ようやく部屋へ戻ってシャワーを浴びる準備をした。俺は逃げるように自分の部屋へ戻った。


部屋の中で、何もしたくなかったので、俺はまたスマートフォンの画面を点けた。


そのとき、端月からメッセージが届いた。


『今回は本当に楽しかった。すごく嬉しかった。』


俺は彼女の文字を何度も読み返し、口元も自然と柔らかくなった。


『うん。今度また一緒に遊ぼう。俺もまた君と一緒に遊べるのを楽しみにしてる。』


『明日はバイトもあるから、今夜はあまり話せないの。先に寝るね。』


『おやすみ。』


俺は上の返事を打ち終えると、しばらくスマートフォンの画面を見つめ、それからもう一言打った。


『端月……俺、君のことが一番好きだ。』


彼女の名前まで打つ必要はなかったようにも思う。それでも、そうすることで少しだけ勇気がもらえるような気がした。


俺はスマートフォンを充電ケーブルにつなぎ、コンセントの電源スイッチを入れた。


それから部屋の電灯を消し、暗闇の中で布団へ潜り込んだ。


すぐに、疲労が俺を夢の中へと連れていった。





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