8話
エディの苗字をフローリアに変えます。
フロリアンだとデロリアンみたいなので
「というのも、僕がこの王都に滞在してる間寝泊まりしている屋敷の庭園の庭師がやめなくちゃならなくてね。
どうやら君は仕事探しに困っている上に庭師の格好をしてるからどうだろうと思って。」
こんな上手い話はあるのか…とアメリアは驚いた。
しかしこのエディという男のへんてこりんなところを加味しても、王都とは別に家がありそうな口ぶりといい、身につけているものといい、どうもかなりの上流階級に見えるので、きっと王都にある屋敷もとてもいい環境なのではないか、と。
「…わ、私はとてもありがたいお話にございます。」
「おお、とても良いノリのお嬢さんだ。ならば話が早い、早速僕の屋敷に行こう。
そこに馬車を停めてあるから、それに乗ろうか。」
エディはさっと立ち上がって、アメリアの前に立って手を差し出した。
「エスコートをしよう。きっと庭師は馬車に乗り慣れていないのだろう?」
「…え、良いのですか?」
少し鼻につく言い方だったが、自分が今貴族に見えていないのは好都合だった。アメリアはエディの手を断ることなく取ってエスコートをしてもらうことにした。
実際庭師や労働階級が馬車に乗り慣れていないわけでは無いはずなのだが、この男はそれをよく知らないのかもしれない。
やはりよほどの上流貴族なのか、とアメリアはとんだ大きな魚が釣れましたわね、と静かにため息をつく。
しばらく歩くとエディの言う通り、通りに馬車が停まっていた。
御者がエディの姿を見て恭しく一礼をすると、エディは先に馬車に乗り、次にアメリアを乗り入れ、最後に付き人が乗る。
ラローズ家の馬車よりも質の良い赤いビロードが椅子のカバーになっている。座り心地も良く、天井も高い。
装飾品はさほど煌びやかで無いのは、エディの趣味なのかもしれない。
地味に見えるがよく見ると意匠がそこかしこに散りばめられた芸術品のような馬車だった。
(いくらくらいするのかしら…とてもじゃないけど流石にラローズ家でも買えない代物ね…全てが特注品みたいだわ…)
アメリアは乗る時に馬車の模様を見ようとしたが、広場の夜灯の心許ない明かりでは馬車の家紋がはっきり見ることができず、結局この男の素性はいまだによくわからなかった。
「…え、エディ様は何者でございますか?」
「僕?あー、雇うのに何も話してなかった。ごめんね。
僕はエディ・ド・フローリア、フローリア公爵と呼ばれてる。」




