第11話 第三話・第二章『影を抱えたプレゼンター』―黒川部長の依頼―
第三話・第二章
『影を抱えたプレゼンター』
―黒川部長の依頼―
イベント初日が終了した。
営業部の黒川部長は、控室で深いため息をついていた。
「……由紀さんの元夫が臨時入館証を持っていた。
しかも社印入りだ。
これは営業部だけでは対処できん……」
黒川はスマホを取り出し、
社内連絡アプリを開いた。
接続先は――
フェイスCFO。
◆ フェイスCFOとのやり取り
フェイスは、社内で最も冷静で、最も頼りになる経営幹部だ。
黒川が状況を入力すると、すぐに既読がついた。
「……営業部のイベントに“元夫”が乱入?
しかも臨時入館証?
それ、普通に事件ですね?」
「はい。
明日以降のプレゼンが妨害される可能性があります。
言いにくいのですが、経理部のサトウ君を派遣していただけませんか?」
「サトウを?
営業のトラブルでしょ?」
「サトウ君は、こういう“整合性のない事案”に強いんです。
彼が来れば、原因を突き止められるはずです。」
「……また“整合性”ですか。
彼は数字以外のことにも整合性を求めるわよ……」
「そこが怖いですが、頼りになるんです!」
フェイスはため息をついた。
「わかりました。
ラビット経理部長に話を通します。
ただし、サトウを説得できない場合もあると思ってね」
「ありがとうございます!」
◆ 経理部長ラビットとのやり取り
フェイスはすぐにラビット経理部長へ連絡した。
「営業部のイベントに経理を派遣?
フェイスCFO、またトラブルですか?
経理は苦情処理担当ではありませんよ」
「苦情ではありません。これは重大な危機です。
営業部の大事なイベントがパート社員の“元夫に妨害された”の。
臨時入館証が不正発行されている可能性があります。
再発防止をサトウに指示して下さい。
必要な資源の手当と権限の付与は黒川部長と私が許可します」
「……それは経理の管轄ではないですが、重大案件ですね。
だから、サトウが必要なんですね。」
「はい。すぐにイベント会場にサトウを派遣して下さい。」
「サトウ君、また面倒くさがるだろうなぁ……
でも、会社の危機なら仕方ないか」
ラビットは経理部のフロアに向かい、
サトウの席に立った。
◆ サトウ登場
サトウは、いつものように静かにディスプレイに表示された伝票を見ていた。
「サトウ君、営業部のイベントで不正があったらしい。
臨時入館証が不正発行された可能性があるそうだ。
また、大事なプレゼンの妨害を阻止しろだとさ。」
「整合性がありませんね。」
「まだ何も説明してないんだけど……?」
「臨時入館証は、発行者の権限とログが必ず残ります。
不正発行なら、必ず矛盾が出ます。」
「……そういうところが頼りになるのよね。
行ってきてくれる?」
「会社の危機なら、行くべきでしょう。
ただし、今からですと残業の申請と許可をお願いします。
交通費も発生します。
あと、泊まりになるなら宿泊費も」
「わかった。フェイスCFOと黒川部長の許可は取っている。
ついでに必要な機材を車に積んでいけ。
営業部の黒川部長が首を長ーくして待っているそうだ」
サトウは立ち上がり、
資料をまとめて鞄に入れた。
◆ 黒川部長とサトウのの合流
アリーナの控室に戻った黒川部長は、
サトウの姿を見て思わず笑顔になった。
「サトウ君!来てくれたか!」
「会社の危機と聞きましたので」
「いやぁ、頼りになるなぁ……
これで営業部のトラブル対応は二件目か」
「前代未聞の不正が起きているようですね。」
「そこまで言うかね……!」
「事実ですので」
「……君は本当に容赦ないな。」
「では、入館証の発行ログと通信ログを確認します。
整合性が取れれば、原因がわかります」
「頼むよ、サトウ君。
このイベントは会社の未来がかかっているんだ。」
「承知しました」
そして――
サトウはアリーナのシステムルームへ、持ってきた機材一式を運んだ。
この事件の真相が、静かに動き始める。




