13話
「お、おはようございます…旦那様…」
突然の来訪に驚いて、のびの形も崩さないまま挨拶をするアメリアに、エディはくつくつと笑った。
「おはよう、よく眠れたみたいだね。」
お人形のような美しい顔立ちの男が笑うとそれはもうなかなかな破壊力である。
寝ぼけたふりをしてエディの美しい顔をアメリアはマジマジと見つめていると、廊下の方からドタバタと忙しない足音が聞こえてきた。
「だ、旦那様!!ここは使用人部屋でございます!!しかも女性用!!」
足音が止むかと思えばすぐに扉の方から恰幅のいい侍女が、慌てた様子でエディの前に立った。
「知ってる知ってる、僕だってアメリアに用があるんだから。」
「へ?」
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エディは結局そのままアメリアをついてきて、と連れ出した。
侍女はそれを困った顔で見送ったが、アメリアも何が起こっているのかわからないままついていくほか無かった。
「旦那様、一体どちらまでおゆきなのですか?」
屋敷の広く長い廊下をただひたすら歩いて、降りられる階段は全て降りる。
どうやら下の方へ向かっていることはわかったのだが、歩いていくと段々と目的地は室内ではなさそうだなとわかってきた。
「ここだよ。」
エディについていくと、予想通り庭園に辿り着いた。
庭園とは言っても、昨日チラッと見かけた最低限の手入れしかされていないもったいない庭のことである。
「こちらでしたか。」
「うん、ここはフローリア家の庭、フローリア庭園と言ったところかな。」
アメリアの仕事場だよ。
エディはそう言うと、アメリアの手にとある種を握らせた。
「これを咲かせて欲しいんだ。」
「…これは…」
「うん、サンブルーム。」
アメリアの手に握られたのは、庶民がよくおやつに食べるサンブルームの種である。決して高価なものではない、あまり味のしないスナックというイメージが貴族の間にはある。
園芸が大好きなアメリアも知識として持っているが、握らされた種はやはりおやつというイメージが拭いきれない。
そのおかげでせっかく『サンブルームの種』という名前がついているのに、この国ではサンブルームが咲く場所が田舎にある畑でしか見当たらないのである。
「貴族階級の人間はサンブルームのことをあまりよく知らない。僕もおんなじなんだ。でも綺麗な花だと知って、咲かせたいなって思ってた。
でも庭師がずいぶん前に弟子を残さず引退したんだよ、だからこの庭はしばらく役割も果たせていない。」
広くて陽当たりのいいとても良い土地。
雑草もほとんどない分、余計に寂しく見えた。
「…旦那様…」
「…このアメリアにお任せくださいまし!」




