↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
探偵ではありません。経理です。  作者: Silvertiger
第16話 第四話・プロローグ『サトウは数字の意味を知る』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
16/25

第16話 第四話・プロローグ『サトウは数字の意味を知る』ー深夜のサイレン

深夜のサイレン


 深夜二時。


 海辺の住宅街を、救急車のサイレンが切り裂いた。

 湿った夏の空気を押しのけるように、赤い光が家々の壁を照らし、

 眠りの底に沈んだ街を強引に現実へ引き戻す。

 救急車は日赤中央病院の搬入口に滑り込み、

 担架が慌ただしく降ろされる。


 白いシーツの下で、男の腕に巻かれた止血帯が赤黒く滲んでいた。

「手首の裂傷、深い! 血圧低下、意識レベル低下!」

「輸血の準備を! すぐ手術室へ!」

 自動扉が開き、担架が光の奥へ消えていく。

 その瞬間、廊下の蛍光灯がわずかに揺れた。


 ◆ 黒川のスマートフォンが震える

 同じ頃。

 黒川部長は自宅の寝室で、

 枕元のスマートフォンが震える音に目を覚ました。

 時刻は深夜二時。

 嫌な予感が、胸の奥で重く沈んだ。

 黒川はショートメッセージを開く。

 そこには短い文章が一行だけ記されていた。


「中林敦雄が自宅で自傷行為。搬送中。至急日赤中央病院へ」


 ただ事実だけが、冷たく突き刺さる。

 黒川は息を呑み、

 寝室の暗闇の中で立ち尽くした。


「……中林が……」

 声にならない声が漏れた。

 寝息を立てる妻を起こさないよう、素早く着替える。

 だが、玄関へ向かう足は震え、

 靴を履く手がもつれ、鍵を落とし、拾い上げるまでに数秒かかった。


 ◆ 病院の廊下で

 病院に到着した黒川は、

 受付に駆け寄り、息を切らしながら叫んだ。

「営業部の……中林敦雄は……!」


 看護師が静かに答える。

「手術中です。

 こちらへどうぞ」


 案内された廊下は、

 深夜の蛍光灯が白く冷たく光り、

 人の気配がほとんどない。

 閉じられたドアの上に、

“手術中”と書かれたランプが冷たく光っていた。


 その廊下のかたすみに――

 ひとりの男が立っていた。


 黒川は歩みを止めた。

 その男は、

 白い光の中で静かに佇み、

 深い悲しみと揺るぎない覚悟を湛えた目で黒川を見つめていた。

 黒川の喉が震えるが、声は出ない。


 男はゆっくりと頷いた。

 サトウだった。

 黒川は言葉を失い、

 ただサトウの前で立ち尽くした。


 サトウは静かに告げる。


「部長……

 中林君をこのような事態にしたのは、我々です」


 蛍光灯の白い光が、

 二人の影を長く伸ばしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。