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貴族ルクレツィア・ノクス

城壁の中を馬が走っていく。


「騒がしいな」


街の路地裏の陰から、ラズレックが姿を現した。

その後ろからジェスタも姿を見せる。


「確かに、魔術じゃないわね。ラズレック。壁の中を歩くのは初めてだわ」


ジェスタは驚いたように声を上げ、改めてラズレックを見た。


大きな帽子。

黒いマント。

そして、目を引く長身。


「ラズレック。さっきの馬、昨日のヴァルグリム大隊の早馬だと思う。

あなたの姿はすぐに広まるわ。


私を埋めたみたいに、地面に潜れない?」


「潜れる」


「じゃあ、そのまま歩ける?」


「歩けるが、視界がないのでつまらぬ」


「つまらなくて結構。今から城に行くから。私の足音を聞いてついてきて」


そう言ってジェスタは、地面へ潜れとでも言うように、指先を下へ向けた。


「城か。うむ」


ラズレックは地面に沈み、その姿を消した。


ジェスタは足音を大きく立てながら、堂々と街を歩いていく。

迷うことなく、広い街路を折れ、城へ向かった。


城の入口が見えたところで、声をかけられた。


「ヴェルミナ様。お迎えにあがりました」


痩せていて、目の隈がやけに目立つ、不気味な雰囲気の男だった。


「あら、ルクレツィア・ノクスだったかしら。お久しぶり。

私、姿が変わっているはずなのによくわかったわね」


「ええ。ヴァルグリム様からの報告に、

『灰色のローブに、裏地は朱い華の模様』

とありましてね。


探しておりましたら、女性が大きな足音を立て、裏地が見えるほど堂々と歩いておられましたので」


「あら、そう。ノクス。私を迎えに来たって言ったわね。

どこへ連れていってくれるの?

私はドミトリアン・ノーディアに会いたいのだけど」


「皇帝にはお会わせできませんな。

『ラズレック』という生物の魔術は使っていないようですね」


「魔術ではないのだけどね。

それにしても、ヴァルグリム・アルディオンに、ルクレツィア・ノクス。皇帝は貴族を気楽に使いすぎじゃないの?」


「あなたの恐ろしさを知っていて、扱いが難しいからこそ、貴族が直接出ているのですよ。

一兵卒になった気分です」


「今回、私は何もしてないわよ」


「ラズレックという化け物を生み出したらしいですね。

ヴァルグリム様が、一人も殺されなかったとはいえ、恐ろしい目にあったと」


「それは否定しないわ。だから、私が眠らせてあげたのよ」


「ひどいことをなさる。

ついてきてくださいませ。悪いようにはしませんから」


「いいわよ。ただし、歩いて案内してね。

私もこの街が懐かしいの」


ついていくと、街の中に噴水のある広場があった。

街の人影はなく、代わりに兵がぞろぞろと現れる。


「申し訳ありませんが、こちらで死んでいただけませんか。

 あなたへの対応は、歌を成立させないことでしたかね。」


「あなた自身が投げナイフの名人だものね。一瞬で喉を切られるのはいやね」


ジェスタは、つま先で地面をとんとんと叩いた。


次の瞬間。


ノクスとジェスタの間に、ラズレックが現れた。ノクスが唖然としたとき


ジェスタはノクスに軽く手を振ると、地面の中へ消えていった。

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