5話
城下町の方へ行くと、町境に辿り着いた。
「今まで何の追手もなかったのが幸い…泳がされているのかしら。」
結局何も持たないままで関所に来てしまった。
素知らぬ顔で通り過ぎようと歩みを止めずにいたのだが、当然関所の門番がそれを許すはずもなかった。
「…おい、」
「……。」
(そうよね…)
「…どこから来た、名は?」
「ら、ラローズ領から…私はアメリアです。」
門番もまさかアメリアがラローズの令嬢だと思うはずもなかった。怪訝な顔で手ぶらのアメリアを頭からつま先までよく観察していた。
「何故何も持たない。」
「…も、物盗り…に遭いましたのよ、おほほ…」
(我ながら苦しすぎる言い訳…)
あまりにも怪しまれていることはアメリアもひしひしと自覚していた。しかしそれ以外に何も言い訳ができなかった。
「しかし外出用の服はないのか。まるで仕事から抜け出してきたみたいではないか。」
全くその通りの指摘がくると、アメリアは何も言い返せなかった。
「…っ」
アメリアは頭に手をやると、結われていた髪を解いてその髪飾りを門番に半ば強引に手渡した。
「…そ、そちらでいかがかしら。」
「……これは…」
「…その石はローズダイヤ…ダイヤモンドの中でも珍しく美しい花の色を持っております…目利きのものに見せればそれなりの額にはなりましょう。」
「…お主は着の身着のままだ…っておい!」
返事は聞かず、アメリアは隙をついてそのまま城下町『ブラスシティ』へと入っていった。
「…はあ、はあ…っ…偽名を使えば良かった…。」
アメリアの髪飾りは、ついさっき思い出した物だった。それならば箱馬車を借りれたな、下手を打ったと後悔しつつ、まずはラローズ領を離れられたことを喜ぶべきかと一つため息をついた。
アメリアはブラスシティの広場にやってきて辺りを見渡した。
夕暮れも夜へと近づいてきて、多くの店は扉を閉め始めている。まだやっているバーなどはないかなと更に見渡すと、職業紹介所の看板を見つけた。




