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探偵ではありません。経理です。  作者: Silvertiger
第24話 第四話 第七章『サトウは数字の意味を知る』ーお見舞いラッシュアワー

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第24話 第四話 第七章『サトウは数字の意味を知る』ーお見舞いラッシュアワー

 サトウは数字の意味を知る 

 第七章 お見舞いラッシュアワー


 美咲・由紀の見舞い

 日赤中央病院の四階。

 面会時間が訪れると、足早に中林の病室に向かう足音が廊下に響いた。

 中林は、黒川が手配した一人用の個室にいた。

 美咲がドアをノックした後、静かに開ける。

 由紀が後に続いた。

 中林は、弱い笑みを浮かべた。


「……美咲君。由紀さん。

 すみません。

 僕のためにみなさんに迷惑をかけました」


 美咲は、首を振った。

 その動きは、短く、強かった。

「謝らないでください。

 謝るのは私の方です」


 中林は目を見開いた。

 美咲は、ベッドの横に立ち、

 静かに言葉を落とした。


「先輩が追い詰められているのに、

 私は気づかなかった。

 気づこうともしなかった。

 それが、私の大失敗です」

 由紀がそっと目を伏せた。


 中林は、震える声で言った。

「……そんなこと……」


 美咲は、短く遮った。

「早く元気になってください。

 それだけでいいです」


 中林は、ゆっくりと頷いた。

 その頷きは、弱いが、折れてはいなかった。

 病室の空気が、わずかに温かくなった。

 美咲達が、見舞いに持ってきた花束を病室に飾る。


 めぐみ登場(ラビットのミッション)

 しばらくして病室でノックの音がした。

 めぐみが、保冷バッグを抱えて入ってきた。

 中には、高級メロンが二つが丁寧に包まれていた。


「中林さん。

 経理部一同からです。

 ラビット部長は、こういう時だけ気が利くんですよ」

 美咲が目を丸くした。

 由紀が小さく笑った。


 めぐみは、バッグを机に置きながら、

 自然な声で続けた。

「……中林さん。

 もし良かったら、経理部に来ませんか?

 営業部より経理部の方が、あなたに向いていると思うんです」


 中林は驚いたようにめぐみを見た。

 めぐみは、飄々とした笑みを浮かべた。


「部長が言ってました。

 “経理部は優秀な人材を逃さない”って」


 美咲は、めぐみの言葉の裏に

 ラビットの影を感じていた。

(……ラビット部長。やるわね)

 だが即座にめぐみに反応していた。


「ちょっと、何を言うんですか!まだ先輩は入院中です!

 あなたが、経理部の”村正”ね」


 めぐみがキョトンとして美咲を見つめる。

「なんですか、そのムラマサって?」


「妖刀村正よ、経理部の切れ者と噂が聞こえているわ」

「誰が、妖怪ですか!失礼な!」

「妖怪じゃないの、”ヨウトウ”よ。切れ味が凄すぎて、妖刀と呼ばれているの」

「それって、褒めているんですか?」

「”過ぎたるは猶及ばざるが如し”よ」

「なんですか、それは!」


 中林と由紀は、美咲とめぐみの会話に笑いを堪えることができない。

 病室の外にその笑い声が聞こえていた。


 サトウ登場(静かな再生)

 病室のドアが静かに開いた。

「ずいぶん、賑やかだな。患者の体調を考えてください」

 サトウが入ってきた。


 美咲は、自然に道を開けた。

 サトウは、めぐみに微笑んだ。

「……メロンか。ラビット部長らしいな」


 めぐみは笑った。

「部長、こういう時だけ気が利くんです。私、メロンを切ってきますね」

 美咲と由紀も、めぐみとともに、メロンと食器を持って給湯室に向かった。


 病室にはサトウと中林だけが残っていた。

 サトウは、中林のベッドの横に立った。


 中林は弱い声で言った。

「……サトウさん……」


 サトウは短く答えた。

「生きていてくれて、よかった」


 それだけ。

 しかし、その一言が中林の胸に深く落ちた。


 サトウは続けた。

「君の席は、経理部に移るそうだ。

 ラビットの策略のようだよ。

 でも、君が決めればいい。慌てる必要はない。

 今はゆっくり養生しなさい」

 

 中林は経理部のフロアにいた時の、ラビットとサトウ、それにめぐみたちとの暖かい空気を思い出した。


「僕は、経理部にお世話になりたいです」

 サトウは中林の手にそっと触れ、「また来るよ」と呟き、静かに病室を出た。



 


あとがき

 今回のエピソードに登場する言葉や故事成語について、中学生にもわかる例えを交えて解説します。

 妖刀村正(ようとうむらまさ)

 解説: 室町時代から江戸時代にかけて、伊勢国(三重県)で作られた非常に切れ味の良い日本刀のことです。あまりの切れ味の凄さと凄惨なエピソードから、後世の物語や時代劇で「恐ろしい呪いや秘められた力を持つ特別な刀(妖刀)」として扱われるようになりました。

 中学生でもわかる例え: 「アニメやゲームに出てくる『切れ味はバツグンだけど、持つ人を圧倒する怪しいオーラを放つ伝説の魔剣』」のようなものです。作中では、切れ味が鋭すぎて社内でも一目置かれているめぐみさんの「優秀で切れ者な仕事ぶり」を例えて呼んでいます。


 過ぎたるは猶及ばざるが如し(すぎたるはなおおよばざるがごとし)

 解説: 中国の古代の思想家・孔子の言葉で、「度が過ぎていることは、足りないことと同じくらい良くない」という意味の有名なことわざです。何事もやりすぎず、ちょうど良い塩梅(中庸)が大切であるという教えです。

 中学生でもわかる例え: 「テスト前にやる気がありすぎて徹夜で勉強した結果、本番で居眠りして点を落としたら、勉強不足と同じくらい意味がない」という状態のことです。


 養生(ようじょう)

 解説: 怪我や病気を治すために、無理をせず体を休め、健康に気を配って生活することです。

 中学生でもわかる例え: 「風邪をひいたときに、無理して部活に行かず、暖かい部屋で栄養のある美味しいものを食べてしっかり寝ること」です。


 策略(さくりゃく)

 解説: 自分の目的を達成するために、あらかじめ考えておく巧みな計画や工夫のことです。

 中学生でもわかる例え: 「鬼ごっこで相手を捕まえるために、あらかじめ曲がり角に仲間を伏せさせて挟み撃ちにする作戦」のようなものです。



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