2話
「お嬢様、旦那様がお呼びです。」
18歳になる一週間前。
アメリアは父、ダニエルから呼び出された。
仕事で多忙なダニエルは滅多に帰宅しない。
そんな父に呼ばれたということは、アメリアにとって一番嫌な案件であることは自明だった。
(…もう何度も断っているんだけど…)
「…お父様、アメリアでございます。」
「久しぶり。」
「ご機嫌麗しゅう。」
確かに父の顔を見るのも久しぶりだな、と頭を下げたままぼーっと考える。
何ヶ月ぶりだろうか、と。
「アメリアよ、もうお前も察してはいるのだろうが。
アメリアをぜひ嫁にとの話が来ている。」
「…お父様、お見合いの話ならばお断りくださいませ、と何度も」
「相手は格上だ、もう断るわけには行かない。」
アメリアは父に甘やかされている自覚はあった。
だから言葉を遮られたのはこれが初めてだった。
驚いてダニエルの顔を見ると、呆れたような表情でこちらを見ていた。
「……格上、でございますか。」
(まさか公爵だなんて…)
「そして、年上だ。」
「おいくつですか?」
「お前の二十ほど上だ。」
38歳…
「アメリアよ、とうに文句をつけられる時期は過ぎているのだ。いい加減身を固めてはくれないか?」
「お父様は、私をその公爵家に売るということでございますか。」
「そんなことはない。そもそもラローズ家は他の家に娘を売るほど金に困ってはいない。」
「なれば、何故私は親子ほど離れた歳の差の殿方に嫁がねばならないのでしょうか。
私は確かに見合いも何度も蹴ってきましたが、そこまでおちぶれてなどおりませぬ。」
「私がもはやそのような身分ならば甘んじて受け入れます。
されど卒業前に結婚をさせる、など貴族の取るに足らないプライドのためにその年上公爵に嫁がされるならばもう誰のものにもなりませぬ!」
言い切ると、アメリアはそのまま自室へと戻った。




