終末世界への入口
「さて、次はお前の番だぞ」
船を漕ぎながら一日を乗り切った継征は逸子に選べとゲームのパッケージを差し出す。
『アポカリプス・デイ』、『ブレイブ・フェアリー~妖精勇者~』の二本。
FPSか3Dアクション。 どちらも一筋縄ではいかないだろう。
逸子は少し迷ったが、前者――アポカリプス・デイを選択。
「ちなみになんでこっち?」
「これ」
逸子が指差した所を見ると最大4人プレイ可能。
それを見て継征は小さく溜息を吐いた。 つまり手伝わせるつもりなのだ。
「ふへへ、よろしくねぇ?」
「……分かったよ。 まぁ、こっちはまだ気楽にやれそうだしいいか」
ディスクを入れ替えて起動。
赤と黒が目立つホラー映画感のあるオープニングムービーが流れてタイトル画面へ。
逸子はカチャカチャと操作を開始。 難易度はノーマル、プレイ方式はマルチ。
二人プレイに設定し、継征はやれやれとコントローラーを握る。
ストーリーは宇宙から飛来した隕石に含まれていた未知のウイルスによって人々はゾンビと化し、凄まじい勢いで生活圏が脅かされていったといった物だ。
目的としてはプレイヤー達は世界各国から集められた特殊対策チームで、隕石の調査の為に現地に向かうという流れとなる。
操作キャラとしてはその対策チームのメンバーから選ぶ。
見た目だけかとも思ったが、それぞれのキャラに特性が備わっているので選択も重要そうだった。
接近戦に強い、弾を多く持てる、最大HPが多い、足が速い等々。
中々にバラエティに富んでおり、何と全20キャラもいた。
「多いな。 キャラの選択画面が格ゲーみたいになってるぞ」
「これ、もうちょっと絞れなかったのかな。 多いのってトロコン的に嫌な予感しかしないんだけど」
「奇遇だな。 俺もだ」
逸子はカーソルを移動させてキャラのプロフィールを読みながら選んでいた。
継征は触ってみないと判断できないので、最初は適当でいいかと耐久に優れたキャラを選択。
「私はこれにしよーっと」
逸子は弾の保有数が通常の1.5倍のキャラを選択。
準備は終わったのでそのまま開始。 ムービーが始まり、二人は黙って眺めている。
ヘリで目的地まで向かっていた一行だったが、ロケットランチャーを持ったゾンビに撃ち落とされ、降下した所からスタートだ。
「や、ゾンビって頭悪いんじゃないの?」
「最近はそうでもないぞ。 走るし、銃器も扱うパターンも結構ある」
「なんか思ってたのと違う」
話している間にムービーが終わり、戦闘が開始された。
動きは軽快で突撃銃や拳銃を連射して次々と湧いて来るゾンビを始末していくのは中々に爽快だ。
装備はメイン、サブ、爆発物、回復薬の四種。
途中で同カテゴリーの武器を発見した場合、入れ替えとなる。
「ひゅう! 手榴弾で敵を吹っ飛ばすの気持ちいい~」
逸子は中々にご満悦で楽し気にゾンビを駆逐していく。
基本的に一本道で目標地点に到達すれば次へと進めるので、無理に全滅させる必要はない。
継征としてもストレスを感じないゲームは嫌いではなかった。
難易度もノーマルという事もあってゾンビは撃てば簡単に斃せる上、ダメージに関しても驚くほどではない。 操作も軽快、サクサクとゾンビを葬れるのは爽快感は素晴らしい。
これは当たりかな? トロフィー取得の条件を見ていなかったが、この調子で行けるのなら今回は楽に片付く――
――と思っていた時期が俺にもあった。
このゲームの序盤はただのチュートリアルだったようだ。
アポカリプス・デイ。 最大四人でプレイできるFPSゲームでゾンビもそこまで手強くはないのだが、このゲームの本領はステージ2からだった。
「ちょっ!? 何こいつ等!?」
進むにつれて現れる特殊ゾンビだ。 最初に現れたのは全身の爆発物を身に着けた自爆ゾンビ。
プレイヤーを認識したと同時に全力疾走で接近して自爆する。
爆発物というだけあって攻撃範囲、威力ともに通常ゾンビの噛みつき攻撃の比ではない。
まともに喰らうと一撃で耐久の半分、継征の耐久特化のキャラでも四分の一は持っていかれる。
一応、威力に関しては爆発位置から離れれば離れるほどに落ちるが他のゾンビに紛れて接近して来る事もあって厄介だ。 対処法としては接近される前に撃破するか、足を撃って転倒させる事。
爆発ダメージはプレイヤーだけでなく、ゾンビにも入るので上手く転倒させて他の敵を巻き込むといった使い方もできる。 それが大量に現れて波状攻撃を繰り出してくるのだ。
初見だった事も含めて厄介極まりない。
「うぜぇ。 逸子、とにかく足狙って他を爆発に巻き込め!」
「やってるよぉ……」
四方八方から来る事もあって下手に突出するとすぐに囲まれて袋叩きに遭う。
継征は早い段階で壁を背にする事で攻撃され辛いポジショニングを意識していたのだが、逸子はそうも行かなかったらしい。 早々に囲まれてやられてしまっていた。
「ギャー! やられたー!?」
「あー、やられちまったなぁ」
継征は何とか粘ってそのステージはクリアとなったのだが、二つ目のステージでこれでは先が思いやられるなと少し不安になった。
そしてステージ3からが本番だと言わんばかりに何度が跳ね上がる。
このゲームは一つのステージごとに複数のチャプターに分かれており、一つクリアするとそこをチェックポイントとしてコンティニュー時のリスポーン地点になるのだ。
そしてチャプターを一つか二つクリアする度に新種のゾンビが増えた。
ステージ3で現れたのは新たに二種、アメフト選手のように低姿勢からのタックルを繰り出してプレイヤーを吹き飛ばしダウンを取って来るラグビーゾンビ。
このゲームはダウン中の無敵時間がないので復帰までの間、殴られ放題となる。
次に現れたのは警官の恰好で拳銃で攻撃して来るポリスゾンビ。
適当に撃っているようにしか見えないのに驚くほどの命中精度で確実に当てて来る。
こいつ等にプラス自爆ゾンビが襲ってくるのだ。 既に厳しい。
自爆ゾンビにかまけているとラグビーゾンビのタックルを喰らい、手近な相手に意識を割き続けると銃撃が飛んでくる。
逸子も段々とストレスが溜まって来たのか口数が減って来た。
継征としてはこの時点で嫌な予感がし始めており、この先の難易度を考えると気が重かった。
誤字報告いつもありがとうございます。
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