118話 末席に座する者
ざわざわっ
会場はざわめきに包まれている。
確かに1人の少女に100を超えるフル武装の騎士が相対しているのは異様だろう。
中には第一皇子が乱心したと思う者もいた。
「やりすぎだ」
「こんなの試合じゃないじゃないか」
「第一皇子の機嫌を損ねたか」
「おとなしくしていれば公開処刑を免れたものを」
一般席からは状況を掴めず混乱した声が多数聞かれ特級席からは事情を知っている貴族や商人が僕とリールが第一皇子の逆鱗を買ったと予想する声が聞こえた。
いずれにせよ誰も第一皇子の騎士団の勝利を疑う者はいなかった。
「面白いだろう?」
第一皇子がすかした顔で言ってくる。
「これは私が主催し私が金を出している大会だ。共催の商人どもは私にゴマをすっているに過ぎない。だからこの闘技場にいる間のルールは全て私が決めさせてもらう」
第一皇子は当然のように言う。
ああ、この皇子は一般市民の印象をまったく気にしていない。
平民に悪魔とののしられようと貴族と有力者の支持さえあれば帝国が問題なく収まると本当に信じている。
まあこいつだけでなく帝都貴族全員に言える話だがな。
僕は独り言のように言った。
「ああ、、これはまずい」
ーーーーーーーーーー
「ふむ、」
私の前には100人を超えるフル武装の騎士が並んでいる。
もちろん中心となっているのはさっき煽った奴だ。
第一皇子がここまで恥も外聞もないやつだとは始めて知ったがもっと意外だったのが全員がまともな武装をしていることだった。
どうせ帝都の騎士なんてまともな鎧の形も知らないだろうとは思っていたがほとんどは派手だが案外実用的なのを着ている。
さっき奴とその取り巻きは実用性皆無のを着ているがそれ以外の外周の輩は実用的な武装だ。
北部軍の装備には大きく劣るがそれでも王国軍より少し良いくらいの装備だ。
「あいつらは、、、実戦経験者か」
恐らくあいつらは実戦を経験している。
別の大陸か、西部諸国のいざこざか
場所は知らないが実用的な物を選んでいる点と肌の焼け具合からして野戦に慣れている。
面白い。
最後になって実戦経験者とはなかなかセンスがいいじゃないな第一皇子は。
「装備を持ってこい!遊び用のじゃなくて実戦用のだ!」
私は入場口の陰で見守る副指揮官に言った。
ざわざわっ
会場は更に大きなざわめきに包まれた。
どうせ今「本気で戦うのか?」とか思っているのだろう。
「お持ちしました」
少し相手とにらみ合っていると副指揮官が装備一式を持ってきた。
カチャッ
ガシャンッ
私は来ていた。
大会用の鎧と武器を脱いだ。
そして副指揮官が持ってきた装備に着替え始めた。
鎧は頭からつま先まですべてを包んでいる。
オリハルコンの小さなプレートが鎖のようにつながりその隙間も小さなプレートで隠されている。
その下にも1枚の大きなプレートで守られており足も全て隠れている。
大量の金属が使われているがオリハルコンだから重くはない。
鎧は私専用に作ってもらった。
そして次に太い槍と私を丸々隠せる大きな厚い盾を手渡された。
これは一般の兵と変わらない。
私が槍の石突きをフィールドに刺しそれに盾を寄りかからせると副指揮官は兜を渡してきた。
黒に金の一本線が入った兜だ。
上には赤色の羽を使った飾りがあった。
扇のように広がり相手を威嚇するその飾りは北部軍の高位指揮官のみが付けることを許された武力の象徴だ。
フェリキア人が北部の山岳地帯で異民族を征服してきた時代から変わらない伝統的な物のためそこらの飾りとはかかっている責任の重みが違う。
私は兜を深くかぶり顎ひもを締めると槍と盾を取り地面を大きく叩いた。
「私はリール・フォン・フォーク!北部軍副最高司令官にしてフォーク家次期当主!ヴェスターの守護者、その末席に座する者である!全力でかかってこい!まけたものは全員首をはねてくれよう!」
次回投稿は日曜日になります。
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