7話
「そうは言っても何にもできないわね。」
一文なし無職身分証なしの状態では身動きが取れない。
とっくに月が空へと昇ってきていた。春とはいえまだまだ肌寒い。作業着という軽装では全く暖が取れない。
アメリアは結局またうーん、うーん、と頭を悩ませていた。
お金を稼がなければ何も踏み出せない、となるとアメリアはよもやこの体も売ったほうが良いのだろうか、と良からぬ見立てを立て始めてしまっていた。
(でもこの広場、人がいない上に騎士の方まで常駐してるみたいだわ…)
王城のすぐそばの広場だからか、騎士が常に広場の傍に立っており、やたらなことをするとすぐに捕まってしまいそうだと尻込みするのだった。
すると、こつ、こつ、と革靴の音が聞こえてきた。
アメリアもそちらを振り向くと、付き人を一人従えた明らかな貴族男性がいた。
「…こんばんは、こんな寒い夜にお嬢さん一人で何をしているのかね。」
「こ、こんばんは…」
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エディと名乗るその男は、アメリアの座っているベンチに同じように腰掛けた。
ギョッとした顔でアメリアがそちらを見ると、エディも大きく綺麗な瞳をアメリアを向けながら、細長い指揮棒のような短い杖を取り出して、アメリアの服装や髪型をなぞるように軽く振っていた。
(何してるんだろうこの方は…)
おそらく貴族であるその人に対してちゃんと礼をわきまえねばと思っているのに、あまりにも不思議な行動に目が入って挨拶もろくにできない。
頭、首元のスカーフ、エプロン、エプロンからはみ出ている手袋、ブーツ、そしてあまり礼装には見えないドレス…
とぶつぶつ呟きながら杖をその体にとん、とん、とふり続けた。
聞こえないふりをすればかなりの美丈夫なのだが、やっていることが奇怪すぎてその麗しい見た目も霞んでしまう。
ようやく杖を振り終え、エディはしばし考えた様子を見せて、アメリアに尋ねた。
「…君、庭師?」




