城へ
「お前がラズレックか」
ノクスはラズレックを睨みつけた。
ラズレックはノクスを見ながら言う。
「私にナイフは効かない」
ノクスは黙って距離を取った。
ラズレックが続ける。
「皇帝に会いたい。戦を止めさせるのだ」
だが、ノクスは何も答えない。
さらに距離を取る。
そのとき、周りの兵が一斉にラズレックへ剣と槍を突き出した。
ラズレックはかわす素振りも見せず、正面の兵を手で薙ぎ払う。
剣も槍も、すべて弾かれた。
兵たちは一斉に後退する。
――ドン、ドン、ドン。
続いて、高い建物の三か所から銃声が響いた。
弾はすべてラズレックに当たった。
だが、身体がわずかに揺れただけで、平然と立っている。
ノクスが言った。
「ヴァルグリムから、一個大隊が一人に敗れたと報告を受けたときは、何事かと思っていたが……さて、どうしたものかな」
ラズレックは言う。
「そんな余裕があるのか。もう、お前たちは捕まえたぞ」
ノクスは、自分の足が大地から離れないことに気づいた。
周りの兵を見ると、全員が膝まで地面に飲み込まれている。
ラズレックはノクスの前まで歩いていった。
「もう一度言おう。皇帝に会いたい。戦を止めさせるのだ」
「化け物だな。その力は」
近づいたラズレックは、わずかに笑った。
「化け物は戦争をしない。お前たちも化け物になってはどうか?」
その言葉とともに、ノクスと兵たちの身体はさらに地面に沈んでいく。
肩まで沈んだところで、ジェスタが声をかけた。
「そのへんでいいわよ、ラズレック」
ラズレックは驚いたように言う。
「驚いた。自分の意思で浮き上がってきたのか」
「そうよ。わたし、土の魔術も使えるのよ。
ああ、だめよ。首まで沈めたら、街の人がパニックになるわ」
ラズレックは沈めるのを止めた。
ジェスタは言う。
「私が案内するわ。これだけ目立っていたら、のんびりしているうちに人だらけになって動けなくなる。
さあ、ラズレック。城に突撃よ」
ジェスタが走り出す。
ラズレックも、その後を追った。




