終末世界を駆け抜ける為に必要な事
「もう! もう!! もう!!!」
逸子が苛立ちを吐き出す。
画面いっぱいにゲームオーバーと表示されており、有り体に言うと負けたのだ。
何とかステージ3をクリアし、ステージ4へと駒を進めたのだが、そこは更なる地獄だった。
ここで新たに出現したのは二種類。 物陰から飛び掛かって来るアンブッシュゾンビ。
プレイヤーに飛び掛かり、捕まれたキャラは馬乗りになられて耐久の二割が減るまで殴られ続ける。
ちなみにその間にも他のゾンビの攻撃も通るので場合によっては捕まった瞬間に死亡が確定するのだ。
逸子はこいつに連続で組み付かれて五回は死んでいる。
処理方法としては物陰から飛び出した時に狙えばいい。
耐久はかなり低く、何処かに当てさえすれば仕留められるのはせめてもの情けかも知れなかった。
居そうな場所を避けて無視も考えたのだが、こいつ等は出現から一定時間が経過すると待ち伏せを止めて他のゾンビに混ざって突っ込んで来る。 そして攻撃の範囲に入ったと同時に飛び掛かるのだ。
クソ過ぎる。 見た目も通常のゾンビとそこまで変わらない事もあって紛れ込むと高確率で飛びつきを喰らう。
このゲームでトップクラスのウザさを誇るクソゾンビだったが、次に出て来た奴も同等以上に厄介だった。 対爆スーツを身に纏った対爆ゾンビ。
行動パターンは単純で、離れた位置だとタックル、近寄ると手足を振り回しての打撃。
だが、圧倒的な耐久力で弱点の頭部に相当喰らわせないと倒れない上、爆破ダメージ無効という特性があって爆発物が効果がない。 これが特に厄介だった。
効かない事もそうだが、ステージ2からストーカーのようにしつこく付き纏う自爆ゾンビとのシナジーが凄まじいのだ。
これまでの場合は自爆ゾンビが爆発すると周囲のゾンビにもダメージが入る。
つまり、アンブッシュに掴まれた状態で爆発するとホールドを解除できるのだ。
掴まれた際の脱出手段としても使えるという訳だ。 ただ、こいつに限ってはそうはいかない。
爆発ダメージが無効である以上、自爆ゾンビのデメリットが適用されないのだ。
タックルの誘導性能は低いのでモーションから読み取る事は比較的容易ではあるが、他のゾンビを捌きながらなのでそう簡単には行かない。
硬いので処理方法としては下手に撃破を狙うよりは後回しにして他を先に始末した方が安定する。
タックルを喰らってイラつきが頂点に達した逸子が対爆にしつこく弾を撃ち込んだ所で背後からアンブッシュに組み付かれ、継征が即座に助けたがそのお陰で自爆ゾンビへの処理が遅れ爆殺されてしまう。
一人残った逸子はそのまま囲まれて袋叩きにされてゲームオーバー。
「ああああああ!! ウザい! ウザい! ウザいいいいいい!!!」
「気持ちは分かるが落ち着け」
そういいつつも継征の心中も穏やかではなかった。
難易度への苛立ちもあったが、まだステージ4なのだ。
流石にこれ以上、手強くなるのなら予習が必要だった。 休憩とクールダウンを兼ねるとの事で逸子が冷蔵庫にアイスを取りに行っている間、継征はスマートフォンでアポカリプス・デイについて調べる。
古いゲームの良い所は攻略法がほぼ、出尽くしている点だ。
まずはざっと評価を見る。 総合的に見ると賛否両論と言った所だろう。
賛は歯応えがある、慣れると味がする等のこの手のジャンルに精通したプレイヤーが多い印象だ。
否は難しすぎる、特殊ゾンビがウザすぎて投げた等々。
その中から参考になりそうなレビューを探し、かなりの長文で書かれている物を見つけ――溜息を吐いた。 基本的にこのゲームはいかに特殊ゾンビによる波状攻撃を速やかに捌けるかが攻略の鍵となる。
ちなみに全20ステージと大ボリュームで内、ステージ15まで新規ゾンビが出現するという地獄だ。
「15!? どんだけ出て来るんだよ!?」
一応、各ゾンビの対処法的な物も記されていたのだが、先に出て来るゾンビも既出の物と比べても厄介極まりない。 育成要素として熟練度なる物も存在しており、銃器とプレイヤーキャラは使い込んでいくとレベルが上がり、上昇に応じてパークという能力開放が可能になるので、勝てないのならクリア済みのステージを再走して鍛えるのも選択肢の一つだ。
それともう一つ分かり易い攻略法が存在した。 正確には難易度を落とす方法だ。
このゲームは最大で四人までプレイ可能ではあるが、プレイ人数が増えても難易度や敵の強さは据え置きとなる。 つまり単純に頭数が居れば敵の狙いも散るのでかなり楽になる訳だ。
流石にこれに他を巻き込む事はしたくないので、案としては使い辛い。
オンラインで協力プレイも可能ではあるが、わざわざこのゲームを買わせるのは抵抗があった。
そもそもそんな事を頼める奴なんて――一応は居るか。
どちらにせよ頼むにしても明日以降だった。
「ふいー、リフレッシュ! 何か調べてるみたいだけどどう?」
逸子がガリガリとアイスを齧りながら持ってきたもう一本を継征に渡す。
受け取りながら開いたままのスマートフォンの画面を逸子に渡した。
「げ、難易度まだ上がるの?」
「そうなんだよ。 今の戦力でのクリアは厳しいからまずは周回して強化するのがいいと思う」
「分かった! ――でも、これ見る限り20ステージクリアとかできる気がしないんだけど……」
「そこは頑張るしかないな」
逸子はうーと唸った後、座ってコントローラーを握る。
アイスをガリガリと齧って食べ切った継征も放り出したコントローラーを拾う。
まずは周回してパーク解放からだ。 この地獄を突破する為の戦いを再開した。
「――という事があったんだ」
「ふーん。 大変そうじゃん」
翌日、継征は藤副に昨日から取り掛かっている「アポカリプス・デイ」の話をしていた。
あれから少し気になって軽くだが調べたようだ。 彼女の方から話を振ってきた。
「知り合いに聞いたんだけど、PC版持っててさ。 なんでもソロでのクリアは結構難しいからオンラインで仲間募ってクリアするのが無難なんだって」
「あ、お前の幼馴染アレにも手を出してたのか」
「うん。 セールかなんかで安かったから買ったとか言ってたかなぁ。 かなりハマったって言ってたよ」
無自覚かもしれないが、藤副は幼馴染と喋れた事が良かったのか目に見えて機嫌が良い。
継征としては中々に都合がいい話だった。
――これは話を持っていけるかもしれないな。




