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第17話 葵の母ソルナ

「ガンメル村長……」


ヨーデルは重い口を開いた。


「リムラ村で起きた、あの悲惨な事件……。


これは、まだ確証のない推測に過ぎません。


しかし……私は、葵ちゃんの母親――ソルナが関係しているのではないかと考えています」


「ソルナ……」


ガンメルは眉をひそめた。


「確か、預言者アブラハ様が庇護されていた女性だったな。


葵を出産した後、突然姿を消したと聞いているが……」


「ヨーデル」


ガンメルは真剣な表情で問いかけた。


「ソルナとは、一体何者なのだ?」


ヨーデルは静かに答えた。


「ソルナは……妖精族の中でも特別な地位を持つ守護者でした。


12年前、彼女はリムラ村へ訪れ……


その1か月後に、葵ちゃんを出産したのです」


「そして……」


ヨーデルは少し間を置いた。


「悪根の呪術者達は、生まれたばかりの葵ちゃんの存在を知り……


その力を恐れ、リムラ村を襲ったのではないかと……」


「本当に……そんな理由で村を?」


ガンメルの表情が険しくなる。


「何故、ひとりの少女をそこまで恐れるのだ?」


「それは……」


ヨーデルは深く息を吸った。


「村長もご存じの通り、悪根の呪術者達と妖精族の守護者達は、長きに渡り争い続けてきました。


彼らにとって最大の脅威は、妖精族の指導者である預言者アブラハ様です。


しかし……」


ヨーデルは静かに続ける。


「葵ちゃんの母ソルナは、それ以上に特別な血筋を持つ存在なのです」


「特別な血筋……?」


「はい。


アブラハ様のお話では……


ソルナの一族は、遥か昔……


人類が神の怒りに触れ、大洪水によって滅びかけた時代に、唯一生き残った一族の末裔だと言われています」


その言葉に、部屋にいた全員が息を呑んだ。


「彼らの故郷は、大陸アシュル。


そこには、誰も立ち入ることを許されない神聖な山……


『アララテ山』があります」


「まさか……」


ルスタが小さく呟いた。


「そうです」


ヨーデルは頷いた。


「その山頂には、伝説の神具……


『ノアの箱舟』が眠っていると言われています」


「ノアの箱舟……」


「それは、世界が再び滅びの危機を迎えた時……


人々を救う最後の神具になる可能性を秘めた存在。


だからこそ、悪根の呪術者達は恐れているのです」


ヨーデルは葵の姿を思い浮かべた。


「そして……今回、確信に変わった出来事がありました」


「何だ?」


「葵ちゃんが、サラさんの料理に含まれていた……


『妖精の涙』に反応したことです」


サラが静かに頷く。


「妖精の涙は、ただの香料ではありません。


妖精族の秘められた力を目覚めさせる鍵なのです」


ヨーデルは続けた。


「つまり……


葵ちゃんは妖精族の守護者となる運命を持っている。


そして彼女を通して……


大陸アシュルに眠る『ノアの箱舟』が、長い眠りから目覚める可能性があるのです」


しばらく沈黙が続いた。


「もし、それが事実なら……」


ガンメルが低い声で言った。


「1年前のリムラ村の事件など、比較にならないほど大きな争いになるぞ」


「その通りです」


ヨーデルは頷いた。


「我々が属するスンツヴァル王都は、歴代の巫女様を守護してきた国。


しかし……」


「隣国ギルデロイ王都。


そして『赤い星』と呼ばれる組織が暗躍するアーサー国……」


「この二つの勢力は、決して油断できません。


いつ大きな争いが起きても不思議ではない状況なのです」


再び静寂が訪れた。


「こんな時代だからこそ……」


ルスタが静かに口を開いた。


「巫女様が誕生してくだされば……」


「初代巫女様が現れたのは、今から2000年前。


そして時代が混乱するたびに、巫女様は人々の希望として現れました」


「しかし……」


ルスタは悲しそうに目を伏せる。


「ここ150年……


巫女様は一度も現れていません」


「もし妖精族を導く巫女様が誕生されたなら……


この世紀末の時代において、我々の希望となるはずです」


「そうだな……」


ガンメルは空を見上げた。


「我々は祈るしかない。


新たなる巫女様の誕生を……」


しかし――


彼らはまだ知らなかった。


その目の前にいる少女こそ……


伝説の巫女。


世界を救う使命を持つ――


『最後の巫女』であることを。


□◆□◇◆


「ガンメル村長」


ヨーデルは決意した表情で言った。


「葵ちゃんは、妖精族の守護者の血を受け継いでいます」


「そして現在、悪根の呪術者達が動いている以上……


このまま父親と暮らし続けることは危険です」


「例え葵ちゃん自身が望んだとしても……」


「再びリムラ村の悲劇が起きる可能性がある以上……


我々が彼女を守らなければなりません」


ガンメルは心配そうに尋ねた。


「しかし……父親のダンが納得するでしょうか?」


ヨーデルは静かに笑った。


「その問題については……考えがあります」


「明日、直接話をつけに行きましょう」


葵を守るための戦いが――


静かに始まろうとしていた。

「ガンメル村長……」


ヨーデルは重い口を開いた。


「リムラ村で起きた、あの悲惨な事件……。


これは、まだ確証のない推測に過ぎません。


しかし……私は、葵ちゃんの母親――ソルナが関係しているのではないかと考えています」


「ソルナ……」


ガンメルは眉をひそめた。


「確か、預言者アブラハ様が庇護されていた女性だったな。


葵を出産した後、突然姿を消したと聞いているが……」


「ヨーデル」


ガンメルは真剣な表情で問いかけた。


「ソルナとは、一体何者なのだ?」


ヨーデルは静かに答えた。


「ソルナは……妖精族の中でも特別な地位を持つ守護者でした。


12年前、彼女はリムラ村へ訪れ……


その1か月後に、葵ちゃんを出産したのです」


「そして……」


ヨーデルは少し間を置いた。


「悪根の呪術者達は、生まれたばかりの葵ちゃんの存在を知り……


その力を恐れ、リムラ村を襲ったのではないかと……」


「本当に……そんな理由で村を?」


ガンメルの表情が険しくなる。


「何故、ひとりの少女をそこまで恐れるのだ?」


「それは……」


ヨーデルは深く息を吸った。


「村長もご存じの通り、悪根の呪術者達と妖精族の守護者達は、長きに渡り争い続けてきました。


彼らにとって最大の脅威は、妖精族の指導者である預言者アブラハ様です。


しかし……」


ヨーデルは静かに続ける。


「葵ちゃんの母ソルナは、それ以上に特別な血筋を持つ存在なのです」


「特別な血筋……?」


「はい。


アブラハ様のお話では……


ソルナの一族は、遥か昔……


人類が神の怒りに触れ、大洪水によって滅びかけた時代に、唯一生き残った一族の末裔だと言われています」


その言葉に、部屋にいた全員が息を呑んだ。


「彼らの故郷は、大陸アシュル。


そこには、誰も立ち入ることを許されない神聖な山……


『アララテ山』があります」


「まさか……」


ルスタが小さく呟いた。


「そうです」


ヨーデルは頷いた。


「その山頂には、伝説の神具……


『ノアの箱舟』が眠っていると言われています」


「ノアの箱舟……」


「それは、世界が再び滅びの危機を迎えた時……


人々を救う最後の神具になる可能性を秘めた存在。


だからこそ、悪根の呪術者達は恐れているのです」


ヨーデルは葵の姿を思い浮かべた。


「そして……今回、確信に変わった出来事がありました」


「何だ?」


「葵ちゃんが、サラさんの料理に含まれていた……


『妖精の涙』に反応したことです」


サラが静かに頷く。


「妖精の涙は、ただの香料ではありません。


妖精族の秘められた力を目覚めさせる鍵なのです」


ヨーデルは続けた。


「つまり……


葵ちゃんは妖精族の守護者となる運命を持っている。


そして彼女を通して……


大陸アシュルに眠る『ノアの箱舟』が、長い眠りから目覚める可能性があるのです」


しばらく沈黙が続いた。


「もし、それが事実なら……」


ガンメルが低い声で言った。


「1年前のリムラ村の事件など、比較にならないほど大きな争いになるぞ」


「その通りです」


ヨーデルは頷いた。


「我々が属するスンツヴァル王都は、歴代の巫女様を守護してきた国。


しかし……」


「隣国ギルデロイ王都。


そして『赤い星』と呼ばれる組織が暗躍するアーサー国……」


「この二つの勢力は、決して油断できません。


いつ大きな争いが起きても不思議ではない状況なのです」


再び静寂が訪れた。


「こんな時代だからこそ……」


ルスタが静かに口を開いた。


「巫女様が誕生してくだされば……」


「初代巫女様が現れたのは、今から2000年前。


そして時代が混乱するたびに、巫女様は人々の希望として現れました」


「しかし……」


ルスタは悲しそうに目を伏せる。


「ここ150年……


巫女様は一度も現れていません」


「もし妖精族を導く巫女様が誕生されたなら……


この世紀末の時代において、我々の希望となるはずです」


「そうだな……」


ガンメルは空を見上げた。


「我々は祈るしかない。


新たなる巫女様の誕生を……」


しかし――


彼らはまだ知らなかった。


その目の前にいる少女こそ……


伝説の巫女。


世界を救う使命を持つ――


『最後の巫女』であることを。


□◆□◇◆


「ガンメル村長」


ヨーデルは決意した表情で言った。


「葵ちゃんは、妖精族の守護者の血を受け継いでいます」


「そして現在、悪根の呪術者達が動いている以上……


このまま父親と暮らし続けることは危険です」


「例え葵ちゃん自身が望んだとしても……」


「再びリムラ村の悲劇が起きる可能性がある以上……


我々が彼女を守らなければなりません」


ガンメルは心配そうに尋ねた。


「しかし……父親のダンが納得するでしょうか?」


ヨーデルは静かに笑った。


「その問題については……考えがあります」


「明日、直接話をつけに行きましょう」


葵を守るための戦いが――


静かに始まろうとしていた。

第17話では、葵の出生に隠された秘密が少しずつ明らかになりました。


これまで読者には、葵はただ苦しい環境の中でも優しさを失わない少女として描かれてきました。


しかし、その純粋な心こそが、彼女が選ばれた理由なのです。


大きな力を持つ者が世界を変えるのではありません。


苦しみを経験しても、憎しみに染まらず、人を思いやる心を持ち続ける者こそ、本当の意味で希望となる。


葵の母ソルナが残したもの。


それは血筋や力だけではなく、未来へ繋ぐ「光」なのかもしれません。


一方で、闇の勢力もまた動き始めています。


葵の存在を知れば、悪根の呪術者達は必ず彼女を狙うでしょう。


果たしてヨーデル達は、葵を守ることができるのか。


そして、父ダンとの関係はどう変化していくのか。


次回――


葵を巡る新たな戦いが始まります。


少女の未来を守るため、5人の守護者達が動き出す。


物語は、いよいよ大きな運命の流れへと進んでいきます。

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