11話
「でも僕としてはその彼女、結構いいセンスしてると思うんだよね〜。」
エディはメインディッシュのポワレを切り出して言った。
「三十八だけどあの人って顔と体型はいいからさ、結構周りの女みーんな騙されるんだよ。
断ったって子は三十八なんていいオヤジだって、よっぽど嫌だったのか家飛び出してるみたいだからね。
あっぱれだよ!あはは!」
よほど面白いのかケラケラとくすぐられたように笑うエディに、ラセルは少し呆れたように主人の口元を拭う。
「とまあそんなことでさ、今日たまたま王城でベルベット公爵と会ったんだよ、その時にその女の子を探すのを手伝えってんでとんだ面倒ごとに巻き込まれそうになったから断ってきた。」
ふふ、とご機嫌かつ自慢げに言った。
「しかし、ベルベット様に手を貸しておけば今後に良いコネクションとなるのでは?」
「んー、それもいいなとは思ったんだけどさ、今王城って結構荒れてるらしくて…
どんな理由でも公爵同士が手を組もうものなら変な勘繰りされて大変そうじゃん。
それに僕はその女の子の勇気に惚れたから断ったのさ。
ぜひ逃げ切ってほしい。その暁には会いたいな。どんな子なんだろうね。」
もうバレてるんじゃないか、とアメリアは変な汗が止まらないような幻覚を覚えた。
「…ゴホン、旦那様、話が少しズレてしまいましたが、そもそも未婚の旦那様がそのように若い女性を連れ込むなんていらぬ誤解を生みましょう。
雇用関係を結ぶなら、きちんと夜が明けてからお呼びすれば良かったのです。」
「広場で宿もないっていう若い女の子を見捨てろって?
フローリアの名が廃るね。僕は未婚で変人だけどそんな根性曲がっちゃいないよ。」
ムッとした顔で言い返すと、ラセルは頭を下げてから「それは失礼いたしました、」と潔く諦めた。
(…でも、驚いたわ。)
こんなにもすぐ話が広まるなんて…とアメリアは公爵家の情報流布の速さに驚いた。
「でも、旦那様にはいずれ夫人候補を見つけねばなりません。こんなふうに無責任に優しくして、変な気を起こさせたら大変ですよ。」
本人が目の前にいるのに、ラセルは平気で毒を吐く。
やはり自分のことが貴族に見えていないらしい、良いのか悪いのかわからない曖昧な気持ちを抱えたまま、アメリアは気まずく美味しいマッシュポテトを食べた。
「断りはしたけど、でもよく考えたらその女の子家出してるんだもんね。困ったなー、その女の子の名前くらい聞いておけば我が家に囲い込めたかなー。」
と冗談にもならないことを軽く言うエディに、アメリアは今度こそ本当に滝のような汗が出ているような気がした。
「物騒ですね、アメリアが引いてますよ。」
「あ、ほんとだ、ごめんねー。」




