12話
明るい部屋の中で目が覚めた。
アメリアは欠伸しながらゆっくりと体を起こすと、辺りを見渡した。
(ああそうだったわ…)
アメリアは昨日、両親に結婚をしろと迫られて、勢いのまま家出をしてしまったのだ。
本当になんにも考えていなかったので、一文なしの上に着の身着のままで庶民偽装もできない八方塞がりの中王城のすぐ近くの大広場でホームレスよろしくベンチに寝転がっていた。
幸運にもこうしてフローリア公爵家に拾われたものの、当主は明らかな変人で独身の男。
アメリアは18歳で、26歳のエディと婚約したのかと噂をされてもおかしくない年齢差なのだ。
(昨日のことを誰かに見られていたらおしまいだわ。)
アメリアが逃げ出したことで相手の公爵様はカンカンらしい。
こんなことが知られたら「不埒だわ!」と母は倒れ、父は顔を真っ白にするだろう。
エディからは庭師の仕事をしてほしいと拾われたものの、「はい喜んで、」などと呑気に外で作業なんてしていたらいつかバレそうだな、と冷や汗が出る。
作業はしたいのでする予定、せっかくの庭師になれるチャンスを逃してはならない。
フローリア公爵が王都滞在時に利用するこの屋敷、公爵の土地なだけあり、城が目と鼻の先にあるくらいの好立地で、昨日アメリアが訪れた大広場からも程近い。
貴族や市民の往来もよく見える。とはいえここは大屋敷なので門から中は上手くカモフラージュされていて、外には護衛も二人立っている。
中に入ってよっぽど探し回らなければ基本は何もわからないともとれるので、庭師として作業をしたいアメリアはより楽観的な方で考えることにした。
そしてこのフローリア屋敷には、中々珍しい使用人用の準備室が整えられており、アメリアは夕食のあと同じ使用人で侍女のダリアから案内を受け、隣にある仮眠室で一晩休んだ。
しかも使用人も風呂使い放題、キッチンも使い放題、なんでもござれなこの場所は普通に居心地がいい。まだ一泊しかしていないのに。
アメリアもアメリアで、昨晩はお風呂もありがたーく入らせていただき、寝間着も借用して夜のティータイムのための紅茶もいただいた。
アメリアは基本全て自分でできる侯爵令嬢としては珍しいタイプの貴族なので、朝も支給された軽い素材のドレス(作業着らしい)のコルセットから髪の結い上げ慣れた手つきで終わると、実家と同じくらい寝心地のいいベッドに再び腰掛けた。
一息ついたアメリアがうーん、と伸びをしていたらガチャリとドアが開いた。
「おはようアメリア。」
そこにいたのはフローリア公爵家当主、エディだった。




